「予測モデル」構築の共同研究実施の背景と共同研究の概要
少子高齢化や世界経済の悪化に伴う景気の後退、個人情報保護に関する規制強化、意識の高まりなどを背景に、現在、多くの業種・業界において、企業が新たな顧客を獲得することは非常に困難な状況になっております。また企業自身も、新たな顧客を獲得することよりも、休眠顧客の活性化、商品購入時のクロスセル・アップセルなど、既存顧客の維持・活性化を効果的、効率的に行うことで、コストを下げながら売上の拡大を目指す傾向にあります。
TMJでは、こうした顧客の維持・活性化のためのアウトバウンド業務を長年にわたって実施しており、経験やノウハウに基づいた業務成果は、数多くのクライアント企業より高い評価をいただいております。しかし、クライアント企業のニーズのさらなる多様化、高度化にお応えしていくためには、より一層の業務成果の向上が必要と考え、2008年にSPSS社のデータマイニングツール『Clementine®』を導入いたしました。
通常、アウトバウンド業務における成果は、顧客セグメント、発信する曜日・時間帯など、オペレーションを担当するコールセンター運営者の経験値をもとに、ある程度予測することが可能です。TMJにおいても、アウトバウンド業務を集中化、専門化することで、予測精度の向上に取り組み、実績を上げてまいりました。しかしながら、経験値の少ない業種や商材の発信リスト(データ)、セグメント要素が少ないリストを使用して発信を行う場合には、経験による予測が難しく、目論見どおりの成果を上げることが困難なケースも発生してきます。
そこでTMJでは、SPSS社のデータマイニングツール『Clementine®』導入を機に、SPSS Japanとともにアウトバウンドの「予測モデル」構築に関する共同研究を開始し、TMJがこれまで培ってきたアウトバウンドオペレーションの豊富な経験・ノウハウに加えて、SPSS Japanの持つデータマイニングなどの分析ソリューションの活用、さらにSPSS Japanから、全世界28万人のユーザーの利用実績に基づいた導入事例の提供を受けることができるようになったことで、アウトバウンド業務におけるさらなる成果向上に取り組むことになりました。

アウトバウンド業務における「予測モデル」とは
「予測モデル」とは、アウトバウンドの成果向上を図るためのルール・ものさしであり、この「予測モデル」の活用により、これまで個人スキルに依存していた暗黙知を可視化し、例えば、どのようなリストなら成果が上がりやすいか、個人の属性や購入履歴などのデータを分析し、スコア化することで、相対的に比較することができるようになります。
<「予測モデル」活用によるアウトバウンドの成果向上のステップの一例>
(1) 事前に無作為に抽出したサンプリングリストへのテスト発信
(2) 結果をデータマイニングツール『Clementine®』を使って科学的に分析し、統計的に再現性のあるグループを予測し、コンタクトの効果・効率を最大化するための「予測モデル」を作成
(3) 作成した「予測モデル」を評価し、費用対効果などを勘案しながら本番データを抽出
(4) 本番アウトバウンドの実施
こうした「予測モデル」を活用し、発信リストの中からより成果の上がるデータだけを抜き出して集中的にコンタクトしたり、顧客属性に合わせてトークスクリプトを変えて、クロスセル・アップセルを行ったりすることで、ROIの最大化を図ることが可能となります。
TMJでは、SPSS Japanとの共同研究を続け、アウトバウンド業務における飛躍的な成果向上の実現を図るとともに、TMJが独自に持つ国勢調査をもとにした二次データとの組み合わせなどにより、クライアント企業へのさらなる成果貢献を目指してまいります。
また、今後は、共同研究で得た豊富な分析ノウハウを、インバウンド業務やオペレータ採用などにも展開し、研究成果の広範な活用に取り組んでいく予定です。