現場カイゼン
AIツールを導入したのにAHTが縮まらない、むしろ伸びてしまう――。その原因は、コールを工程分解せずAIを一律適用したことにあります。WBSの考え方で人とAIの分担マトリクスを作る方法を解説します。
AIツールを入れたのに通話時間が伸びる謎
「AHT(平均通話処理時間)を30秒短縮するために、オペレーターの画面にFAQを自動でレコメンドしてくれる最新のAIシステムを導入します!」と華々しくスタートしたプロジェクト。しかし、1ヶ月経ってもAHTは全く減りません。それどころか、オペレーターは画面に次々と表示されるAIの提案を読み込むのに必死になり、お客様の話を聴くのがおろそかになってATT(通話時間)が伸びてしまうという、最悪の結果になってしまいました。
AI導入は「一律」ではなく「狙い撃ち」
IE(インダストリアル・エンジニアリング)の基本は、全体の作業を細かく切り分ける「作業分解」です。1本の電話応対は、「①オープニング(15秒)➔ ②顧客情報の特定(30秒)➔ ③主訴のヒアリング(60秒)➔ ④ナレッジの検索・確認(45秒)➔ ⑤解決策の提示(60秒)➔ ⑥クロージング(15秒)➔ ⑦後処理(90秒)」のように因数分解できます。今回の失敗は、この要素分解をせず、コール全体に一律でAIを適用しようとしたためです。削るべき「ボトルネックの工程」をピンポイントで狙い撃ちしなければ、AIはただの作業妨害ツールになりかねません。
コール工程の人×AI分担マトリクス
1本のコールをWBSで7工程に分解し、それぞれAIを表示すべきかどうかを整理します。
| コール工程 | 所要時間の目安 | AIを表示すべきか |
| ①オープニング〜③主訴のヒアリング | 15〜60秒 | 表示しない(傾聴に集中させる) |
| ④ナレッジの検索・確認 | 45秒 | 表示する(最も時間がかかる工程) |
| ⑤解決策の提示〜⑦後処理 | 60〜90秒 | 表示しない(会話・入力に集中させる) |
7工程すべてにAIを表示するのではなく、実測で最も時間がかかっている「④ナレッジの検索・確認」だけにピンポイントで絞り込むことで、情報過多による混乱を防げます。
今日からの実践ワーク:自分のセンターのコールを分解してみる
☐ SVとして、オペレーターの隣でストップウォッチを持ち、通話中の「沈黙(調べている時間)」を3件分測る
☐ 測った時間を7つの工程に当てはめ、最も時間がかかっている工程を1つ特定する
☐ その工程にだけAIを配置する案を検討する
まとめ
AHTが縮まらないのは、コール全体にAIを一律適用しているからかもしれません。1本のコールの工程を作業分解し、最も時間がかかる工程だけにAIを配置する。狙い撃ちの発想がAHT短縮の近道です。
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