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専門家コラム


初回投稿日 : 2020/07/31

1on1ミーティングは意味がない? 3年間実践してわかったこと

1on1ミーティングとは、人材育成を目的として上司と部下が1対1で行う対話(面談)のことです。国内では、ヤフー株式会社が2012年から1on1ミーティングを開始し、上司と部下のコミュニケーションに役立てる中で貴重な成長機会となっている、という話を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。

昨今の人材育成のトレンドとしても1on1ミーティングを導入される企業は増えています。しかし導入してみたものの、効果が見えない、どのように進めるのが正解かわからないといったお悩みもあるようです。

1on1ミーティングは、本当に実施する意味があるのでしょうか?

TMJでは2017年からこれまでの約3年間、個人の成長を目的に年間500~600人、多いときには900人規模の対象者に向けて1on1ミーティングを実施してきました。
その取り組みの過程で私自身も、社内の育成基準の設計や研修カリキュラムの作成、1on1を行う上司側の教育、実施結果の可視化やその後の標準化などを推進する活動を行ってきました。

今回のコラムでは、自社で1on1制度の導入・実行・推進を行ってきた立場から、私が感じている1on1の効果や課題についてお伝えしたいと思います。

TMJが1on1を導入した背景

私たちTMJはメインの事業としてコールセンターやバックオフィスセンターなど、クライアント企業の業務オペレーションの一部を受託して運営しています。オペレーションを実行するのは人ですから、人がサービスの資本といえます。さらに、業務運営の中で付加価値を生み出せる人材を育成することは事業成長に不可欠であると考えています。

会社としても、現場を預かる人材の育成や強化が重点施策と位置付けられています。その実行主体は現場のマネージャーです。

しかし、現場マネージャーには、「業績」と「育成」の両立が求められていて、実際にはそのバランスを取り、両立することは簡単ではありません。業績と育成の両立を掲げていても、リソースが限られる中で、現場の比重はやはり業績に偏りがちです。また、育成を重視するといっても、すべての従業員に十分な研修機会を与えることは時間にしてもコストにしても現実的には難しいのが実情です。

このようなさまざま育成の課題から、私たちは仕事上の経験から学びを促進するという方法において「経験学習」と「1on1」に着目しました。

経験学習とは

人は70%を仕事上の経験から学び、20%を上司からのアドバイス、10%を研修や書籍などから学ぶといわれ、経験学習では、経験による学びを促進するメカニズムとしてディビット・コルブの「経験学習モデル理論」が有名です。TMJでは「経験する→内省する→教訓を引き出す→適用する」というサイクルの「内省」を促進するために1on1ミーティングを行っています。

私たちが初めて経験学習に取り組む際、経験学習研究の第一人者である北海道大学の松尾睦教授にご相談をさせていただきました*。松尾先生には、TMJの社員教育の企画や学習プログラムについてアドバイスをいただき、その後、業務経験を自己成長の機会に変えるプロセスとして、2017年より1on1を取り入れるに至りました。

*  松尾 睦 氏(北海道大学大学院経済学研究院教授。著書に『部下の強みを引き出す 経験学習リーダーシップ』『職場が生きる 人が育つ 「経験学習」入門』ダイヤモンド社 など)

1on1を円滑に進めるために特に注力したこと

1on1のために特に力を入れたのが、上司側の「育成力」の向上です。

その理由は2つあります。

1つは、TMJがクライアントから求められることは、どの人材が担当しても維持される「迅速さ」と「品質」であり、一人ひとりに焦点を当てるスキルは身につきにくい事業性質(「指示・命令」「統率」「徹底」が重視される環境)にあるということです。
もう一つは、「指示・命令」「統率」「徹底」が重視される職場環境の中で、上司側に1on1を促進する「傾聴」や「よい質問」を意識的にできる人が少なかったからです。

そういった問題意識からTMJでは、まず社長の丸山が自ら外部のコーチング専門機関で約1年間のコーチング型マネジメントプログラムを受講して認定コーチの資格を取得し、その後、経営メンバー全員が同プログラムに取り組み、自らの部下への関わり方を見直していきました。

その後も、すべての部長および課長層にも、個人に合った成長支援ができる姿勢とスキルを学ぶ場として、コーチングを含めた育成力向上研修を毎年実施しています。現場任せではなく、会社として育成力の向上と考え方の浸透に努めています。

TMJ流 1on1の進め方

私たちが1on1で育成したい対象は、現場でオペレータと接するSV、LSV*と呼ばれる現場管理者です。社内の他の階層でも1on1は行われていますが、現場管理者が最も成長を期待されている対象です。
1on1は、繁忙期を避けた半年ほどの期間内で、月に1~2回、30分から1時間くらい実施することを推奨しています。理想は、上司が「部下(個人)の成長」にフォーカスし、部下の自信や主体性を育て、業務品質の向上につなげていくことです。

【1on1の進め方】
■ 対象:センター現場の管理者層(SV、LSV)
■ 期間:業務特性に応じて繁忙期を避けた6か月を設定
■ 頻度:月1~2回
■ 方法:1回あたり30分から1時間
■ テーマ:対象者がテーマを自由設定

* SV:スーパーバイザー
* LSV:リードスーパーバイザー

1on1の成果

1サイクル6か月間の実施結果として、次のような成果が表れました。
また、1on1を活用した育成における気づきも得られています。


・スキル評価のランクアップにつながっている
・実行者の行動変容が表れはじめている
・行動変容が積み重なることでスキル向上につながり、業績への貢献にもつながる
・1on1を継続できている人のほうが行動変容に表れている
・苦手克服より、得意なことを伸ばし承認していくことが有効
・育成者が対象者の変化に気づき承認することが、対象者の主体性を育むことに有効


特に、行動変容と業績貢献につながりについては、以下のような波及効果を生み出しています。

実施して分かった、1on1のメリットとデメリット

このように経験学習の考え方のもとに私たちなりに育成力の向上にも力を入れて進めている1on1ですが、すべてうまくいっているかというと、そうではありません。
そこで、1on1によって得られたこと(メリット)とまだ解決できていない課題(デメリット)について、それぞれ挙げてみたいと思います。

【1】1on1のメリット

1.自主的に学習するメンバーが出てくる
上司に承認されるとうれしいものです。この承認が、部下の自分で学ぶ行動につながっています。ポイントは、期初のスキル習得に関して現状認識と目標が上司と部下で合意できていることです。1on1で勇気づけ、背中を押していっています。

2.メンバーの状態悪化を早期に察知することができる
定期的に継続して1対1でミーティングを行うことで、部下の身体的・精神的な健康状態を知ることができます。これは組織の人間関係や職場環境の把握に役立ち、離職抑止の効果も期待されます。

3.自分の参謀となるマネージャ―候補を育てることができる
マネージャーにとって、自分の参謀となり、主体的に動いてくれる部下を育てるという観点でもメリットがあります。コールセンターや事務センターなどのBPOの現場では、ともすれば問題解決文化が浸透しすぎて答えを教えてしまう癖が散見されますが、クライアントの業務をきちんとミスなく運営することから一段視座を上げて、自ら考える提案できる人材の育成が期待されます。

【2】1on1のデメリット・課題

1.1on1をやる人、やらない人が出てくる

TMJは職場環境が多様であるため、1on1を推奨していますが、義務にはしていません。
そうすると1on1を実施する組織と、実施しない組織に二極化してきている現状があります。
1on1をやらない理由、できない理由として挙げられるのは、上司側に育成スキルが足りない、育成に自信がない、忙しくてできない、担当業務の特性上(例えばセンターの新規立ち上げ時など)育成に時間がとれない、部下に成長意欲がない・・・などさまざまです。

育成スキルの不足については、「上司がつい自分の聞きたいことを聞いてしまい、部下本人の話を傾聴できていない」「相手に考えさせることが必要なのに、答えを誘導してしまう」などがあります。1on1はあくまで部下本人の成長のための時間であるという前提をずらさないことが大切です。
このほかにも、1on1の対象となる配下のメンバーが多すぎて対応できないケースもあります。そこで、50人、60人を束ねるマネージャーの場合は、1on1の対象をLSV(リードスーパーバイザー)に絞って実施したり、まずは入社者を対象に計画したりするなど、マネージャーそれぞれの人材育成戦略の中で、実施の判断をゆだねています。

2.上司も部下も1on1が心理的な負担になる場合がある

上司側にとって育成する自信がないと1on1が心理的な負担になることがあります。また、部下の方も自分で考えるように言われてもどう考えていいかわからない、話すテーマがないなど、1on1の時間そのものが苦痛になってくることがあります。つまるところ、上司にとっては育成力が課題であり、部下の方も1on1を行う意味を十分に理解してないと、質問の意図をくみ取って考えることができず、お互いに負担を感じる時間となってしまうことがあるようです。

3.上司の認識と部下の認識が違う場合がある

上司は「部下の話を聞いているつもり」でも、部下はそう思っていないケースがあります。具体的には、上司は部下の悩みや考えを聞いてあげたと思っていても、部下の方は「上司に聞かれたことを報告している」だけで、なかなか成長につながっていないという悩みもあります。
このことは、ソーシャルスタイル分類のような上司と部下の性格やタイプによるコミュニケーションのずれによって起こることもあります。

また、1on1を上司と部下で行うことのデメリットとして、信頼関係の深さによって部下は心理的に上司や組織を批判することが言えないというのもあります。結果、遠慮や気遣いを抱えながらミーティングを実施することになり、本音が出せずモヤモヤが残ってしまった、というケースもありました。
実際に、すべてをオープンに対話できる関係性を築くことは容易ではなく、時間もかかります。そう考えると、1on1を上司と部下で実施することの限界点と言えるかもしれません。

【3】人事としての課題

1on1ミーティングの形式を取るかどうかは別としても、上司部下の対話は重要であると思います。部下が上司についての悩みを持つのであれば、レポートラインではない、他部門の人とペアになってやってみる方法も検討しています。

また、育成状況を見える化して、適切に人事からサポートが得られるようにしたり、中長期の視点で育成についてマネジメントすることもめざす姿であり、それらのしくみを現場負担なく実施することは課題です。

そして1on1が人材育成として機能したかどうかは、中長期の視点で検証していくことも必要だと思います。

一人ひとりの成長を支援していくために

TMJでは経営ビジョンに「with your style」をかかげています。

「with your style」とは、多様な個人のスタイルを尊重し、対話を通して一人一人がめざしたい姿、目標、ペースなどを組織全体で理解し、それらをできるだけ尊重して、なりたい自分になれるように寄り添い、支援しあえること含んでいます。しかし、尊重とは、一方で会社や上司にもスタイルがあり、一人一人の可能性や能力に期待する言葉にも耳を傾けて尊重してほしいという意味もあります。

その両面をすり合わせ、一緒に働きやすくしていく姿勢がTMJの経営ミッションにある「対話」であり、TMJの対話の場のひとつが「1on1」であると思っています。

TMJでは、1on1をはじめとした人材育成に取り組んでいます。
ご興味いただける部分がございましたら、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。

執筆者紹介

山田 敬三

株式会社TMJ 人材本部 人事戦略部 TMJユニバーシティ
テーマ:人材育成、研修
TMJの研修プログラム開発や研修講師を手掛けると同時に、BPOセンターの人材育成(おもに仕組み化や標準化)、また、これらの研修プログラム・育成手法の外販を担当。2017年度コンタクトセンター・アワードにて「経験学習の観点で取り組む人材育成 ~継続的な管理者育成プログラム『PLATOS』」で最優秀ヘルプデスク/アウトソーシング部門賞を受賞。また、第14回日本e-Learning大賞では「高齢者応対研修」eラーニングサービスの開発で厚生労働大臣賞を受賞。
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