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専門家コラム


初回投稿日 : 2025/11/05

【後編】生成AIで変革する、次世代ナレッジマネジメント戦略~「運用の壁」とその乗り越え方~

本記事は2部構成になっております。前編はこちら:【前編】生成AIで変革する、次世代ナレッジマネジメント戦略

前編ではコンタクトセンターにおけるナレッジマネジメントの課題と、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)導入を成功させるテクニック、導入事例を紹介しました。後編である本コラムにおいては、RAG導入の後に発生する課題とその解決策について解説します。

コンタクトセンターにおける課題「運用負荷」

データ構造化によるRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)の回答精度向上に成功しても、次の課題が待っています。それは「運用負荷」です。

多くの企業では、既存のナレッジツールを運用し続けながら、RAGを並行導入しています。つまり、管理者は従来のナレッジマネジメント業務に加え、非構造化データを構造化データに変換する「AIリーダブル化」作業という新たな負担を背負うことになります。

※AIリーダブル化については『【前編】生成AIで変革する、次世代ナレッジマネジメント戦略』で解説しています。

半自動化でも残る膨大な工数

確かにAIリーダブル化の作業自体は、RAGツールを使って半自動化できます。しかし、コンタクトセンターには数十、数百のマニュアルファイルが存在します。それぞれのファイルに対して、ベテラン管理者が目利きをしながら適切な処理を判断していく必要があり、膨大な工数がかかります。

さらに、オペレーターは既存ナレッジツールとRAGツールを使い分けなければならず、現場の混乱も生じやすくなります。

理想の運用形態とは

理想的な運用形態は、AIリーダブル化処理の完全自動化と、オペレーターが単一のUIでRAGと既存ナレッジの両方を活用できる環境です。

具体的には、元のナレッジデータをアップロードするだけで、画像からのテキスト抽出、表の解釈、フローの解釈、メタデータの付与、チャンク分割といった処理がすべて自動で行われる仕組みです。これにより、管理者の負荷を大幅に軽減できます。

オペレーター側では、検索窓に短い自然文やキーワードを入力すると、RAGが生成した回答文と、参照元のナレッジがPDF形式で同時に表示されます。新人オペレーターはRAGの回答文をスクリプトのように読み上げることができ、ベテランオペレーターは元のナレッジを直接参照して応対できる。こうして新人とベテランの知識格差を解消し、保留時間の大幅削減と研修期間の短縮を実現しながら、顧客体験と従業員体験の両方を向上させることが可能になります。

未来展望――AIオーケストレーションの中核へ

サイロ化されたナレッジからの脱却

ナレッジマネジメントの進化は、単なる業務効率化にとどまりません。

現在、多くの企業ではボイスエージェント、チャットボット、オペレーター支援ツールなど、各ソリューションがそれぞれ独自のナレッジデータベースを持ち、サイロ化しています。

ナレッジデータベースが「頭脳」となる時代

次世代のコンタクトセンターでは、これらすべてのチャネルが共通のナレッジデータベースを参照する形になるでしょう。つまり、AIリーダブル化された高品質なナレッジデータベースが、AIオーケストレーション時代の「頭脳」として機能するのです。

今、経営層が決断すべきこと

データベースは半永久的な資産

AI技術は日進月歩で進化し続けます。しかし、一度構築した良質なデータベースは半永久的に使える資産となります。進化する技術と不変のデータを融合し続けることで、新たな価値を創出し、顧客体験の向上と事業成長を加速できます。

ナレッジ戦略を変革の中心に

コンタクトセンターのDX推進を検討している企業は、戦略策定やロードマップを描く段階で、ナレッジデータベースのあり方を変革の中心的テーマとして位置づけるべきです。

地道だが確実なアプローチ

RAGは魔法のツールではありません。しかし、適切なデータ戦略と組み合わせることで、10年、20年と積み重なってきたナレッジマネジメントの課題を根本から解決する力を持っています。地道なアプローチである「AIリーダブル化」ですが、コンタクトセンターの課題を解決する方法としては確実です。

実践に向けた次のステップ

本記事で解説したナレッジマネジメント戦略は、理論的には理解できても、実際の導入・運用には専門的な知識と豊富な経験が不可欠です。

特に、既存データのAIリーダブル化や、その完全自動化、既存システムとの統合は、コンタクトセンター運営と生成AIに関わるノウハウなしには実現できません。画像からのテキスト抽出、表やフローの解釈、適切なメタデータ付与といった技術的要素と、現場のオペレーション要件を両立させる設計が求められるためです。

TMJでは、これらの課題を解決する「TMJ Generative Solution(https://biz.tmj.jp/GenerativeSolution/FAQ/)」を提供しています。コンタクトセンター運営で培った豊富なノウハウを活かし、FAQシステムの構築から改善まで、お客様の課題に合わせたトータルソリューションを実現します。

次世代ナレッジマネジメントの実現に向けて、まずは現状の課題整理と最適なアプローチの検討から始めてみてはいかがでしょうか。

執筆者紹介

宮川 正雄
株式会社TMJ ビジネスデザイン本部 デジタル・AI部 部長
テーマ:AI、CX、DX、業務最適化
ベネッセグループおよびセコムグループでの豊富な経験を持ち、営業部の部長を歴任。2024年より、次世代型コンタクトセンター運営を支援する"TMJ Generative Solution"サービスの企画・開発の責任者を担う。コンタクトセンターにおける生成AI導入の知識・ノウハウと実績で、業界の革新に貢献しています。

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