BPOの基礎知識
会社案内から始めるプレゼンが、相手を遠ざける瞬間
営業の場で、こんな光景を見たことはないでしょうか。
商談が始まると同時に、「まず弊社のご紹介からさせてください」と言って会社案内のスライドを開く。
沿革、事業内容、拠点数、実績。
どれも正しい情報で、説明としては間違っていません。
しかし相手の反応は、
- うなずいてはいるが、質問は出ない
- 時計を気にしている
- 「で、何の話でしたっけ?」という空気になる
という状態になることがあります。
会社案内が悪いわけではありません。
ただ、その場の相手にとって「今、一番知りたいこと」から話が始まっていないだけです。
FAQを上から読んでしまう応対は、これと同じ構図
この構図は、コンタクトセンターの応対でも頻繁に起きています。
たとえば、お客様から「料金プランを変更したいのですが」と問い合わせが入った場面。
FAQには次のような構成で情報が並んでいます。
- 適用条件
- 変更手続き
- 注意事項
- 例外ケース
オペレーターはFAQを開き、上から順に説明しようとします。
すると会話はこうなります。
オペレーター
「まず変更条件についてご説明しますね。ご契約から○か月以上経過している必要がありまして…」
お客様
「条件はいいので、いくら変わるのかだけ教えてもらえますか?」
ここでお客様はいら立っているわけではありません。
ただ、知りたい順番が合っていないのです。
正しい情報でも「順番」を間違えると聞いてもらえない
会社案内もFAQも、中身は正しく、必要な情報です。
問題になるのは、
- 何から話し始めるか
- 相手が今どこに関心を持っているか
この視点が抜けた瞬間です。
営業プレゼンで言えば、
- 自社の話をしたい気持ち
- 説明としては正しい構成
が先に立ち、相手の関心が後回しになります。
FAQ応対でも同じことが起きています。
- FAQに書いてある順番
- 抜け漏れなく説明しようとする意識
が先に立ち、お客様の関心が後回しになります。
「話の流れでFAQを組み立てる」とは何をすることか
ここで言う「話の流れでFAQを組み立てる」とは、
FAQを書き換えることではありません。
実際に現場で起きている良い例を見てみます。
具体例:同じFAQでも、応対の組み立て方が違う
同じ「料金プラン変更」の問い合わせ。
FAQの内容は変わりません。
変わるのは、使う順番です。
オペレーター
「料金ですね。現在のご契約内容ですと、月額は○円から○円に変わります。」
お客様
「それなら変更したいです。」
オペレーター
「ありがとうございます。変更条件として一点だけ確認させてください。ご契約期間が○か月以上経過している必要がありますが…」
お客様
「はい、大丈夫です。」
オペレーター
「ではお手続き方法をご案内しますね。」
この応対では、
- FAQの条件説明
- 手続き説明
- 注意事項
すべて伝えています。
ただし、お客様の関心に合わせて順番を入れ替えているだけです。
FAQを「台本」として使うと、会話は詰まる
FAQをそのまま読もうとすると、
- 会話のテンポが崩れる
- 相手の反応に合わせづらい
- 説明を遮られる
ということが起きます。
その結果、オペレーターはFAQを、
- 一度読んで頭の中で並び替える
- 自分の言葉に言い換える
という対応を取ります。
ここでFAQは、読む台本ではなく、材料になります。
説明とは、情報を並べることではない
説明とは、用意した情報を順番に話すことではありません。
相手が今どこで立ち止まっているのか。
何を知れば次に進めるのか。
その理解に合わせて、情報の出し方を組み立てる行為です。
FAQも、プレゼンも、マニュアルも同じです。
内容の正しさだけでなく、相手の理解が前に進む順番で情報を届けられているか。
そこまで設計されてはじめて、説明は「伝える行為」から「前に進める行為」に変わります。
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