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専門家コラム


初回投稿日 : 2025/10/08

なぜ今、「BaaS」なのか?

- 導入不安を解消する実践的アプローチ -

もともと金融機関が提供してきた銀行機能や金融サービスを、API(※1)を利用して自社のビジネスに組み込むことができる BaaS(Banking as a Service)
ライセンスを持たない銀行以外の事業者が 、本来銀行でしか行えなかったサービスを自社サービスに組み込めるBaaSの可能性に魅力を感じながらも、「金融の専門知識がない」「システム対応に不安がある」「問い合わせ対応の体制づくりが難しい」と踏み出せない企業も多いのではないでしょうか。
今、このような課題に向き合わないまま、BaaSへの参入機会を逃してしまうと、新たな収益機会の損失だけでなく、競合他社との差別化における遅れにもつながりかねません。
本記事では、BaaSの基本的な仕組みから、導入における課題、そして具体的な解決策まで、実例を交えながら解説します。


この記事を読み終えた後には、BaaS導入に向けた具体的なイメージと、実務面での不安を解消するための選択肢を手に入れることができるでしょう。

(※1)API=Application Programming Interfaceとは、異なるシステムやアプリ同士をつなぎ、機能やデータを共有できる“橋渡し”の仕組みのこと。

1. BaaSとは?

非金融事業者が自社のサービスに金融機能を組み込むことができる仕組みであるBaaSは、
銀行のAPIを活用して独自の金融サービスを提供できる画期的なプラットフォームです。

BaaSが注目を集める背景には、デジタル技術の進化により、金融サービスの提供方法が大きく変化していることがあります。従来は銀行でしか提供できなかった送金や口座開設などの金融サービスを、一般事業者が自社のサービスの一部として提供できるようになりました。

たとえば、BaaSのAPI連携を活用することで、小売チェーンやECサイトでは、クレジットカードや外部決済サービスを使用する必要がなくなり、銀行口座から直接支払いが可能となるため、レジ待ちの時間や支払い手段の登録の手間を削減することができます。保険会社では、従来は紙の申込書や印鑑が必要でしたが不要となり、契約から保険料の引き落としまでを時間をかけずに、スマホ一つで完結できるようになります。また、人材派遣会社などの企業では、給与日より前に給与の一部を受け取りたいというニーズへ低コストで対応できるようになり、従業員満足度や定着率の向上を実現しています。
このように、BaaSを活用することで、顧客にとっては大幅な利便性向上、企業にとってはコスト削減などのメリットを生み出すことができるのです。

顧客接点を持つ事業者が、銀行機能をAPIで呼び出して独自の金融サービスを構築できるBaaSは、今後のビジネス展開における重要な選択肢となっています。
 

 BaaSの特徴

BaaSとは、銀行がもつ金融機能を、自社サービスに組込むことができる仕組みです。
銀行機能(Banking)をAPIなどにより、サービスとして(as a Service)活用することにより、非金融事業者でも自社ブランドで独自の金融サービスを設計・提供することが可能です。

第一の特徴:銀行機能のAPI提供
預金、為替、貸出といった銀行の基本機能をAPIとして提供することで、事業者は必要な機能だけを選択して自社サービスに組み込むことが可能です。

 
第二の特徴:ホワイトラベル化が可能
事業者は自社ブランドで金融サービスを展開できます。これにより、顧客に対して一貫性のあるブランド体験を提供し、サービスの差別化を図ることができます。

 
第三の特徴:コンプライアンス対応が包括されている
BaaS提供銀行が金融関連の法規制対応やシステムセキュリティを担保するため、事業者は本業に集中しながら、安全な金融サービスを提供できます。
たとえば、ECサイトを運営する企業がBaaSを活用すると、商品の購入から決済、さらには与信や分割払いまでをシームレスに提供することが可能になります。

 

この特徴により、BaaSは事業者の創意工夫を活かした、より付加価値の高い金融サービスを安全に提供できる手法として注目を集めています。
 

2. なぜ今、BaaSになぜ取り組むべきか?

BaaSへの取り組みは、デジタル時代における企業の競争力強化と顧客体験の向上において重要な戦略的選択肢となっています。

現代のビジネス環境では、顧客は便利で統合されたサービスを求めており、金融サービスをシームレスに組み込んだビジネスモデルが競争優位性を生み出します。既存の事業にBaaSによる金融機能を付加することで、顧客の利便性が向上し、新たな収益源の確保にもつなげることができるのです。

たとえば、小売業界では商品販売したりするだけでなく、独自の支払いサービスや与信機能を提供することで、顧客の購買意欲を高め、リピート率の向上につながっています。また、サブスクリプションビジネスでは、決済機能の内製化により、顧客データの分析と連動した柔軟な料金プランの設計が可能になります。

BaaSへの取り組みを先送りにすることは、これらのビジネスチャンスを逃すだけでなく、競合他社との差別化における遅れを招く可能性があります。

3. 具体的事例 - みんなの銀行の場合 -

BaaS活用の先進事例として「みんなの銀行」が挙げられます。
みんなの銀行は、自行の商品やインフラをAPIとして外部企業へ提供し、提携先が自社ブランドで金融サービスを提供できる新ビジネスモデルを打ち出しています。
みんなの銀行は、BaaS事業において、APIを活用した柔軟なサービス提供と、セキュリティ面での信頼性確保を両立させています。

同行のBaaSプラットフォームは、事業者が必要な機能を選択して組み込めるよう設計されており、口座振替や振込、口座情報や本人確認済情報の提供といった幅広い銀行機能をAPIで提供しています。また、FAPIに準拠した高度なセキュリティ基準を採用し、安全性と利便性を両立しています。

これにより、企業の経費精算システムへの組み込みよる振込業務の効率化や、ECプラットフォームと連携した決済システムの構築など、様々な活用事例が生まれています。

このような実績は、BaaSが単なる技術的な可能性にとどまらず、実践的なビジネスソリューションとして機能していることを示しています。
みんなの銀行のBaaS事業ではパートナー企業の成長を強力に支援する伴走型体制を構築し、早期立ち上げと高品質なサービス提供を両立しています。
では、その具体的な例を見ていきましょう。

 具体的なユースケース

1. 給与前払いサービス
人材派遣会社やタイムカードアプリなどの事業者は、BaaSを活用することで給与前払いサービスを提供できます。勤務記録データと連携することで、従業員は働いた分の給与を日次や週次で受け取ることが可能になります。このサービスにより、従業員の急な出費にも対応でき、福利厚生の向上にもつながります。

2. リアル店舗でのA2A決済(※2)
小売チェーンのアプリに口座振替APIを組み込むことで、銀行口座から直接支払いできる「A2A決済」を実現。利用者はレジ待ち不要でスムーズに決済でき、事業者はカード手数料を削減しながら顧客ロイヤルティを高められます。

3. ECプラットフォームでのかんたん口座決済
ECサイトにA2A決済を導入することで、ユーザーは自分の銀行口座から直接オンライン決済可能。クレジットカードを使わずに即時決済ができ、事業者はコスト削減と購買体験向上を両立できます。

4. 保険料引落のデジタル完結
生命保険会社は、契約申込から保険料引落までをスマホ完結で提供可能。印鑑や書類を不要にし、顧客の利便性を高めつつ、保険会社は事務コスト削減を実現できます。

5. パートナー支店による福利厚生強化
大手企業や派遣会社は、従業員向けの「パートナー支店」を開設し、給与受取や福利厚生プログラムと連動させることが可能。従業員は金融サービスと企業独自の優待を一体的に利用でき、企業側は従業員満足度や定着率を高め、長期的な従業員との関係価値(LTV: Life Time Value)を向上させることができます。

これらのユースケースに共通するのは、既存ビジネスと金融サービスを組み合わせることで、顧客体験を向上させ、新たな収益機会を創出できる点です。特に注目すべきは、各事業者が持つ独自のデータや顧客接点を活用することで、従来の金融機関にはない価値提供が可能になることです。

(※2)A2A決済=Account to Account決済:口座振替APIを活用したサービスのことで、クレジットカードや外部決済サービスを介さず、利用者の銀行口座から事業者の銀行口座へ直接送金する仕組みのこと。

4. BaaSの課題と実例で見る解決法

BaaSの推進には、企業ごとに具体的な課題が存在します。BaaS導入を阻む壁は明確であり、その課題を適切に認識することが円滑なサービス立ち上げの第一歩となるでしょう。
ここで、よくある課題についてみてみましょう。
 

 課題①:具体的なイメージがつきづらい

BaaSの導入において最初の障壁となるのが、具体的な活用イメージの構築です。
事業者側では、自社のビジネスモデルにどのように金融機能を組み込み、どのような価値を提供できるのか、具体的なイメージを描くことに苦心するケースが多く見られます。特に、金融サービスとの親和性が低いと考えている業種において、この傾向が顕著です。
たとえば、製造業や小売業の企業が、自社の強みと金融サービスをどのように組み合わせれば効果的なのか、検討の初期段階で行き詰まることがあります。これに対する解決策として、専門家との協議や実績のあるパートナーとの連携が有効です。TMJでは、豊富な金融サービス支援の実績を活かし、各企業の特性に合わせた具体的な活用プランの策定をサポートしています。

 課題②:システムとセキュリティレベルへの懸念

金融サービスの提供には高度なシステム要件とセキュリティ基準の確保が必須であり、これらへの準拠は多くの企業にとって大きな課題となっています。
この課題に対しては、FAPI(※3)に準拠したセキュリティ基準の採用が有効な解決策となります。みんなの銀行のBaaSプラットフォームは、国際的な金融APIセキュリティ基準であるFAPIに準拠しており、高度なセキュリティを確保しています。加えて、専門事業者との連携により、システム運用やセキュリティ管理の負担を軽減することが可能です。

 課題③:ライセンス要件への対応

金融サービスの提供には各種ライセンスが必要となるケースがあり、その取得手続きや要件への対応が課題となります。
この課題に対しては、豊富な経験を活かしたライセンス取得支援サービスの活用で解消できます。必要な体制整備から申請手続きまで、包括的なサポートにより、スムーズなライセンス取得を実現できるでしょう。

 課題④:問い合わせ対応の体制構築

金融サービスの提供に伴う問い合わせ対応は、専門知識と適切な体制が必要となります。特に、金融業務に精通した人材の確保や、効率的なコールセンター運営が課題となっています。
金融機関向けの豊富な実績を持つBPO会社では、問い合わせ対応の包括的なソリューションを提供しています。専門知識を持つスタッフの配置から、効率的な運営体制の構築まで、企業の負担を最小限に抑えながら質の高いサービスを実現します。
 

(※3)FAPI=Financial-grade API:金融サービス向けに特化した安全なAPIの国際標準仕様のこと。より厳格な認証・暗号化・アクセス制御を求めることで、銀行口座や決済情報といった重要なデータを安心してやり取りできるように設計されています。

まとめ

 BaaSで拡がる新たなビジネスチャンス

デジタル化が加速する現代のビジネス環境において、BaaSは企業の成長戦略における重要な選択肢となっています。本記事で解説したように、BaaSは単なる金融機能の追加ではなく、企業価値を大きく向上させる可能性を秘めています。
BaaSの本質は、APIを通じて銀行機能を自由に組み込める点にあり、様々な業界で具体的な成功事例が生まれています。
特に注目すべきは、これらのサービスが金融業界の専門知識がない企業でも、適切なパートナーシップによって実現可能だという点です。
確かに、システム連携やセキュリティ対応、ライセンス取得、顧客サポートなど、検討すべき課題は存在します。しかし、みんなの銀行の事例が示すように、これらの課題は適切なパートナーとの連携により、着実に解決できることが実証されています。

BaaS導入を成功に導くポイントは以下の通りです:
■段階的なアプローチによる展開
小規模な機能から始め、市場ニーズを確認しながら拡大することで、初期投資を抑えた効率的な展開が可能です。

■専門パートナーとの連携
構想段階から運用まで、金融業務の知見やノウハウを持つ専門パートナーと連携することで、
スムーズな導入と運用を実現できます。

TMJは、20年以上の金融機関向けBPO実績とみんなの銀行との取り組みを活かし、お客様のBaaS展開を構想段階から確実にサポートいたします。

― 貴社の傍らに、相談しながら歩みを共にできるパートナーはいますか?

新しいビジネスモデルの創造に向けて、まずは気軽にご相談ください。

 

<「みんなの銀行」について>
みんなの銀行は、2021年5月にサービス提供を開始した日本初のデジタルバンクです。
スマートフォンで完結する銀行サービスの提供に加え、BaaS(Banking as a Service)を
主軸事業として展開しています。デジタルネイティブ世代の使いやすさを追求したシンプル&ミニマル、
フリクションレスなユーザーインターフェースが特長で、「みんなに価値あるつながりを。」を
ミッションに掲げ、新しい銀行のカタチを目指しています。
>>「みんなの銀行」 会社概要 

<TMJとみんなの銀行について> 
今後、TMJとみんなの銀行は、それぞれのビジネスアセットとノウハウを活かし、
BaaSを活用した金融サービスへの参入を目指す企業に対し、両社が連携してより包括的にサポート
できるよう、2025年9月より事業推進に関する協議を開始しています。
>>ニュースリリース

執筆者紹介

ビジネスのデザイン力で、事業の一翼を担うBPOパートナーのTMJ。将来にわたる経営環境に最適なビジネスプロセスを設計し、事業を代替することで、クライアント企業の継続的な事業成長を総合的にサポートしています。

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