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専門家コラム


初回投稿日 : 2025/03/03

生成AIの技術革新と変わらない重要なポイント

近年、生成AIの進化は目覚ましく、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与え始めています。大規模言語モデル(LLM)や拡散モデルなどの最新技術を駆使し、テキスト、画像、音楽など、様々なコンテンツを生成する能力は、日進月歩で向上しています。
しかし、技術革新の波に乗るためには、最新の動向を把握するだけでなく、いつの時代も変わらない「不変の価値」を理解し、大切にすることが重要です。本稿では、生成AIの最新動向と不変の価値について考察し、私たちがどのように未来を生き抜くべきかを考えていきます。

生成AIの進化|最新情報について

生成AIの進化は、目覚ましいものがあります。大規模言語モデル(LLM)は、人間が書くような自然な文章を生成するだけでなく、翻訳、要約、質疑応答など、様々なタスクをこなすことができます。ChatGPT o1やGeminiといった最新のLLMは、その性能をさらに向上させ、より複雑なタスクにも対応できるようになっています。

また、拡散モデルは、高品質な画像を生成する能力において、目覚ましい進化を遂げています。Stable DiffusionやMidjourneyといったツールを使えば、誰でも簡単に美しい画像を生成することができます。これらの技術は、エンターテイメント、ビジネス、医療、教育など、様々な分野で活用され始めています。

そこで、まずは生成AIの最新モデルやプラットフォームをご紹介いたします。

生成AI最新モデル|DeepSeek-R1について

最近、注目を集めている生成AI最新モデル「DeepSeek」について紹介します。

DeepSeekとは?

DeepSeekは、中国のAI企業が開発した大規模言語モデル(LLM)であり、商業化よりも技術革新を優先する姿勢が特徴です。資金調達を行わず、独自の開発方針を貫くことで、限られたリソースの中でもOpenAIに匹敵する性能を持つ「DeepSeek-R1」を生み出し、世界に衝撃を与えました。このモデルの最大の特徴として、高性能・低コスト・オープンライセンスの3点が挙げられます。GPT-4やLlama 3に匹敵する性能を持ちながら、オープンソースを活用して開発費を抑え、さらに研究や商用利用を可能にするオープンライセンスを採用している点が、DeepSeekの大きな強みとなっています。このような特性を持つことから、同モデルはAI業界に大きな影響を与える可能性を秘めています。

参考:DeepSeek

DeepSeekの強み

DeepSeekの強みは、技術力・コストパフォーマンス・オープン性の3つに集約されます。まず、技術面では、MoE(Mixture of Experts)、GRPO、知識蒸留といった先進技術を活用し、高精度なAIを低コストで開発することに成功しています。特に、数学的推論能力の高さが注目されており、高度な問題解決能力を持つ点が評価されています。また、コストパフォーマンスの面では、コンテキストキャッシュ機能によりAPIの利用コストを抑え、中小企業やスタートアップでも導入しやすい仕組みを整えています。さらに、オープンライセンスの採用により、多くの開発者が自由に活用できる環境を提供しており、これがさらなる技術革新を促進する要因となっています。

DeepSeekの課題と懸念点

一方で、DeepSeekにはいくつかの課題や懸念点も存在します。その最大の懸念は、安全性や情報漏洩リスクに関するものです。中国企業が開発したAIモデルであることから、収集されたデータが中国政府に提供される可能性が指摘されており、特に個人情報の保護に関して慎重な対応が求められます。DeepSeekのプライバシーポリシーでは、広範な個人情報の収集や中国国内のサーバーへのデータ保存が明記されており、これがユーザーの不安要因となっています。さらに、機密情報や国家安全保障に関わるデータが漏洩するリスクもあり、こうした理由から米国、イタリア、台湾などではDeepSeekの利用制限が進められています。

Azure AI Foundryでの利用開始

しかしながら、こうした規制の動きが広がっておりますが、MicrosoftはAzure AI FoundryのモデルカタログにDeepSeek R1を追加し、利用可能にしています。Microsoftは、DeepSeek R1が厳格な安全性評価を受けており、コンテンツフィルタリングが適用できることを強調しています。Azure上での利用は、Microsoftのセキュリティ基準のもとで監視されるため、一定の安全性は確保されると考えられますが、それでも利用者自身がリスクを認識し、慎重に活用する必要があるでしょう。

出典:DeepSeek R1 が Azure AI Foundry および GitHub で利用可能に

生成AI最新プラットフォーム|Difyについて

近年、AI技術の進化は目覚ましく、ビジネスや生活の様々な場面でAIを活用したアプリケーションが求められていますが、AIアプリ開発には高度な専門知識やプログラミングスキルが必要となるため、多くの人にとってはハードルが高いのが現状です。

そこで注目されているのが、Difyです。Difyは、ノーコードでAIアプリを開発できる革新的なプラットフォームです。プログラミングの知識がなくても、誰でも簡単にAIチャットボットやテキスト生成ツール、画像生成ツールなど、様々なAIアプリを開発することができます。

Difyとは?

Difyは、大規模言語モデル(LLM)を活用したAIアプリ開発を容易にするためのオープンソースプラットフォームです。主な特徴として、以下の点が挙げられます。

ノーコード開発: ドラッグ&ドロップなどの直感的な操作で、AIアプリを開発できます。

参考:Dify

豊富な機能: チャットボット開発、ドキュメント生成、AIエージェント構築など、様々な機能が搭載されています。

多様なLLMに対応: OpenAI、Anthropic、Llamaなど、様々なLLMモデルを利用できます。

豊富なテンプレート: 豊富なテンプレートが用意されており、検索から手軽にアプリケーションの構築を実施可能。

カスタムツールやAPIの統合: Google検索、Slackなどの外部ツールをはじめ、DALL-Eの画像生成、YouTubeとの連携など様々なカスタムツールやAPIを利用することが可能。

Dify活用事例

実際にDifyが企業様でどのように役立っているのかを紹介します。

カカクコム社を例に挙げると、Difyプラットフォームの導入により、生成AIの活用を加速させ、プロダクト開発のスピード向上を目指しており、Difyの導入は、AIエンジニア不足の解消、開発期間の短縮、運用負荷の軽減に貢献しました。

【事例】

全従業員を対象に生成AIの活用レベルを定義し、段階的に活用深度を深めています。

  • ​レベル1: 社内ChatGPTとしての利用 (汎用的なチャットボット):​ 文章作成、情報収集など
  • ​レベル2: 社内GPTsとしての利用 (特定用途に特化したアプリ):​ 社内情報問い合わせ、食べログ記事作成支援など
  • ​レベル3: 高度な生成AIシステムの開発 (他システムとの統合):​ レベル2のタスクのシステム化

具体的な活用事例としては、以下の2つが紹介されています。

  • ​食べログ 店舗紹介記事の作成支援:​既存システムからDifyアプリに移行することで、開発期間を1ヶ月から1日に短縮。
  • 製品情報登録作業の自動化 (トライアル段階):​型番情報から製品スペックを自動抽出。プロトタイプを3時間で作成。

出典:全社的な生成AI活用プラットフォームとしてのDifyの導入事例紹介

コンタクトセンターにおける活用イメージ

Difyを活用したコンタクトセンターのイメージもご紹介いたします。主に以下の3つの側面での活用方法があります。

  1. 顧客対応の自動化と効率化
  • Difyを活用することでFAQチャットボットを容易に構築することが可能です。これにより、顧客からの問い合わせに対して24時間365日迅速に対応することが可能となり、顧客満足度の向上に貢献します。
  • また、単純な問い合わせ対応を自動化することで、オペレーターはより複雑な問題や顧客対応に集中できるようになり、業務効率が大幅に向上します。
  1. オペレーター支援による応対品質の向上
  • リアルタイムで顧客情報や関連ナレッジをオペレーターに提供する機能を提供できるようになるため、オペレーターは迅速かつ正確な情報に基づいて顧客に対応できるようになり、応対品質の均一化と向上を実現します。
  1. データ分析による顧客インサイトの獲得
  • 顧客との対話データを収集・分析し、顧客のニーズや不満点を可視化することができるため、企業は顧客インサイトに基づいたサービス改善や商品開発を行うおことが可能となり、競争優位性を確立できます。

Difyを導入することで、コンタクトセンターは顧客体験の向上、業務効率化、データ分析による顧客インサイトの獲得など、多くのメリットを享受できます。ぜひ、Difyを活用して、次世代のコンタクトセンターを実現してください。

AI導入において変わらず重要なポイント

上段での解説の通り、さまざまなモデルやプラットフォームが登場しています。

しかし、導入側としては、その変化に振り回されるのではなく、本質的な価値を見極め、軸を持って取り組むことが重要です。ここでは、どのような技術が登場しても変わらず大切にすべきポイントを紹介します。

ビジネス課題の明確化

生成AIの導入を検討する際には、技術ありきではなく、「何の課題を解決するのか?」を明確にすることが重要です。例えば、コンタクトセンター業務の応対品質向上についての効率化を目指すのであれば、AIによるFAQの自動応答を導入し、オペレーターは高度な対応に集中できる体制を整えることです。あるいは、バックオフィス業務のコスト削減をするのであれば、書類の自動分類やデータ入力の自動化を進めることで、人的リソースをより価値の高い業務に割り当てるなど、目的が曖昧なままでは、最新のツールを試しても現場に定着せず、いわゆるPoC疲れに陥るリスクが高まります。技術の進化に惑わされるのではなく、明確な目的を持ち、それに合ったツールを選定することが成功の鍵となります。

運用・定着の仕組み

どれほど優れたAIツールを導入しても、それが社内で使われなければ意味がありません。技術的な検証にとどまらず、運用に適した仕組みを設計し、定着させることが重要です。具体的には、現場にフィットする運用フローの整備や、従業員がスムーズに活用できるための教育・リスキリングが求められます。特にコンタクトセンターのような現場では、オペレーターやSVが無理なく利用できる形にすることが、まずは、誰もが使うこと想定した仕組みやルールを作成するのが成功のカギとなるでしょう。

データとセキュリティの管理

どのようなAIを導入するにしても、入力データの質が最終的な成果を大きく左右します。そのため、生成AIが適切に機能するよう、データの整備が不可欠です。具体的には、データのクレンジングやフォーマットの統一などが求められます。特に、個人情報や機密情報の管理も重要な課題です。

例えば、顧客情報をAIに学習させる場合、匿名化処理を施したデータを使用することで、プライバシーリスクを低減できます。また、クラウド上でデータを活用する場合は、アクセス権限の厳格な管理やログの記録を徹底することで情報漏洩リスクを抑えることが可能です。

生成AIの導入が進むほど、データガバナンスの重要性は増していきます。技術の進化とともに、セキュリティポリシーや運用ルールの見直しも継続的に行う必要があります。

ROI(投資対効果)の測定と改善

AI導入は決してゴールではなく、導入後も継続的なチューニングが必要になります。そのため、投資対効果(ROI)を正しく測定し、改善を重ねることが不可欠です。具体的には、時間短縮やコスト削減といった定量的な効果を測るだけでなく、顧客満足度の向上や従業員の負担軽減といった定性的な価値も考慮するべきです。現状の業務プロセス、各プロセスにおける導入効果を可視化し、継続的に改善のサイクルを回すことで、AIの価値を最大化できます。

「人」の役割をどう設計するか

AIの進化が加速しているとはいえ、最終的な意思決定を担うのは人間です。そのため、AIと人間の適切な分業を設計し、最適な業務フローを構築することが不可欠です。AIがルーチン業務を処理し、人間が創造的な判断や顧客対応に集中できるような仕組みを整えることが求められます。

例えば、AIに任せるべき業務としては、「定型的な顧客対応(FAQ対応や注文処理)」「大量のデータ分析やレポート作成」「文章の自動生成(メールの下書き作成など)」が挙げられます。一方で、人間が担うべき業務としては、「顧客の感情を汲み取った対応やクレーム処理」「戦略的な意思決定や創造的な業務」「AIが生成した回答の最終チェックや品質管理」などが挙げられます。

また、AIの判断を適切に補完する業務プロセスを見直し、透明性を確保することも重要です。「何をAIに任せ、何を人がやるべきか?」を慎重に検討することで、AIのメリットを最大限に引き出すことができるでしょう。

最後に

技術の進化が目まぐるしい中でも、導入側としては変わらず大切にすべき軸があります。それは、ビジネス課題の明確化、運用・定着の仕組みづくり、データとセキュリティの管理、ROIの測定と改善、そして人間の役割設計です。これらのポイントをしっかり押さえることで、技術に振り回されることなく、本質的な価値を追求することができます。最新のトレンドを取り入れつつも、不変的な軸を持ち続けることが、生成AIを成功に導く鍵となるでしょう。

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執筆者紹介

古谷 郁実 氏
株式会社AI Shift AIコールセンター事業部 アライアンス推進室
テーマ:AI、リスキリング、ボイスボット
BtoBのメーカーにて営業を経験後、サイバーエージェントに入社。株式会社AI Shiftに出向し、チャットボットやボイスボットのセールスを担当。その後、2023年7月、アライアンス推進室の新設に伴い、生成AIを活用したサービスやプロダクトの販路拡大に従事。

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