BPOの基礎知識
VOC活用の仕組みづくり、応対品質の新基準、ナレッジ共有の運用ルール──思い返せば、この半年で立ち上げた施策はいろいろある。では、それぞれ今どういう状況か、すぐに答えられるでしょうか。
CXを本気で推進したい人ほど、次の一手を考えるエネルギーが強い傾向があります。それ自体は大きな武器です。ただ、始めた施策の「その後」に目が向かなくなると、気づかないうちに現場との関係に影響が出ていることがあります。本コラムでは、施策の自然消滅が起こる構造、それが推進者の信頼にどう影響するのか、そしてその対処法についてお伝えします。
施策の「その後」を振り返らない
施策を立ち上げた直後は、進捗確認の場も報告の機会もあります。しかし序盤の山を越えると、会議の議題は次の施策に移り、振り返りの場そのものがなくなっていきます。明確に「やめた」わけではないのに、誰も触れなくなる。この自然消滅は、推進者本人が一番気づきにくい現象です。
日々の業務に加えて新しい構想を考えている推進者にとって、過去の施策を振り返る時間は優先度が低くなりがちです。意図的にサボっているのではなく、目の前の課題と次の構想に意識が向いていくのは自然です。ただ、推進者の視界から消えても、現場もそうとは限りません。
現場は過去の施策を覚えている
例えば、
- 架電後の記録シートの項目を作り直した
- 顧客の反応をまとめるヒアリングシートを毎週欠かさず書いた
- チームで使えるトークのコツを業務後に30分残って入力し続けた
実務の負荷を引き受けたのは現場です。
それが何の説明もなく立ち消えになると、現場には「結局あれは何だったのか」という感覚が残ります。そしてこの経験が積み重なると、次に新しい施策が降りてきたとき、「どうせまた続かないだろう」と否定的に考えがちになります。表面上は「わかりました」と受け取りつつ、本心から能動的に動くわけではない。施策推進においてマイナスな雰囲気が漂い始めます。
施策の状態を仕分ける
形骸化した施策を続けるでも止めるでもなく、誰も触れないまま残り続ける状態は、現場の不信感につながります。
逆に言えば、明確に仕分けるだけで現場の受け止め方は大きく変わります。
仕分けの選択肢は3つです。
- まだ価値があるなら、運用設計を見直して続ける
- 当初の目的を果たした、あるいは環境が変わって意味が薄れたなら、正式に終了を伝える
- 方向性は合っているが進め方に無理があったなら、スコープや頻度を変えて再設計する
大事なのは、どういった結論になっても「やったからこそわかったこと」を現場に伝えることです。例えば、「ヒアリングシートを毎週書いたことで、断られる理由が時間帯によって全然違うという課題が見えた。それは次のリスト組み直しに活かす」という伝え方であれば、現場は自分たちが割いた時間が無駄ではなかったと感じられます。施策の成否よりも、結果に対してどう意味づけて返すかが、次の施策に現場が本気で動いてくれるかどうかを左右します。
「始める」と「定着させる」は別スキル
施策を立ち上げる力と、定着させる力は、求められるスキルがそもそも違います。立ち上げには構想力と熱量、定着には地道な運用設計と効果検証。どちらも意識次第で両立できますが、得手・不得手はどんな人にもあります。定着フェーズが不得意と感じているなら、得意な人に任せる、あるいは立ち上げの段階で「誰がどう定着させるか」まで設計に組み込んでおくのがポイントです。いずれにせよ、現場を巻き込んで進めた施策は、しっかりとその結果を返すことで信頼感を醸成するように努めるべきです。地道な取り組みになりますが、その後の施策推進の成否にかかわるからです。