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専門家コラム


初回投稿日 : 2025/01/27

<CCの専門家が語る>3年後どうなる?生成AIとコンタクトセンターの行方

私たちは今、コンタクトセンターの歴史的な転換点に立っています。生成AIの急速な進化により、カスタマーサポートの概念が根本から変わろうとしています。
従来の電話対応や定型的な対応から、知的で共感的な顧客対応へ。コンタクトセンター業界は、「問い合わせ対応」という役割から、より戦略的な「顧客価値創造の拠点」へと変革しつつあります。
生成AI導入により急速に進化し始めたコンタクトセンターは近い将来、どう変化していくでしょうか。

1.今見据える未来ーさらなる「進化系コンタクトセンター」とは

生成AIは、単なる技術革新の域を超え、社会実装の時代へと突入しています。今は誰もが生成AIを利用できる環境が整ってきており、生成AIはすでに身近で触れられるツールです。
さらに、生成AIは日々驚くほどの速さで進化しています。昨日できなかったことが明日にはできているかもしれない。それほど歴史的な進化が行われている現状と言えます。

 2025年以降 進化する未来のソリューションと活用イメージ

では、3年後の生成AIはどのような進化を遂げているでしょうか?
これまでも予想以上の急速な進歩を遂げてきた生成AI。現時点でこの先の未来における進化の度合いは未知数です。

しかし、近い将来の生成AIは、自然言語理解と生成能力がさらに向上し、より高度な対話が可能になると考えられています。さらに、Reasoningモデルの進化やAIエージェントの登場により、与えられた情報から学習するのみならず、自ら考え問題解決を行い、与えられたゴールに向かって自律的に計画を進めるなど高度な能力を備え、様々な業界での応用が拡がることが予測されています。

// Reasoningモデルと従来の生成AIの違い //
Reasoningモデルと従来の生成AIとの最も大きな違いは、推論・問題解決能力の有無にあります。従来の生成AI(言語モデルなど)は、与えられたデータから統計的な規則性を学習し、その規則性に基づいて新しい出力を生成するものですが、Reasoningモデルは、ルール・過去の事例・物理モデル・確率理論など、様々な枠組みに基づいて推論や問題解決を行うことができます。
つまり、従来の生成AIは与えられたデータからパターンを学習する一方、Reasoningモデルは獲得した知識を論理的に組み合わせて新しい知見を引き出すことができる点が、大きな違いと言えます。Reasoningモデルは、より知的で合理的な意思決定を可能にするものと考えられています。

// AIエージェントの特徴 //
これまでの生成AIは、ユーザーの指示に基づいてタスクを遂行することから「AIアシスタント」と称される一方、今後主流となるものは「AIエージェント」と称されます。
この2つの違いはどのような点にあるのでしょうか。主な違いは大きく以下の2点であると言えます。

主体性
 AIアシスタント:人間の指示に基づいてタスクを処理。人間の補助的かつ従属的な存在。
 AIエージェント:特定の目標を達成するために、自律的に行動し、状況に応じて独立して
         意思決定。
推論・問題解決力
 AIアシスタント:作業指示に沿った単純な問答・タスク処理が中心。
 AIエージェント:複数の異なるタスクや環境に適応でき、推論に基づいて最適な行動計画を
         立案。柔軟な推論と複雑な問題解決が可能。

これらを踏まえ、改めて3年後の生成AIの進化予測についてまとめてみましょう。
 

<3年後の生成AIの進化予測>
▽Reasoningモデルの進化
 複雑な推論能力の向上、因果関係の理解と分析が高度化し、より的確な問題解決が可能に
▽AIエージェントの高度化
 タスクの優先順位や最適な実行順序の決定など自律的な判断と行動計画の立案が可能に
▽マルチモーダル対応の深化
 音声や画像、動画など複数の異なる種類のデータに対応し、感情や文脈の複合的な理解に
 よる、より自然な対話が可能に
▽専門分野への特化
 特定分野の専門知識を有するAIが登場し、高度な専門的対応が可能
 

これらをコンタクトセンター業務の観点でみると、どのように進化すると考えられるでしょうか。

生成AIはよりコンテキスト(文脈)を理解し、人間に近い自然な対話が可能になると考えられます。
マルチモーダル対応など感情認識技術の発展により、顧客の感情をより正確に理解し、共感的かつ適切な対応ができるようになります。加えて、複数言語への対応力が向上し、グローバルなコミュニケーションも可能にすると予測されます。
さまざまな進化をとげ、生成AIはより人間に近い、自然で知的な対話を実現できるようになるでしょう。また、ReasoningモデルやAIエージェントが主流になることで、コンタクトセンターにおいては、より高度な判断を必要とする業務のAI対応までもが実現し、AIが対応しきれない僅かな部分だけを人が対応するといった効果的な協働を行う「AIコンタクトセンター」に変遷していくと予測されます。
 

 生成AI進化によるコンタクトセンター業務の変化

また、対話管理においても、生成AIの進化は大きな変革をもたらすと予測されており、この進化はコンタクトセンター業務に以下のようなさらなる大きな変化を及ぼすと考えられます。

■シームレスな対話の維持
生成AIは会話の文脈を長期間にわたり記憶し、ユーザーが異なるチャネル(電話、チャット、メールなど)を通じて問い合わせを行っても、一貫した情報提供と対応が可能となることで、よりシームレスな顧客体験を実現します。

■複雑なシナリオの管理
より精緻な対話管理システムにより、複雑な顧客シナリオを効果的に管理し、複数の問題を同時に解決することが可能になります。これにより、顧客からの多岐にわたるニーズに対してもスムーズに対応できます。

■動的な対話生成
AIの高度な自然言語生成能力により、予め用意されたスクリプトに依存せず、その場の状況に応じた適切で自然な会話を生成できます。これにより、顧客対応の柔軟性と人間らしさが向上します。

■リアルタイム学習と適応
AIは対話履歴やフィードバックからリアルタイムで学習し、今後の対話に反映することで、顧客対応の精度と品質を継続的に向上させることができます。

■感情認識と適応対応
AIが感情分析を行うことで、顧客の感情的なトーンを理解し、それに応じた適切な対応が可能となります。これにより、より共感的で効果的な顧客対応を実現します。

対話管理能力が向上することで、顧客対応の奥行きを増すことができ、コンタクトセンターは顧客との自然なコミュニケーションを実現できるようになります。そのため、顧客はストレスを感じることなく、的確で満足のいく対応を受けられるようになります。その結果、顧客の満足度が高まり、コンタクトセンターへの信頼感や愛着が強まることが期待できます。

また、前述したように「Reasoningモデル」という高度な論理的思考力を備えたモデルと「AIエージェント」が組み合わさることで、AIと人との協働の割合が変わると同時に、意思決定プロセスの支援が可能となることから戦略レイヤーの業務にもAIが入り込んでいくことが期待できるでしょう。
 

2.3年後のコンタクトセンターのありたい姿

ここまで、生成AIの進化が及ぼすコンタクトセンター業務への影響を述べてきましたが、ビジネスの成長を考える企業の経営層にとって、コンタクトセンターの理想の未来とはどのようなものでしょうか?

 経営層が考えるコンタクトセンターの理想形

経営層が描く3年後のコンタクトセンターの理想形は、従来のコストセンターとしての役割から脱却し、企業全体の成長を支援する戦略的拠点となることです。
生成AIの活用により、人材コストを削減しながらも、24時間365日の対応を可能にし、顧客満足度を向上させることができるため、コンタクトセンターは今以上に顧客対応のスピードと質を高め続けることが求められます。
加えて、競争優位性を確立するために、データドリブンな意思決定も重要視されるでしょう。これにはAIのデータ分析能力を活用し、リアルタイムの顧客フィードバックを経営戦略に直結させ、顧客のニーズを先取りした商品開発やマーケティング施策を推進することが必要となります。

経営層の理想を具現化するための一つの施策として、TMJではグループコンタクトセンター構想 を掲げています。
グループコンタクトセンター構想とは、企業グループ全体で顧客対応リソースを一元管理し、最適化する戦略的アプローチです。異なる事業部門や子会社のコンタクトセンターを統合し、共通のシステム、AI基盤、ナレッジベースを構築することで、顧客体験の一貫性と効率性を大幅に向上させます。

<TMJが考案するグループコンタクトセンター構想での統合アプローチ>
・共通基盤としての統合AI基盤の構築
・統一されたナレッジマネジメントシステムの導入
・グループ横断的な人材リソースの最適配置
・標準化された品質管理・教育体制の確立

生成AIの導入は、グループコンタクトセンター構想の実現に大きく貢献します。
この構想が実現すると、まず業務の効率化が図られます。
各センターが独立して運営される場合、重複したプロセスや情報の断片化が生じることがありますが、統合作業によりこれらが解消されます。また、リソースの集約により、特定の問い合わせやクレームに対しては最適な担当者を選定することが可能となり、顧客対応の質が向上します。

さらに、生成AIを活用することで、全体のデータをリアルタイムで分析し、顧客のニーズをいち早く察知できます。これにより、新たな商品やサービスの企画に活かすことが可能です。また、AIによる自然言語処理を活用し、顧客の感情や行動パターンを詳細に理解することで、よりパーソナライズされたサービスを提供し、顧客満足度とロイヤルティの向上が期待できます。

このように、全社的な視点で顧客とのやり取りを管理するグループコンタクトセンター構想と生成AIの組み合わせは、コンタクトセンターの最適化に大きく寄与し、顧客対応力を大きく向上させ、企業グループ全体の競争力強化につながるでしょう。

 

 理想形コンタクトセンターが生み出す未来と想定効果

生成AIの進化とグループコンタクトセンター構想の相乗効果により、コンタクトセンター業務は大きな変革を遂げると想定されます。次に変革と想定効果の例をあげてみましょう。

■顧客体験の革新
・グループ横断的な一貫した高品質サービスの提供
・どの接点からでも統合された顧客情報に基づく最適な対応
・グループ商品・サービスの包括的な提案
・マルチ言語・マルチチャネル対応の完全自動化
・24時間365日での均質なサービス提供

■業務効率の飛躍的向上
・共通AI基盤による重複投資の削減
・運営コストの大幅削減
・リソースの最適配置による生産性向上
・トレーニング期間の短縮

■ナレッジ活用の高度化
・グループ全体での知識・ノウハウの統合
・AIによる自動的なナレッジ更新・最適化
・ベストプラクティスの即時展開
・部門間でのナレッジ共有・活用の促進

■データ活用による経営価値創出
・グループ横断的な顧客インサイトの抽出
・商品開発への迅速なフィードバック
・クロスセル機会の最大化
・予測分析による先回り型サービスの実現

■組織力の強化
・専門人材の効果的な活用
・グループ間での人材交流促進
・統一された評価・育成体系の確立
・働き方改革の推進(リモートワーク対応等)

■リスク管理の強化
・統一されたコンプライアンス管理
・セキュリティ対策の強化
・品質管理の標準化 ・BCP対応力の向上

■将来的な発展性
・新技術導入の迅速化
・グローバル展開への対応力強化
・新規事業展開の基盤整備
・デジタルトランスフォーメーションの加速

これらは一例ですが、生成AIの飛躍的な進化とグループ構想の実現により、コンタクトセンター業務は抜本的に最適化され、収益力の大幅な向上が期待できると考えられます。これらの効果により、企業グループ全体の競争力強化と持続的成長が期待でき、コンタクトセンターは単なるコスト部門から、戦略的価値創造部門へと進化していくでしょう。

 

まとめ

 生成AI導入は選択肢ではない、生き残りのための必須戦略

経営層が描く理想形を実現することで、コンタクトセンターは企業の重要な利益創出源として位置づけられ、その戦略的価値はますます高まります。それゆえに生成AIの進化をうまく活用し、次世代のコンタクトセンターの構築に向けて、今から取り組むことが求められています。

生成AIの導入は、もはや選択肢ではなく、企業競争力を決定づける戦略的意思決定 となっています。テクノロジーと人間の協働により、コンタクトセンターは単なるコストセンターから、価値創造部門へと進化するのです。

未来は、すでに始まっています。貴社のコンタクトセンターは、今こそ変革のときです。

この先、生成AI搭載のコンタクトセンターは、単なる効率化ツールから、企業の競争力を左右する戦略的資産へと進化します。この変革を成功させるカギは、テクノロジーの導入だけでなく、人材育成と組織変革の両輪で進めることにあります。

私たちTMJは、お客様のビジネスの成長を支援するパートナーとして、最先端のAI技術と豊富な運用ノウハウを組み合わせたソリューションを提供してまいります。変化の激しい時代だからこそ、確かな技術と経験を持つ伴走パートナーと共に、未来のコンタクトセンターづくりへの歩みを進めることが重要です。

― 貴社の傍らに、相談しながら歩みを共にできるパートナーはいますか?

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執筆者紹介

宮川 正雄
株式会社TMJ 金融サービス営業本部 第3営業部 兼 BPO事業戦略本部 ビジネスデザイン部
テーマ:AI、CX、DX、業務最適化
ベネッセグループおよびセコムグループでの豊富な経験を持ち、営業部の部長を歴任。次世代型コンタクトセンターの推進を担うビジネスデザイン部の副部長も兼務。コンタクトセンターにおける生成AI導入の卓越した知識と実績で、業界の革新に貢献しています。

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