続いては、こちらにそのような意図がなくても質問の仕方によってはそれがプレッシャーとなり、相手が答えにくくなってしまうことについてです。
私は質問力についての研修を行う際、参加者のみなさんに質問が相手に与える心理的な影響を下記のような方法で体感してもらっています。
まず参加者に話すテーマを挙げていただきます。
このテーマというのは「自分が担当している仕事の進捗が遅れている」というような、仕事上で気にかかっていること等です。そのテーマについて3分ほどのショートコーチングを行うのですが、その際に同じテーマについて2回話をしてもらい、それぞれ違ったパターンの質問をします。はじめにするのはこんな質問です。
「あなたの行動のどこに問題があったと思いますか?」
「なぜそれをやらなかったのですか?」
こういった質問をすると、少し沈んだ表情で「うーん」と考えながらもみなさん大体質問には答えてくれますが、後でどのような気持ちになったか感想を聞いてみるとこんな答えが返ってきます。
「責められているような気持ちになってつらかった」
「質問について考えながら反省していた」
次に全く同じテーマでもう一度話をしてもらい、今度は下記のような質問に変えて聞いてみます。
「どのように変えていきたいと思いますか?」
「何から着手するのがいいですか?」
今度は表情も明るくなり先程とは違ったトーンで答えが返ってきます。
また感想を聞いてみるとこんな反応があります。
「さっきよりも前向きに話ができた」
「こうすればいいんだ、というような明るい気持ちになった」
前者と後者の違いは”時制”です。
前者は過去を掘り下げて内省させる質問であるのに対して、後者は未来の行動について聞いています。1on1の時間の中で前者のような質問が多いと受ける側としてはとてもつらい時間になってしまいます。
問題解決をする際には原因を明らかにすることは大切なことですが、1on1のように相手に焦点を当てて話すときに、「あなたのどこに問題があるのか」ということについて考えさせるのはかなりのプレッシャーになります。反省はある程度相手に任せて「望ましいのはどんな姿か?」「そこを目指すには何から始めるのがいいか?」など、未来に焦点を当てた質問をしていくほうが相手は考えやすくなります。
また、1on1ミーティングに慣れていないオペレーターはSVと1対1で話すこと自体にプレッシャーを感じていることがあります(マネジャーと話すSVも同じです)。
ここまで書いてきたように「何を話しても大丈夫」という安心感を与えられるよう、相手の話を肯定的に受け止めながら、ぜひ未来に焦点を当てた質問をしてみてください。