
ここまでフィードバックについて書いてきましたが、フィードバックの目的は相手がそれを受け止めて、自分の行動を改めていくことにあります。そのためには、フィードバックを受けるオペレーターに、「このSVさんの話ならしっかり聞こう」と思わせることが大事です。
これに欠かせないのがSVとオペレーターの間の信頼関係です。もし信頼関係が築けていない中でフィードバックを行えば望ましい結果が得られない可能性が高くなります。普段コミュニケーションをあまりとっていないSVに急に呼び出されてミスについて指摘されたらオペレーターはどのように受け止めるでしょうか?
そのオペレーターのタイプにもよりますが、「普段がんばっているところは見てくれないのに、問題があるところだけ指摘される」と不満に思うこともあるでしょうし、「私はダメなオペレーターだと思われているのかな」というように自信を失ってしまうことも考えられます。
そうならないためには普段からの声掛けや1on1ミーティング等でしっかりとコミュニケーションを取り、信頼関係を構築しておくことが大切です。この信頼関係を構築するために有効なコーチングスキルが「承認」です。
承認とは、相手の存在や行動を「認める」「受け入れる」ことをいいます。SVがオペレーターに対して行う承認は「自分のことを気にかけてくれている」という印象を与え、オペレーターからの信頼を深めるためには非常に重要かつ効果的な方法です。
承認にはいくつかのポイントがあります。オペレーターが成果を挙げたときはもちろんのこと、次のようなタイミングは絶好の承認チャンスです。
- 以前よりも仕事の取り組み方や発言に前向きな変化があったとき
- 業務に対して自分なりの考えを話したり、改善提案をしたりしてきたとき
- フィードバックをした後、その場で約束したとおりの行動を取っていたとき
こういったポジティブな兆候が見られたときには、ぜひとも言葉にして伝えていただきたいタイミングです。
「この前フィードバックしたところをちゃんと実践してくれていますね」というSVからの一言があれば、オペレーターには「自分のことを気にかけてくれているんだな」というSVへの信頼感が生まれ、その行動を続けていくモチベーションにもなります。
冒頭でふれたとおり、フィードバックはどうしてもダメ出しと受け取られてしまうリスクがあります。オペレーターのできていないところを指摘するだけではなく、できているところを承認することでこのリスクを軽減することができます。
指導する側の立場にいる人はどうしてもできていないところに目が行きがちですが、どんなオペレーターにも必ずできているところがあるはずです。フィードバックの際にも「いつも〇〇についてしっかりやってくれていますね」ということを言葉にして伝えるだけで、「私のできているところも理解したうえで話をしてくれているんだな」というように相手の受け止めやすさは格段に高まります。
承認とフィードバックのバランスがうまく取れているコンタクトセンターは、総じてスタッフがいきいきと仕事をしているようにみえます。管理者が常日頃から一人ひとりの存在やその行動を承認しながらも、向き合うべきところにはしっかりと向き合う厳しさも併せ持つ、そんな姿を体現するためにぜひSVやマネジャーのみなさんのフィードバックと承認のスキルを継続的に高めていっていただけたらと思います。