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現場カイゼン


初回投稿日 : 2022/09/30

ベネッセが描く、お問い合わせのエフォートレス化 :第二弾【後編】ベネッセ×TMJ×モビルスが取り組む「チャット対応の本人確認プロセスの取り組み」

顧客接点における「ノンボイス化」「自動化」「問い合わせ導線の改善」など、「問い合わせのエフォートレス化」プロジェクトに取り組む株式会社ベネッセコーポレーション、コンタクトセンターやバックオフィスの設計構築や運営などを行うセコムグループの株式会社TMJ、顧客サポート業務のソリューションの開発・提供を行うモビルス株式会社の対談企画、第二弾です。
今回は、ベネッセコーポレーションの「チャット対応の本人確認プロセスの取り組み」について、担当者5人が当時を振り返りつつディスカッションを行いました。

第二弾・前編は<こちら

対談メンバー

株式会社ベネッセコーポレーション
校外学習カンパニー メディア開発部 アプリサービス開発課長 萱場成樹氏

モビルス株式会社 
代表取締役社長  石井 智宏氏
カスタマーサクセス担当  稲葉 武久氏
営業担当  瀧澤 朋未氏

株式会社TMJ
事業統括本部 Benesse事業企画部 第1セクションCX企画G 西原由美

本人確認プロセスの効率化

石井氏
2022年3月1日~3月31日まで実施した「チャット対応の本人確認プロセス」のプロジェクト「フェーズ2.1」では、「フェーズ1」で課題として挙がった「効率化」の改善を目的としています。施策内容の詳細について教えてください。

株式会社ベネッセコーポレーション 萱場氏

萱場氏
まずは既存のAHTの分解を行いました。 「お客さまと会話をしている時間」「その前段階の本人確認をしている時間」「アフターコールワークの時間」という分解をしていき、「本人確認の部分はシステム自動化することで生産性の改善ができるのではないか」という提案をモビルスからいただきました。
本人確認の方法は、「お客さまにお客さま情報を何点かお伺いして確認する方法」と、「進研ゼミがお客さまごとにユニークに発行している会員番号とパスワードを使った本人確認の方法」があります。どちらの確認方法がより利便性が高いのかという点を社内で議論しつつ、「お客さまにとって一番入力負荷が少ない」という観点から「IDとパスワードを利用した自動認証」として始めました。

解決数の飛躍的な伸び

石井氏
フェーズ2.1の結果がこちらとなっていますが、その際に注目したKPIはありますか?

萱場氏
はい。お客さまが「本人確認をやり切っていただけるのか」と「本人確認手続きの際にご不安や、違和感がないか」という点は、なによりも大事にしていた指標です。

石井氏
そうすると、「セキュアパス選択率」「手続完了率」あたりがKPIとなりそうですね。解決数も飛躍的に伸びていますが、なにかエピソードがあれば教えてください。

図1  効率改善効果
自動化により複数同時対応を実現。 また電話対応と比較して約27%対応コストを削減。

萱場氏
ちょうど同時期に特定の商品のお問い合わせが多くあり、逆にお客さまにとっては、このときに「Secure Path」があったので、ワンストップで解決できたということもあります。

石井氏
個人的には、「会員番号とパスワードをつかった本人確認」は絶対に難しいと思っていました。ほかの企業様で同じような取り組みをしたとき、失敗した理由のほとんどがここにあったのですが、なぜベネッセ様の場合は大丈夫だったのでしょうか?

萱場氏
私たち自身も、会員番号とパスワードが必ずしも浸透率が高いとは思っていません。ただ、お子様の教材がデジタル化していく中でご利用いただく機会が増えている、というのはあると思います。

石井氏
お客さまが自身のID・パスワードに接する機会が多いということですね。たしかにそれはありそうです! もしID・パスワードの浸透率が低くなると、入ってくるお客さまも少なくなってしまうので、意外な結果でした。

お客様満足度の維持と窓口の生産性向上

石井氏
同時対応件数が1.7まで改善したのは、現場でどのような運用変化があったからなのでしょうか?

西原
フェーズ1のときは「お客さま動向や受容度」を慎重に見ていました。フェーズ2.1では「窓口の生産性向上」も併せて見ていきました。
3月度は教材の到着、次年度に向けた手続き・問い合わせが多い時期ですので、チャットでも多くのお問い合わせをいただきました。お客さま満足度を維持しながら、セキュリティも担保しつつ、対応ができたのもSecure Pathによる自動認証があったからと考えています。

モビルス株式会社 石井氏

石井氏
この同時対応数があがることによって、お客さま対応の切り替えも発生するので、AHTはフェーズ1よりは伸びるということですね。
この中で、さきほど萱場様が仰っていたように、本人確認プロセスを自動化した結果、AHTが25%程度下がっていますが、これは狙い通りでしたか?

萱場氏
あらかじめ、フェーズ1のときも現場で細かくAHTの取得をしていただいており、「本人確認の時間がこのくらい下がるのではないか?」と考えていました。お客さまに違和感を抱かせることなく、きちんとやり切れたというのは皆様にお力添えいただいた成果だと思っています。

石井氏
これはまさに「全会話時間における本人確認にかかる時間が削減された」ということなのでしょうか?

萱場氏
はい、そう考えています。

石井氏
なるほど。運用上、本人確認のプロセスが抜けたというのはどのようなインパクトだったのでしょうか?

西原
オペレータからは、本人確認が完了した状態で着信することで、お客さまに対して、「個別回答や手続きがスムーズにできる」という点が好評でした。

石井氏
本人確認部分の自動化という目的をふまえ、CPCはフェーズ1時点で電話とおおよそ同じとなっていましたが、フェーズ2.1ではどう変化しましたか?

萱場氏
AHTは25%下がったものの、規模がまだ小さいことから、電話と比較してCPCが大きく下がったということはございません。今後対応領域を広げて効果を出したいと考えています。

石井氏
つまり、現在はまだチャネルや対応領域といった間口を絞っている状態で、規模を拡大することでかかる開発運用コストが薄まり、より効果を生むのではないか?ということですね。

萱場氏
はい、その通りです。

これまでの振り返りと今後の展望

株式会社ベネッセコーポレーション 萱場氏(左)
株式会社TMJ 西原(右)

石井氏
さらなる効率化という視点で考えたとき、フェーズ2を振り返って、運用面での課題や次のフェーズ2.2にむけてこうあればいいのに、という点は何でしょうか?

西原
そうですね、まずフェーズ2.1の導入のタイミングでは、「どのようにボット側のシナリオを作っていけばお客さまにとって分かりやすくなるのか」また、ボット領域のあとオペレータに着信させた時に「お客さまにいかにスムーズに、違和感なくご利用いただけるか」を考え、取り組んできました。
今後、自動化の領域を広めていくうえでも、やはりそこが肝になるのかなと思っています。

石井氏
確かに、自動化領域が広まるとボットのプリヒアリングなどへの依存度が上がっていくので、そのシナリオは重要になってきますね。ベネッセさんでは、フェーズ2.1をふまえて利用シーンをより拡張していくということと、さらに効率化を目指すという視点で、フェーズ2.2への期待値はいかがでしょうか。

萱場氏
最初にお伝えした通り、Secure Pathは小学講座、こどもちゃれんじの一部のお問い合わせにのみ導入しており、まだまだお客さまにはご不便をおかけしているな、というのが率直に思うところです。
ですので、今後対応領域を広げることでお客さまの利便性を図っていくことが、ベネッセとしてなによりも大事に思っているところです。
当然、対応件数が増えれば増えるほど、オペレータの方も習熟してきて、対応効率も上がってくると思いますし、システム面でも1件あたりの効率化が図れると考えています。
加えてお客さまと応対していない時間の生産性を上げるという意味で、今後はアフターコールワークの領域も含めて自動化を考えていくことになるでしょう。
今後の展望として、お客さまの利便性を考えた時に、テクニカルサポートの領域にも広げていきたいと考えています。
現在は進研ゼミもタブレット教材になってきていて、使いこなせていない方や、デジタル上でうまく操作ができないという方のサポートにも使えると思っています。

石井氏
ありがとうございます。フェーズ2.1で本人確認部分を自動化し、今度はいよいよ実際の手続きやアフターコールワークの領域まで広げていこうということですね。運用面にフォーカスすると、そもそもボイスと比較してチャットのオペレーションを比重高く取り組んでいる企業様はまだまだ少ないです。「電話でやっていたことをチャットに移行したらどうなるの?」という企業様が多い中、そこに本人確認業務が入ってくる、というのはまだまだイメージしにくい世界なのかもと思っています。
本人確認業務をやっていない時の通常の運用体制と、今回新しくこのように本人確認業務まで行った時の運用体制、それぞれでメンバー構成などに、違いがあれば教えてください。

西原
個人情報を取り扱うようになったからと言ってといって、オペレータを替えるということは行っていません。
元々LINEチャットを始めた時に、お客さまのお問い合わせ動向やお問い合わせ内容の先読みをしてお返事をしていくことが必要だと考えていました。そのため、電話対応の経験があるオペレータは、チャットでも問題なく対応できると判断しました。

石井氏
対応自体の難易度は上がっているのでしょうか?

西原
以前はお客さまに「学年や受講いただいている商品」をお伺いしながら応対を進めていましたが、本人確認ができている状態になったことで、お客さまへお伺いする内容が減ったので難易度は下がっています。一方で、対応できる範囲が広がったことに対する難易度は上がったと思います。

石井氏
手続きを受けた時の対応を音声(電話)で行っていたのが、テキストに置き換わっただけの違いで、アフターコールワークについて他に違いはなかったのでしょうか?

西原
今はどちらも同様の対応をしています。

石井氏
例えば「聞き違いや変換違い」などについて、音声ではなくテキストであることのメリットは何でしょうか?

西原
そうですね、お客さまからは「あとで見返することができる。操作をする際に文字を見ながら対応ができて便利」というお声は多くいただいています。オペレータ側としても、コピー&ペーストで対応ができるので、よくあるお問い合わせは、テンプレートを作成しておくことで、すばやく変換間違いなく返信ができます。また、テキストで情報をいただくので、聞き違いによる登録ミスも少なくなることがメリットであると感じています。

石井氏
なるほど。
ただ、先ほどのフェーズ1の時もそうですが、同時対応の取違いはまだリスクとして残っているのでしょうか?

西原
「端末を分けて対応すること」を最初に徹底しているので、そのリスクはほぼない状態で対応ができていると思います。そして端末を分ける運用にも現場は慣れてきているように感じます。

今回の取り組みにおける改善点とそれぞれの対応

石井氏
改めて、フェーズ1とフェーズ2.1を通して、大変だった点や工夫して改善した点を教えてください。

株式会社TMJ 西原

西原
ベネッセ様からは「お客さまの課題を解決できるか」「いかにお客さまにお手間をかけさせていないか」をきちんと見てほしい、と最初に言われていました。その点を現場でも最初から徹底していたので、お客さまが離脱してしまったシーンの改善について、リリース後は毎日のようにやり取りして確認しておりました。「どのようにしてお客さまの手間なく解決まで導いていけるのか」、この点を解消するためにベネッセ様にも多くのお時間をいただきました。さらに、お客さまの問い合わせ内容を全件確認し、モビルス社様には適宜シナリオ変更の対応をしていただいておりました。このように、3社で密に対応を進めていけたことが、改善効果が数値にも出ていると思います。
また、構築段階でも様々なお客さまを想定しながら、「どこまでチャットで対応すればいいのか」「本当にお客さまの手間がかからなくなっているか」ということをベネッセのご担当の方とも議論させていただきました。導入前のテスト段階でも弊社内メンバーに実際に触ってもらい様々な視点の意見をもらって、時間をかけて構築をしていきました。

石井氏
モビルスのスタッフ側で印象に残っていることはありますか?

モビルス株式会社 瀧澤氏(左) 稲葉氏(右)

稲葉氏
ベネッセ様とTMJ様は効率化ということはもちろん重視されていましたが、それ以上にお客さまの利便性や、満足度をすごく意識されている、と感じています。
例えば、ボットで「Secure Path」が選択されたら、とあるシステム的事由で一度お客さまのアクションを挟まなければならない時がありました。その時に「それはお客さま目線で考えたときに困る」ということをおっしゃっていて、最終的にはシステム改修をして対応しました。お客さま目線が第一にあって、その上での効率化というステップで考えられていたので、とても勉強になりました。次のフェーズに進めてく上でも、そのお客さま目線は絶対外せないなというのが、モビルス側が現場目線で感じている点です。

石井氏
なるほど。
私がすごく印象に残っているのは、やはり情報のセキュリティレベルの高さです。金融機関以上だなと思いました。
たとえば「お客さまの会員番号が個人情報に該当する」という考え方は、私たちにとって新しい観点でした。その場合、会員番号をそのまま有人チャット側には戻せないことになります。「Secure Path」を使って戻すということは想像していなかったプロセスでしたが「そういうケースもあり得る」ということを踏まえて、我々の通常機能としても実装させられました。このことが強く印象に残っています。

瀧澤氏
今回、適用していただいた範囲はLINEでの対応でした。今後WEBでも対応を検討されていると思うのですが、そのときにLINEとWEBで課題点の違いなどはあるのでしょうか?

萱場氏
実は、その点は整理しないといけないポイントで、「お客さまにとってLINEとWEBは何が違うのだろうか」ということを考えていかなければならないと思います。LINEだとスマートフォン利用者がほとんどで、チャットの履歴は残りますが、アプリのインストールや「友だち登録」などのお手間がかかります。WEBはお問い合わせしやすいものの、履歴としては残らない、という点があります。お客さまのコールリーズンやお問い合わせツールに応じて整理しないと、使い勝手が悪くなると思っています。そのためVisual IVRなどをいれて、その中で最適なチャネルを見せていく、という取り組みを始めています。
今回LINEで「Secure Path」を取り入れて本人確認まで可能な環境ができているので、WEBのほうでも作っていくことは今後考えていかなければいけないと思います。
品質を同基準に上げていく等、チャネルごとに対策を打たなければいけないと考えています。

瀧澤氏
LINEやアプリは「そこに入ってくださったお客さま」が対象となります。ターゲットが絞れることでメニューも絞りやすくなるということがありますね。その反面、WEBには誰でも来られてしまいますよね。

萱場氏
はい。昨年度冬に進研ゼミ・こどもちゃれんじの入会ページにあるチャットボットをリニューアルしました。
やはりWEBのボットの一番いいところは誰でもアクセスできる点です。ですので、そういった方のご質問やご不安に応え、そして教材に興味を持っていただく、そのような体験を作りたいと思い、ご質問やご不安に応え変えていくことを致しました。

ノンボイス領域の可能性

石井氏
もし何も制約がなければ、叶えてみたい野望やモビルスへの要望はありますか?

萱場氏
進研ゼミこどもちゃれんじでお客さまの問い合わせ理由として多いのが「うまく商品を使いきれず、ご退会してしまう」という内容です。
このお客さまのお声に対して「ノンボイス領域を活用できないか」とずっと思っていました。
現在は「お子様は取り組めていますか?」などとベネッセからお電話する機会があるのですが、お客さまとしては電話以外でも、時間を拘束されずに通知が来てくれたらうれしいと思います。進研ゼミのデジタルデバイスの中で学習しているお子さまの状況を捉えて、プロアクティブに電話以外のチャネルでもご提案をできるようにしていきたいという想いがあります。

石井氏
我々モビルスも製品を色々な会社に提供している中で、明らかに使えていないなというシグナルが上がってくることがあります。そういうときにサポートをしないでいると、ご利用を止められてしまいますので、自分達からどれだけアプローチができるか、にはすごく可能性を感じています。

西原
ベネッセ様はもともと多くの問い合わせ・処理を電話で対応をされていました。現在電話以外の領域への問い合わせも増えてきています。しかし「本当に電話じゃないとできないことなのか」は考えていきたいと思います。

石井氏
今回の取り組みで「ノンボイスでチャットできることを広める」という側面に加え、現場の負荷が下がって余裕やできる稼働が増えた時に、「余裕を使ってどんなことができる」と思いますか?

西原
さきほど萱場様のお話にあったように「お客さまが教材の活用に困ったり退会を決められたりする前にどうやってこちらからアプローチしていくことができるか」を考えていかれると思います。チャットでできることを広げていくことで生み出された余裕は、教材の活用や新しい施策など、人ならではのサービス提供に使えればと思います。

石井氏
この施策の最初のモチベーションに、春の繁忙期をどう平準化してサービスリリースするかということがあったと思います。それをこの施策で担保しつつ、加えて平準時においても追加稼働をプラスのサービスのほうにもっていくということですね。
素晴らしいと思います。ぜひ、これからもそのために弊社でも続けてサポートができればと思いました。

エフォートレスな顧客体験を支えるコンタクトセンター運用

今回は一例として、株式会社ベネッセコーポレーション様とモビルス株式会社様との取り組みを紹介いたしましたが、取り扱う商材や顧客属性などによって、コンタクトセンターの最適な運用方法は異なります。株式会社TMJでは、ボイス・ノンボイス両方のノウハウ蓄積があるため、最適な運用方法をご提案させていただくことができます。お問い合わせ・ご相談はこちら

執筆者紹介

ビジネスのデザイン力で、事業の一翼を担うBPOパートナーのTMJ。将来にわたる経営環境に最適なビジネスプロセスを設計し、事業を代替することで、クライアント企業の継続的な事業成長を総合的にサポートしています。

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