現場カイゼン
▲CX企画グループ 松本さん(左)、CC営業課 若林さん(右)
前編では、提案から運用までクライアントに伴走するTMJのサービスコンセプト【ビジネスデザインパートナー】の事例をご紹介しました。TMJでは、デジタル技術を提供するだけでなく、チューニングなどの運用を人によって実行しながら、課題の抽出・解決を図り、目的達成に向けてフォローアップする取り組み【オペレーションDX】を、2つめのサービスコンセプトとして銘打ち、展開しています。
顧客接点の担い手だからできるコンタクトポイント戦略<後編>では、引き続き、クライアントと共に取り組みを行っている、CX企画グループの松本さんと、CC営業課の若林さんに、会員向けサービスの運営における【オペレーションDX】の推進についてお話を聞きました。
チャットボットの自己解決率が上がらない
──クライアントはコンタクトセンターのDXについて、どのように取り組んでいましたか?
松本:クライアントがDXに取り組み始めたのは、5,6年前 です。コスト最適化のために、チャットボットが取り入れられました。当初は弊社がサービスを提供していたのではなく、システム会社がチャットボットの提供および機能決定、掲載文の入れ替えなどの運用を行っていました。しかし、導入はしたものの課題を抱えていたのです。その課題解決の相談を受ける形で、関わり始めていきました。
──チャットボットはどのような課題を抱えていましたか?
松本:自己解決率が思うように上がっていませんでした。
チャットボットは、1つの問いに対して、1つの答えで課題が解決するような簡単で定型的なお問い合わせへの対応に適しています。チャットボットだけで解決できる問い合わせ内容が増えれば、その分、対応するオペレーターの人数を減らすことができるので、コスト削減につながります。しかしチャットボットで解決しない場合は有人の電話窓口などにバトンタッチして対応する必要があり、チャットボットでの自己解決率を上げなければコスト削減にはつながらないのです。
──自己解決を上げるために、どのような提案をしましたか?
松本:チャットボットはお客様が質問をして、解決できなかった問いをチューニングしていくというシステムを利用していました。ただ、それだけだとどうしても後手に回ったチューニング方法になり、とても時間が掛かってしまいます。 そこでクライアントに、「チューニングにはお客様が知りたいことを先んじてご案内する人の手も必要です」という話をしました。私たちは、電話業務を担当させていただいているので、お客様からこういう問い合わせが入るであろう、ということを把握しています。例えば、この時期にはこのキャンペーンの問い合わせが多いから、キャンペーン関連の設問を利用しやすくなるシナリオに組み替えるなど、仮説を立ててチャットボットの構成を組み立てることができます。こうした顧客視点の知見を活かした提案がクライアントから評価され、チャットボットの運用を全面的に弊社にお任せいただけるようになりました。
顧客目線の導線設計に
──施策の実施により、自己解決率は上がりましたか?
松本:解決率自体は短期的に見れば、すぐに数字に表れてきました。ただ、今の水準までに引き上げるためには年単位の時間が掛かりました。お客様の問い合わせは時期ごとに流れがありますので、地道に時期ごとのイベントや顧客状況に応じたチューニングを繰り返さないと自己解決率は安定しません。さらに、運用していく中で、別の課題も明らかになりました。
──その課題とは何ですか?
松本 チャットボットを使用した方の満足度は非常に高かったのですが、そもそも、お客様のチャットボットの利用率が低かったのです。つまり、お客様がチャットボットを見つけられていなかったわけです。 なぜ、チャットボットにたどり着けなかったのかを分析したところ、導線に問題があることが分かりました。お客様の利用接点は、問い合わせシーンや理由、アクセス量に応じてWebだけで3つもあり、入口多数の複雑なナビゲーションとなっていました。(イメージ図表:左)。
そこを今回は、お客様目線の導線に変えたのです。お客様が見るべき場所にチャットボットの入り口を置いて、お客様の用件に応じて使いやすいチャネルを選んでいただけるように設計し直しました(イメージ図表 右)。
──システムを導入するだけ、チューニングするだけ、ではないのですね。
松本:その辺りが、私たちが【オペレーションDX】と銘打っている所以です。DX化の目的は、お客様目線でいうと、迷うことなく課題が解決できエフォートレスな環境を作ること。クライアント目線でいうと、コストの最適化を実現することです。この2つの目的を達成することが私たちの仕事ですので、達成できなければその原因を探し、改善していくのは当然のことです。ですから、システムを導入して終わり、ということにはなりません。
──改善を繰り返すことで、どのような成果が得られていますか?
松本:自己解決率は、当初に比べて最大で2倍以上に上がってきています。このことで、電話で対応する内容も変わり、オペレーターの育成方法も変わりました。例えば、お客様一人一人のニーズを聞き出して、そのお客様に合わせた対応をする、といった人にしかできない価値を提供できるように、オペレーターの育成※を始めています。結果的に、顧客満足度の向上につながることを期待しています。
※オペレーターの育成については前編をご覧ください。
音声ボットで本人確認
──その他に、DX化として取り組んだ施策はありますか?
若林:ここ1年くらいなのですが、音声ボットにも取り組み始めました。
──音声ボットをどのように活用しているのですか?
若林:音声ボットは、AI技術を利用した音声会話プログラムサービスですが、主には、コールセンターなどで電話オペレーターの業務を代替するために使われています。例えば、FAQを音声で伝える、チャットボットの音声版という捉え方をされることが多いようです。
けれど、私たちは音声ボットをFAQの回答として利用していません。なぜなら、音声ボットを利用することで解決率を担保できて、かつ、お客様の満足を損なうことなく対応できるかというと、現状ではまだ、そこまでの技術レベルには達していないと考えるからです。
そこで、私たちは音声ボットを『本人確認』に使うことを考えました。
ほとんどのお問い合わせは、本人確認を行ってからでないと対応に入れません。会員番号や利用サービスの確認といった定型的なオペレーションを、オペレーターにつなぐ前に音声ボットが聴取して、本人確認を成立させた状態で人による対応をスタートしています。
──音声ボットのメリットはどのようなところにありますか?
若林:これまでは、IVRとCTIの連携でオペレーターにつないだ後に、お客様の情報を把握していましたが、個人情報を取り扱うため、問い合わせ者に本人確認を行わないとトークが始められませんでした。音声ボットで本人確認を終了していれば、お客様とつながった段階ですぐに目的の話題に入ることができます。お客様としては、自身の利用状況や問合せ文脈を分かってくれているという安心感から、信頼感の醸成にもつながります。さらに、最初の定型的なオペレーションに要していた30秒~1分を全部カットできるようになったので、トークタイムを短くすることができました。その分、オペレーターの人件費を削減できますので、クライアントから見ると非常にメリットがあると思います。
お客様にとっても安心感を醸成できますし、コンタクトセンターの運営コストも下げることができるということで、ROI(投資収益率)で250%くらいまでは出ています。
DX化は課題解決の手段
──最後に、【オペレーションDX】ならではの強みはどのようなところにありますか?
松本:私たちは、DX化ありきで提案していません。あくまでクライアントの課題に対して、最適な施策がDX化だったということです。その課題の源流は、お客様の声です。顧客接点を担うオペレータはお客様のために何を変えなければいけないかという視点を持ち続けています。私も現場の声から教えられることが非常に多いです。これは、TMJにとってすごくいい財産になっています。【オペレーションDX】においても、この財産を活かして進められることが大きな強みになっています。
若林:DXに限った話ではありませんが、新しい施策を始める場合、想像もしなかった障壁が現れることがあります。その場合でも、顧客接点を通じてすぐにお客様の反応を得ることができるということは、大きな武器になります。お客様の声を分析し運用しながら改善できる。ここも、【オペレーションDX】の強みだと言えるかもしれません。
──ありがとうございました。ひと口にDX推進と言っても、的確に課題を共有し運用まで伴走する【ビジネスデザインパートナー】と、顧客接点の担い手だからできるコンタクトポイント戦略【オペレーションDX】、2つのサービスコンセプトがTMJの特徴なのですね。顧客接点の担い手という強い武器をもとに、クライアントの目標達成に邁進した松本さん、若林さんの取り組みがよく分かりました。
また、お二人がどんな思いで取り組んだかをお伝えする動画コンテンツもご用意していますので、是非、ご覧ください。
【動画】コンタクトポイント戦略
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