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専門家コラム


初回投稿日 : 2023/06/13

ChatGPTとは?コンタクトセンター運営における活用の可能性

ChatGPTとは

2022年に公開されてから急速に利用者を増やしている「ChatGPT」はアメリカのOpenAIが開発した対話型生成AIで、質問への自然な回答や文章要約などの高い柔軟性から多くの領域で注目を集めています。コンタクトセンター運営においても生成AIの活用は模索されており、さまざまなサービスへの応用が考えられています。今回は、コンタクトセンターにおけるサービス、ソリューションの研究、検討において弊社と協働する株式会社エーアイスクエアの金澤様に、対話型生成AIの代表格であるChatGPTの概要やコンタクトセンターでの活用について解説いただきました。

ChatGPTとは

ChatGPTとは、アメリカのOpen AI社が開発した大規模言語モデルを搭載したAIチャットサービスです。翻訳、要約、質問応答、文章生成、感情分析、ニュース記事・小説・詩等の作成、文章の分類、文章の言い換えなど、自由に入力したテキストに対して人間に近い形で回答を生成します。2022年に無償版として公開されて以降、アクティブユーザー数が史上最速のペースで増え続け、2カ月で1億人を超えたと言われています。

ChatGPTの技術概要

ChatGPTとは「Chat Generative Pre-trained Transformer」の略です。Googleが開発した言語モデルの「Transformer」という技術がベースとなっていますが、従来のアプローチではなく、「Attention」という手法のみを利用して誕生したモデルです。このTransformerから進化したGPT-3.5は、大規模なテキストデータを事前学習したモデルで、ユーザーが利用しやすいUIを兼ね備えたWEBサービスがChatGPTです。GPT-3.5のパラメータ数は3,550億個と言われており、2021年までのインターネット上に存在するデータが学習データとして使われています。現在では、GPT-3.5のパラメータ数を超えるモデル(PaLMやGPT-4)が公開されています。

パラメータ数比較

ChatGPTの精度について

ChatGPTの登場以降、Google社やMeta社などから同様のサービスが公開されていますが、精度の比較をすると、領域によって違いがあることが分かります。

LLM比較

参考:Overcoming the Limitations of Large Language Models

これは、領域による学習データの量やバイアスが関係していると考えられますが、他のモデルと比較してもChatGPTの回答精度が全体的に高いことがうかがえます。基本的にどんな質問をしてもある程度理解できる回答を生成してくれるレベルには到達していると言えます。

しかしながら、ChatGPTは日本語での利用においてまだ課題がある状況です。これは、学習データが2021年までのものにとどまっていることや、日本語の学習データ量が英語と比べて少ないためです。

ChatGPTの得意領域

ChatGPTの得意領域を紹介します。以下は、ChatGPTが得意なタスク例です。

  • 機械翻訳(自然な翻訳を生成)
  • 質問応答(質問に自然な言葉で回答)
  • 文章生成(テーマに応じた長い文章を生成)
  • 感情分析(テキストの感情を分析)
  • キーワード抽出(テキストから重要なキーワードを抽出)
  • 分類(テキストを分類し、ラベル付け)
  • 文章の言い換え(意味を保ちながら別表現の文章を生成)

このようなタスクの処理については、幅広い範囲において自然な文章で回答を生成できるうえに、直前の文脈を反映したやりとりも行うことができます。しかしながら、現時点ではChatGPTの利用にもまだ課題がもあります。

ChatGPT利用における課題

ChatGPT利用における課題としては大きく以下の5点が挙げられます。

  1. 情報の正確性
  2. 情報の鮮度
  3. 情報の出どころ
  4. 機密情報漏洩リスク
  5. 返答時間

ChatGPTは、インターネット上に存在している大量の学習データから回答文を生成するため、誤回答を行うリスクがあります。

情報の鮮度にも注意が必要です。現状は2021年11月までのデータが対象です。ただし、GPT-4ではWeb browsingが最近追加されたため、追って解消される可能性があります。

また、ChatGPTが生成した回答文は情報の出どころをを追うことができません。

機密情報漏洩についても留意すべきです。ユーザーの入力データを学習・改善に利用される可能性があります。直近では入力データをAIトレーニングなどに利用しないモードが追加されましたが、不正行為の監視を目的に30日間はデータが保存されるため、現状では不安を完全に払拭することはできません。

回答の返答時間もまだそれなりにかかります。プロンプトの内容によりますが、20~30秒は要する状況です。

ChatGPTの利用料金

ChatGPTはWEBサービスとAPI利用の方法があります。
WEBサービス利用の場合、無償版と有償版があり、概要は以下の通りです。

ChatGPTのオプションなど

有償版のChatGPT Plusでは3つのモデルを選択することができます。特にGPT-4を利用する場合は、「回答の正確性」「日本語対応の向上」「口調・人格指定の精度」「回答の安全性」などの性能がGPT-3.5と比較して向上しています。

ChatGPTを活用したアプリやサービスを開発する場合は、APIを利用します。API利用の場合の料金は、利用するモデルとトークン数によって決まります。

ChatGPTとトークン数

OpenAI社のサイトでは、上記以外にInstructGPT、Fine-tuning models、Embedding modelsなど、複数のモデル利用が可能となっており、それぞれ料金が異なります。

参照:OpenAI社料金ページ

トークン数は、文字(Character)と単語(Word)の間の単位となり、一概に文字数で計算することはできません。例えば英語で入力する「Hello everyone」はトークン数2となりますが、日本語の「こんにちは みなさん」だとトークン数は13となります。つまり、日本語利用の場合は必要なトークン数が多くなる傾向があり、コストが大きくなりがちです。

ChatGPTのトークン数計算

トークン数を計算する場合は、OpenAI社が公開している計算サイトもしくはプログラム上で計算する方法があります。

ChatGPTのトークン計算サイト

コンタクトセンターにおけるChatGPTの活用動向

コンタクトセンターにかかわるChatGPTの活動動向をサービス提供会社とユーザー企業のそれぞれの視点で紹介します。

サービス提供会社の動向

コンタクトセンターで利用するFAQシステムやチャットボットなどをサービスとして提供している各社は、ChatGPTを搭載した各種サービスをリリースしています。特に多い領域としては「FAQの自動生成」や「コールセンター会話の生成要約」です。また、最近ではボイスボットへの搭載やインテリジェントルーティングでの活用など、自己解決率向上や効率化に向けたChatGPTの活用が盛んに模索されている状況です。

ユーザー企業の動向

ユーザー企業側では、ChatGPTの活用について、各社検討状況が分かれています。損保ジャパンでは、日本語に特化した生成AIエンジンによるコールセンター支援システムを開発中です。一方で、三菱UFJ銀行では、金融機関に求められる信頼性の担保を考慮しつつ、活用を前向きに検討している状況です。また、三井住友銀行では、機密情報漏洩リスクの観点で、ChatGPTに限らずネットサービスへの機密情報や不適切な書き込みは禁止(業務利用の際は、AIの出力結果の不確実性や特殊性などに留意)しています。ただし、各社とも機密情報の取り扱いや正確性の課題解決を前提にChatGPTの活用自体は否定しておらず、継続的に利用を検討中の状況です。現状ではコンタクトセンター業界での事例は多くない状況ですが、今後急速的に広がる可能性があります。

さいごに

質問に対する回答を人間に近い形で生成してくれるChatGPTは、既存のサービスに応用できる可能性が多分にあります。コンタクトセンター領域においても活用法は模索されており、業務の効率化やサービス提供の質向上に期待が高まっています。一方で、「機密情報の取り扱い」や「回答の正確性」をいかに担保していくかが重要なテーマであり、運用にはまだハードルがあるのも事実です。

執筆者紹介

金澤 光雄 氏
株式会社エーアイスクエア 営業部 ジェネラルマネージャー
テーマ:AI、機械学習、ディープラーニング
大手テレマーケティング会社で製造業、小売業、通信キャリアなどを担当し、アウトソーシングやITサービスの企画営業に従事。2016年にエーアイスクエアの創業メンバーとして参画。現在は営業責任者として、各種AIシステムの導入支援・定着支援、クラウドPBX構築支援、DX推進やAI導入に向けた業務コンサルティングなどに従事。コンタクトセンターにおけるサービス・ソリューションの研究・検討において株式会社TMJと協働している。

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