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専門家コラム


初回投稿日 : 2023/08/07

コンタクトセンターにおけるクラウド活用の現状とは?

クラウド活用の現状 (1)

労働人口の減少に伴うオペレーターの採用難や運営コストの増大、テレワークの普及など、コンタクトセンターを取り巻く状況は大きく変化しています。各企業はコスト削減や運営体制見直しの必要に迫られている中で、クラウドサービスが注目を集めています。今回は、コンタクトセンターにおけるクラウドサービスの活用動向について、株式会社エーアイスクエアの荻野様に解説していただきました。

クラウドとは

クラウドについて、その概要や、比較されるオンプレミスとの違いについて紹介いたします。

クラウドの概要

クラウドコンピューティングサービス(以下、クラウド)とは、個人や企業がインターネットを経由して、サーバーやネットワークなどを場所や時間の制限なく利用できるサービスです。

クラウドは近年急速に普及しており、ビジネスの柔軟性や規模を向上させるために重要な役割を果たしています。

クラウドとオンプレミスの違い

クラウドとオンプレミス

オンプレミスとは、自社内にサーバーを設置し、システムを自社で構築する仕組みです。一方クラウドは、サーバーをインターネット上の仮想空間で保有し、システム構築もインターネット上の仮想空間で行う仕組みのことをいいます。

クラウドとオンプレミスはそれぞれ優位点があります。

クラウドは、「導入の早さ」「初期コスト」「拡張性の高さ」「障害/災害時の強さ」が大きなメリットです。申込後は即時利用可能で、初期コストも安価です。また、従量制課金のためピークに合わせたインフラ設計が不要であり、利用分のみを支払うことができます。必要に応じてサーバーの規模・容量などを数分程度の時間で自由に調節できる拡張性の高さや、地理的に離れたデータセンターの利用ができる冗長性の高さ、バックアップ機能があらかじめ用意されていることなども特徴です。

一方で、オンプレミスは、「セキュリティの高さ」「カスタマイズの柔軟性」が大きなメリットです。クラウドの場合は設定不備があると、インターネット側からデータ閲覧などが行えてしまう可能性があるため、適切なセキュリティ設計が必要となります。また、オンプレミスは自社の特性に合わせて、柔軟にシステムをカスタマイズできることも特徴です。

クラウドとオンプレミスの違い(表)

クラウドとオンプレミスそれぞれメリットがありますが、双方の短所を補いつつ最適な組み合わせとして、クラウドの仮想サーバーとオンプレミスの物理サーバーを組み合わせて利用する「ハイブリッドクラウド」を採用する企業が増えています。

例えば、公開しているWebサーバーはクラウド上に置く一方で、機密性の高い情報はオンプレミスで保存するというような使い分けを行うことで、クラウドの高い処理能力やリソース増減の柔軟性と、オンプレミスの高いセキュリティ性の両方を得ることができます。

コンタクトセンターでクラウド利用が進まない理由

メリットの多いクラウドですが、ビジネス市場ではまだその普及率は低いです。アンケート調査によれば、音声コミュニケーション基盤としてクラウドPBXを導入している企業はわずか13.5%で、67.1%は導入予定がないと回答しています。

クラウドPBX導入割合グラフ

出展:キーマンズネット「変化する音声コミュニケーションの現在地」を基にエーアイスクエア社が作成

コンタクトセンターにおけるクラウド利用のメリット・デメリット

コンタクトセンターにおけるクラウド利用のメリットやデメリットはどのようなものでしょうか。

コンタクトセンターにおけるクラウド利用のメリット・デメリット(表)

クラウド化に消極的な理由で最も大きいのは「セキュリティへの懸念」です。データをクラウドベンダーの管理するサービス内に保持する場合、個人情報や顧客データなどの機密情報を扱うコンタクトセンターでは、データの漏洩や不正アクセスのリスクが懸念されています。しかしながら、昨今では、ハイブリッドクラウドの採用や専用線接続による閉域網の構築などで高いセキュリティ環境でサービスを利用することができるようになったため、少しずつクラウドを採用するコンタクトセンターが出てきています。

製品別で見ると、PBXをはじめCTIやCRM、チャットボット、IVR、音声認識等、クラウド対応した各種コンタクトセンターサービスが続々と増えてきています。(参考:月間コールセンタージャパン 2022年4月号、2023年3月号)

また、コロナ禍を機にコンタクトセンター業界でもテレワークが普及してきており、リモートアクセスに対応するためにクラウド移行するケースも増えています。一般社団法人日本コールセンター協会の調査によると、在宅テレコミュニケーターを採用している企業は全体の50%、「予定あり」も含めると64%にもなります。
在宅テレコミュニケーター採用予定グラフ

(引用元:日本コールセンター協会『2022年度 コールセンター企業 実態調査』報告

このような流れから、クラウド移行の流れはさらに進んでいくことが予想されます。

AWSとは

世界で最も人気のあるクラウドは、アメリカのAmazon.comが提供するAWS(Amazon Web Services)です。AWSは、インフラストラクチャーサービス(IaaS)、プラットフォームサービス(PaaS)、ソフトウェアサービス(SaaS)など、さまざまなサービスを提供しています。

AWSサービスと利用メリット

AWSでは仮想サーバーやコンテンツ配信ネットワーク、さらには人工知能(AI)や機械学習(ML)、IoT向けのサービス等、実に240種類以上のサービスを提供しています。ITインフラの構築やビッグデータ処理・分析など、目的別にこれらのサービスを組み合わせて利用することが可能です。AWSには多くのメリットがあり、コンタクトセンターにおけるクラウド化への懸念事項にある「セキュリティへの懸念」や「カスタマイズ性の課題」を解決する機能も備わっています。

  1. 高いセキュリティ
    AWSは国内外のセキュリティ統一基準群に準拠しています。アクセス許可やネットワークとアプリケーションの保護、脅威の検出と継続的なモニタリング等を行っています。また、専用線接続による閉域網の構築も可能で、オンプレミスと変わらないセキュリティ環境でサービスを利用することができます。
  2. 柔軟なサービスの組み合わせ
    サービスはAWS Marketplaceにて自由に購入可能で、必要に応じてサービスの組み合わせを柔軟に行うことができます。また、サービス間の連携も容易で、AWSとAWS外のシステムやネットワークを連携することもできます。

AWSの利用により、これまで懸念とされていた課題が解消できるため、コンタクトセンター向けに提供されているSaaSサービスや、PBX製品などでも、AWSが幅広く採用されています。また、最近では、AWSのサービスの一つでもあるAmazon Connectを採用し、自社でコンタクトセンターシステムを構築するユーザー企業も増えています。

AWS活用事例

AWSの活用事例として、金融業界での例を中心にご紹介します。

<活用事例1:株式会社クレディセゾン>参考ページ

  1. 対象範囲
    電子帳票等の基幹周辺システム移行、デジタルサービス開発、コンタクトセンター高度化等
  2. 概要
    全社的なDX推進の取り組みにより、既存システムのクラウド移行を決定。金融機関への 導入実績やPCI DSSへの準拠等からAWSを採用。電子帳票をはじめとする基幹周辺システムをAWSへ移行し、IT コストを10 年間で 38 億円削減(見込み)。また、Amazon Connectを活用した入金督促システムを構築し、月間 20 万件の自動架電を実現することでオペレーター100 人分の工数削減に成功。

<活用事例2:住信SBIネット銀行株式会社>参考ページ

  1. 対象範囲
    インターネットバンキングシステムのデータベース移行、コンタクトセンター高度化等
  2. 概要
    迅速で柔軟な金融サービスの開発を目的に、既存システムの全面的なクラウド移行を決定。セキュリティとガバナンスの信頼性の高さからAWSを採用。システム開発期間を約 4ヶ月から約1.5 ヶ月に短縮し、インフラのTCOも約40%削減見込み。また、システムのDBをAmazon Aurora PostgreSQL へと移行し、5 年間で約80% 超のコストを削減。加えて、Amazon Connect活用により顧客ニーズの精緻な把握や提案ができる環境を構築。

<その他業界での導入・活用事例>

まとめ

クラウド、特にAWSの登場は世界中のビジネスの発展に大きな影響を与えました。コンタクトセンター領域においても今後、クラウドへの移行が一層進んでいくと考えられます。当社もAWSをベースとして、AIチャットボットや要約システム、音声認識等のSaaSサービスを多く提供しています。また、単なるサービス提供だけでなく、コンタクトセンターにおいてAIを業務活用するために必要なプロセス整理や分析に長けたメンバーが、お客様の業務課題を整理した上で、導入のコンサルティングを実施いたします。コンタクトセンター高度化をご検討の際にはご相談くださいませ。

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執筆者紹介

荻野 桂也 氏
株式会社エーアイスクエア 営業部 アソシエイト
テーマ:クラウド、AWS、要約技術、ChatGPTプロンプト
新卒で、自動車に関するイーコマース・インターネットメディア事業の提供会社に入社。中古車輸出入のプラットフォーム事業において、法人顧客の新規営業、カスタマーサクセス等を担当。2021年にエーアイスクエアに参画。営業担当者としてAIシステムの新規営業に加え、導入における検証や定着支援、精度向上に向けたコンサルティングも担当。コンタクトセンターにおけるサービス・ソリューションの研究・検討において株式会社TMJと協働している。

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