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初回投稿日 : 2024/12/19

カスハラ対策を怠ると「安全配慮義務違反」に!?企業が直面するリスクとは?

近年、顧客や取引先からの理不尽な要求や暴言、過度なクレームといった「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」が社会問題として注目されています。しかし、カスハラ問題に対して適切な対策を講じない企業は、従業員の安全を守る「安全配慮義務」を怠ったとして法的責任を問われる可能性があることをご存じでしょうか?この記事では、カスハラ対策を怠ることがもたらすリスクと、企業が取るべき具体的な対策について解説します。

カスハラが企業に突きつける「安全配慮義務」とは?

「安全配慮義務」とは、労働契約法第5条や労働安全衛生法第3条に基づき、企業が従業員に対して安全で健康的な労働環境を提供する責任を指します。この義務は、従業員が心身ともに健康を保ちながら働ける環境を整えることを企業に求めています。

カスハラは、従業員に対して精神的・身体的な負担を強いる行為であり、これを放置することは「安全配慮義務違反」に該当する可能性があります。たとえば、暴言や脅迫による精神的ストレスが原因で従業員がうつ病を発症した場合、企業はその責任を問われることがあります。さらに、従業員が離職に追い込まれたり、最悪の場合には労災認定を受ける事態に発展することも考えられます。

カスハラ対策を怠ることで企業が直面するリスクとは?

カスハラ対策を怠ることは、企業にとって以下のような深刻なリスクをもたらします。

  1. 損害賠償請求のリスク
    従業員がカスハラによって精神的または身体的なダメージを受けた場合、企業は「安全配慮義務違反」として損害賠償請求を受ける可能性があります。特に、企業がカスハラの存在を認識していながら適切な対応を取らなかった場合、その責任はさらに重くなります。
  1. 労災認定による企業イメージの低下
    「心理的負荷による精神障害の労災認定基準」の改正に伴い、2023年9月にカスハラが精神障害の労災認定基準に追加されました。
    実際に2020年に住宅会社の従業員が顧客からのカスハラにより亡くなり、2022年に労災認定を受けた事案がありました。
    カスハラが原因で従業員が労災認定を受けた場合、企業の管理体制や職場環境に対する社会的な批判が高まります。これにより、企業の評判が低下し、顧客や取引先からの信頼を失うリスクがあります。
  1. 離職率の増加と人材確保の困難
    カスハラを放置することで、従業員の不満が高まり、離職率が上昇する可能性があります。特に、接客業やサービス業では人材不足が深刻化しており、離職者が増えることで業務運営に支障をきたす恐れがあります。
カスハラ経験の増減と離職率との関係
出所:パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」(調査期間:2024年2月6日〜3月25日)

カスハラ対策は「企業の義務」!具体的な取り組みとは?

カスハラ問題に対処するためには、企業が積極的に対策を講じることが不可欠です。以下に、具体的な取り組みを紹介します。

  1. 相談窓口の設置
    従業員がカスハラに直面した際、すぐに相談できる窓口を設置することは非常に重要です。パーソル総合研究所の調査によると、被害を受けた際の対応として最も多かったのが「ただ我慢した(37.0%)」など、相談窓口が十分に機能していない現状がうかがえます。また、専門の担当者を配置していない場合、相談をしても会社や上司から「ひたすら我慢するように」と強要されたり、一方的に責任を転嫁されるなど、セカンドハラスメントにつながるリスクもあります。
    相談窓口の設置と機能強化が、従業員の安心感を高め、健全な職場環境を維持するカギとなります。
カスハラの現場対応
出所:パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」(調査期間:2024年2月6日〜3月25日)
  1. 対応マニュアルの作成
    対応マニュアルは、全従業員が一貫した対応を行うための指針です。カスハラの定義や発生時の対応方法、連携先を明確にし、具体的な対処法を盛り込むことで実用性を高めます。従業員が迅速かつ適切に行動できる指針を示すことで現場の混乱を防ぎ、安心感を向上させます。実践的なマニュアルの整備は、組織全体でカスハラに適切に対処するための重要なステップです。従業員へのヒヤリングや過去の事例分析などを行い整備しましょう。
  1. 教育と研修の実施
    実際にカスハラが発生すると、従業員は気が動転して動けなくなることがあります。お客様への声掛けが適切でない場合、状況を悪化させ、火に油を注ぐ事態を招く可能性もあります。
    具体的なシミュレーションやロールプレイングを繰り返し行うことで、実践的なスキルを習得させることが重要です。
    「一度やったから大丈夫」という考えにとどまらず、いつカスハラが発生しても正しく行動できるよう、日頃から予行練習を兼ねた教育・研修を継続的に実施しましょう。
  1. 法的措置の準備
    カスハラがエスカレートし、暴力や脅迫に発展した場合には、警察や弁護士と連携して法的措置を講じることが必要です。企業としては、従業員を守るために必要な法的手段を迅速に取る姿勢を示すことが求められます。

カスハラ対策を怠ることは「企業の責任放棄」

カスハラ対策は、単なる従業員支援の一環ではなく、企業が果たすべき「法的義務」です。従業員が安心して働ける環境を提供することは、企業の持続的な成長にもつながります。逆に、カスハラを放置することは「安全配慮義務違反」として法的責任を問われるだけでなく、企業の評判や経営基盤を揺るがすリスクを伴います。

まとめ:従業員を守ることが企業の未来を守る

カスハラに真摯に向き合い、従業員を守る具体的な対策を講じることは、企業の責任であり、顧客や取引先との健全な関係を築く第一歩です。
安心して働ける職場環境を整えることで、従業員は過度なストレスなく業務に集中でき、離職を防ぐことができます。これにより、定着率や生産性の向上が期待でき、安定したサービス提供や顧客体験(CX)の向上にもつながります。
また、カスハラ対策を怠ると、自社がターゲットとなるリスクも高まります。従業員と企業の未来を守るためにも、今こそカスハラ対策を検討しましょう。

TMJでは、「カスタマーハラスメント対策研修」を実施しています。こちらの受講もご検討ください。

執筆者紹介

阿部 友美
株式会社TMJ  TMJユニバーシティ
テーマ:人材育成、研修
研修会社にて講師兼営業として14年勤務。主にヒューマンスキル系研修をメインとし、民間企業をはじめ、官公庁や自治体を担当してきた。2021年に株式会社TMJ入社。TMJユニバーシティという社内の教育専門部署にて、社内外の研修企画開発ならびに講師として従事。<実施可能研修>SV初期、クレーム応対、センター運営Basic、ビジネス基礎、基礎コミュニケーション、コーチング実践編、トレーナーズトレーニング、コーチングトレーニング、高齢者応対、ソーシャルスタイルなど

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