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専門家コラム


初回投稿日 : 2016/11/04
最終更新日 : 2019/04/01

自動運転とコールセンター管理に見るAIが拓く未来

人工知能(AI)という言葉が実際に何を指しているのかわかりにくいことが多いですが、最近では車の自動運転に見られるように、人間のように経験を積んで熟練していく人工知能に注目が集まっています。では、このような人工知能がコールセンターに導入されるとしたら、いったい何が起こるのでしょうか。
今回は、コールセンター運営の未来像について考えてみたいと思います。

「熟練するAI」の機械学習法『教師あり学習』と『強化学習』

強化学習のイメージ

人工知能の大きな特徴の一つはロボットが学習して賢くなることだと言います。では実際に何をどう学習するのでしょうか。

VOC(顧客の声)を一つ例に挙げると、人間が分類した問い合わせ種別を学習させることで、人工知能がVOCの問い合わせ種別を理解することができるようになります。このような学習は、人間が先生役となり答えを教えるので『教師あり学習』とも呼ばれます。

一方で、例えば自動車を運転する場合であれば、「途中で障害物を避ける」「他の車とぶつからないように車間距離を保つ」など、その時々で最適な操作をしながら目的地を目指すことが必要になります。しかし、あらゆる場面を想定して、それぞれに正しい操作を教えていくには途方もない手間と時間がかかるので現実的ではありません。そこで、『強化学習』と呼ばれる手法が使われます。

強化学習では自動車につけられたセンサーからの情報をもとに、ある操作を行った時に次の状況が最適になるような操作方法が学習されます。つまり、「赤信号が見えた時にブレーキを踏むことで事故を起こさなくてすむ」「道路わきに人が見えた時に避けるようにハンドルを切りつつブレーキを踏むことで、事故を未然に防げる」といったことを学習していきます。

最初のうちはさまざまな失敗を重ねますが、人工知能を搭載した自動車は道路を走れば走るほど、多様な状況で適切な操作ができるようになっていきます。まさに人間のように経験をつんで熟練していくわけです。

人工知能によるコールセンター運営の未来像を考える

そう考えると、コールセンターでも人工知能を活用すれば、段々とSVの代わりに、さまざまなKPIをウォッチしながら最適な管理をさせることができそうです。

コールセンターでは現在でも既に各種データ(入電ログや応対履歴、勤怠ログ etc.)やKPIなどの数値を取得し解析を行っています。これらのデータに加え、カメラなどを設置することで一人ひとりのオペレータの体調や疲れ具合をある程度計測することができるでしょう。そうすると、例えば、これらのデータに基づいて、理想的なセンターの状態になるように休憩のタイミングを指示したり、予め余分に人を待機させておいた方がいいのかどうか、といったアドバイスを出したりする人工知能が実現するかもしれません。
こうした細かいデータをウォッチしながらのセンター運営は、データを網羅的に見られる人工知能の方が効果を期待できそうです。その分、管理者はより一層、顧客対応や人材育成などに向き合えるようになるかもしれません。

コールセンター管理にAIを導入するとオペレータの働き方がより柔軟になり離職防止につながる

さらに発想を飛躍させてみると、これまでに想像もできなかった体制での効率的で働きやすいセンターが実現できるかもしれません。

現在では決まったシフト帯でしか選べない勤務時間も、オペレータの要望と必要な業務量との関係を見ながら調整してくれる人工知能があれば、オペレータが好きな時間に働けるコールセンターができるでしょう。そうすると、女性や高齢者をはじめとした、さまざまなライフスタイルの方がコールセンターで働きやすくなるとともに、管理者にとってもシフト調整の手間が省け、柔軟で効率的な人員配置ができるようになり、よりコア業務に集中できるようになります。

AIがもたらすセンター運営や働き方の変革による新たな価値創出に向けて

このようなコールセンター管理における人工知能の活用は、現実的には必要なデータを収集する仕組みを作ることや、AIによるアドバイスをきちんと活かせる現場を作ることなど課題の方がまだまだ多いでしょう。
しかし、人がやるには規模やスピードの面で限界があるようなことを人工知能に任せることで、コールセンターの運営スタイルや働き方自体を大きく変えられる可能性があります。

そうした変化は単純に人をAIに置き換えることよりも、より新しく大きな価値を生み出してくれるのではないでしょうか。

執筆者紹介

小泉 敬寛
株式会社TMJ 事業変革部 サービスデザイン室 DSG
テーマ:AI、機械学習、統計分析、シミュレーション、テクノロジー
京都大学で人の行動やコミュニケーションに興味を持ち、映像記録を記憶として活用するための検索技術やテレビ電話を用いたコミュニケーション分析などの研究を行ってきた。TMJ入社後はそれまでの知見や技術を活かし社内外のデータ分析プロジェクトへ参画する一方、人工知能をはじめとする最先端技術の研究開発をおこない、それらを活かした仕組みや価値創出のためのソリューション開発などを担当する。

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