menu
アセット 3
JP / EN
アセット 3 CLOSE

専門家コラム


初回投稿日 : 2019/06/24

カスタマーサクセスは次世代型コンタクトセンターへの切符
今、カスタマーサクセスに本気で向き合う意義

顧客接点運営に関わる私たちの身の回りには「カスタマーサポート(Customer Support)」「カスタマーサティスファクション(Customer Satisfaction)「カスタマーエクスペリエンス(Customer Experience)」など「C」がつく用語がさまざまあると思います。
今回はもうひとつの「C」、「カスタマーサクセス(Customer Success)」を取りあげてみたいと思います。

「あ、また新しい概念が出てきたのね」 
「新しいソリューション/プロダクトを売るための後づけのストーリーなのね」
などと聞き流してしまわないでください。なぜなら、カスタマーサクセスの考え方には、私たちが運営している顧客接点を次世代型へと進化させるためのエッセンスが含まれていると感じているからです。

「カスタマーサクセス(Customer Success)」の考え方が生まれた背景

カスタマーサクセスの考え方は、2000年代初頭にセールスフォース社が初めて採用・実践してきたといわれています。その背景には、同社がクラウドを通したサービス提供(SaaS/Software as a Service)と、サブスクリプションという定期購入型の支払い方法の2点を採用したことがあります。この考えは、IT業界を中心に広がりをみせてきました。

SaaS型×サブスクリプションの契約においては、これまでのようにハードウェアやソフトウェアのメンテナンスによって顧客がベンダーに縛られることがありません。そのため、サービス内容が目的に合わなければ顧客側で簡単に解約をすること(チャーン)ができる状況にあります。したがって、そのサービスを継続して利用してもらうことで初めてビジネスが成り立つというわけです。

そうなると、企業は「解約」をされないように、顧客の成功(カスタマーサクセス)に“本気で”向き合うことが必要になります。これがカスタマーサクセスの考え方が生まれた背景です。売るまでよりも、売ってからの顧客との関係がより大事と言い換えることもできます。

カスタマーサクセスが必要とされている理由

顧客の成功(カスタマーサクセス)に本気で向き合うことが必要な状況というのは、なにもセールスフォース社をはじめとするIT業界だけに限ったことではなく、昨今ではどの企業にも当てはまるといえます。その背景には「消費者の価値観変化」と「スイッチングコストの低下」の2つの環境変化が挙げられると思います。

消費者の価値観変化(所有価値<使用価値)

「“モノ消費”から“コト消費”へ」といわれるように、モノの価値を「所有」と「使用」に分解して考えてみた時に「所有」する価値が相対的に小さくなり、結果として、モノの価値は「使用」価値に近いものになってきています。

車などはわかりやすい例かもしれません。車本体を購入するよりも、カーシェアなどのサービスを通して必要な時に都度使用したり、一定額を支払って一定期間だけ利用したり、異なる車種を楽しんだり、といった使い方がされるようになりました。そこには、車を購入し所有することよりも、必要な時に使用することに価値を置く、昨今の消費者の価値観が反映されています。

スイッチングコストの低下

SaaS型×サブスクリプション型の契約形態にみられるように、他のサービスへの乗り換えにかかる顧客の負担が小さくなってきている傾向があります(スイッチングコストの低下)。

例えば、携帯電話や電気やガスで新しいサービスに乗り換える時、新しい契約をすればもとのサービス提供者に解約の連絡を入れる必要がないなどのケースがそれに当たります。「解約したい」ということを誰かに伝えることなく、あるいは面倒な手続きをすることなく解約できるため、顧客側の心理的な負荷が軽く、知らない間に顧客を失っている状態をまねくリスクが高くなっているということです。「ポチっ」とすれば解約できてしまうイメージです。

これらが示唆するのは、売るまでも大事だけれども、繰り返し、あるいは継続して使ってもらうためにどうすればよいのか、売ってからのことを考えるのがこれまで以上に重要になっているということです。

顧客接点は、カスタマーサポートからカスタマーサクセスへ

ではどうすればよいのでしょうか?

次の表を見てみてください。カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違いを対比させてみるとより分かりやすいと思います。それぞれの役割を分けて考えています。
カスタマーサクセスを実現するためには、「分析」をベースとして、顧客の行動や求めるものを「予測」をすることで、顧客の「先回り」をすることだとしています。従来のようにお問い合わせに対応するという受け身では、「顧客の成功」につなげることはできないと考えているわけです。

 
出典:英治出版『カスタマーサクセス――サブスクリプション時代に求められる「顧客の成功」10の原則』
2018年、p.69 表2.1

カスタマーサクセスは、顧客の先回りをした活動で売上向上など事業成長に直接貢献する収益ドライバー(コンタクトセンターにおいてはプロフィットセンター)、カスタマーサポートは、顧客の要望への対応を活動の中心とするコストセンターとして対比しています。

この対比では「カスタマーサポート」と「カスタマーサクセス」を異なるものとして表現しています。
ですが私は、「カスタマーサクセス」の考え方は、冒頭に申し上げた通り、これまでのコンタクトセンターを次世代型の戦略的な顧客接点に進化させるキーワードと捉えるべきだと考えています。

なぜなら、コンタクトセンターは
①“分析”の重要な要素となり得るVOC(Voice Of Customer/顧客の声)を保有し、
②“先回り”してコミュニケーションする機会とチャネル
を有しているからです。
カスタマーサクセスを実現する要素を、コンタクトセンターの運営をしている私たちが持っているのです。

分析の主な対象となる行動データだけの分析では、なぜそのような行動になったのかが捉えきれず、サービス自体、あるいはサービスフローの改善、顧客とのコミュニケーションにおける訴求ポイントを見出すことが難しいのが実情です。それを補完するのがVOCです。

また、今日コンタクトセンターが保有している顧客接点は電話やメールにとどまらず、チャットやメッセンジャー、アプリなど多様化が進んでいます。ターゲットによってタイミングやチャネルを多様に組み合わせることで有効なリーチを実現することが可能になります。


 

私たちはこれまでも、コンタクトセンターをコストセンターからプロフィットセンターに進化させることを志向してきましたが、顧客や市場環境の動きを鑑みると、今まさにそれを実現すべきタイミングが来ていると感じます。コンタクトセンターがカスタマーサクセスの中核としてその役割を果たせるように、取り組みを深化させていきたいと思います。

関連するサービス

資料ダウンロード

TMJが豊富な経験と最新技術を駆使して得た、業務の効率化やスキル向上に役立つ実践的なノウハウや知識を、無料でご提供します。

to-top
totop