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専門家コラム


初回投稿日 : 2017/02/03
最終更新日 : 2019/08/22

FAQを「検索させない」導線設計でアクセス性を大幅改善した事例

FAQサイトはユーザーの検索しやすさを第一に設計し、キーワードの分析を行いながら検索性を高めていく方法がFAQマネジメントの基本中の基本であることはよく知られています。ところが、「検索させないFAQ」がお客様に評価される事例が続出しています。お客様目線に立ち、必要な情報をあらかじめ用意しておく、ユーザーの導線そのものを改善することで効果的なFAQが構築できます。
ある企業の事例をベースに、多くの企業様でFAQ改善に活用いただけるポイントをお伝えします。

0件ヒットのお客様2万人超からの取り組み

今回は、わたしたちが1年以上にわたってFAQマネジメントを支援する、あるメーカー系企業での改善事例をご紹介します。

この企業ではFAQの月間閲覧数が100万件を超えるFAQサイトを公開しています。TMJのFAQインテグレーションサービスを提供する中で、当初は基本に沿って、検索キーワードの分析を行い結果が見つからない「0件ヒット」を削減する取り組みから改善をスタートしました。

当初、キーワード検索回数は月間8万件を超えており、0件ヒット率は35%。つまり、月間2万8千人ものお客様を「門前払い」していた状況でした。この数字は半年間で25%まで改善しましたが、それでも0件ヒットになる2万人のお客様に対してより効果的な改善策を提示する必要がありました。
しかし、その2万件の0件ヒットデータを分析したところ、大きな「かたまり」の傾向が少なく、多種多様な曖昧ワードや変換ミスと思われるワードが多く、まとまった成果を期待できる改善がしづらい状況であることが判明しました。

サイト来訪者の困りごとを考えるために「ペルソナ」を構築

FAQサイト利用者のペルソナ設定

そこでわたしたちは、「検索ってどんな人がどんな状況でやっているのか?」という、そもそもの観点に立ち返ることにしました。つまりFAQサイトに訪れるお客様の「ペルソナ」を考えることにしたのです。

ペルソナは、アクセスログやFAQシステムから取れるデータである程度類推することはできますが、より明確にするため、電話などの問い合わせ窓口の担当者にもインタビューを実施しました。その結果から、「子供のために初めて製品を購入した保護者」「日常から製品を使い込んでいる情報リテラシーの高いベテランユーザー」といったいくつかのペルソナを具体的に設定しました。

また、それらのペルソナがどんな問い合わせを行う傾向が強いかを洗い出し、FAQリストをグループ化して紐付けし、情報の準備は完了です。

お客様目線からの発想転換でFAQを「検索しやすい」から「検索させない」に

このように設定したペルソナがFAQサイトを訪れた場合にとるであろう行動を想定し、それぞれに合った導線をFAQサイト上に構築しました。

①子供のために初めて製品を購入した保護者
基本的な製品知識が少なく、何が分からないか分からない状態。よって、「初期設定でつまずきそうなポイント」をまとめた入口(導線)を設置し、知識不足でもキーワード検索をしなくて済むように設計。
問診のような分岐型FAQを使い、クリックだけで必要なFAQにアクセスできるように工夫した。
また、ユーザーである子供とその保護者が一緒にFAQサイトを見るようなシーンをイメージし、導線の入口は平易な表現やイラストを使うなど、最初の一歩を直感的で分かりやすいものにした。

②日常から製品を使い込んでいる情報リテラシーの高いベテランユーザー
ベテランユーザーは、情報検索力そのものは高いが、タッチタイピングで検索キーワードを入力するために意外と「変換ミス・入力ミス」が多い。また、知識・経験が豊富であるが故に略語の使用も多い。それが0件ヒットにつながり、「使えないサイト」と思われがち。よって、「高度な使い方をする場合に問題が発生しやすいポイント」をまとめた入口(導線)を設置。ベテランユーザーにとっては煩わしく感じるような初心者向けの情報を見ることなく、最短距離で必要なFAQにアクセスできるようにした。

ここで共通するのは、従来のFAQ改善手法のように「検索しやすさ」を高めることではなく、「検索させない」、つまり検索しなくてもよい状態を作ったことです。FAQサイト運用の立場やFAQシステムの機能といった面からいったん離れ、お客様の目線に立ったからこそ出てきたアイデアといえます。

「検索させない」改善の効果とは

FAQ導線改善の結果です。

・キーワード検索回数:月間8万件→月間3万件に減少
・キーワード検索で0件ヒットになってしまうお客様の数:2万人→7,500人に減少

つまり「検索させない」導線改善は、キーワード検索を行う人そのものを減らし、お客様が適切なFAQにたどり着く可能性を飛躍的に高めたといえます。
また、これまで曖昧な検索から本来参照するべきFAQとは違うFAQを見ていたようなお客様も減らすことができたと考えられ、FAQ解決性の数値も検索総回数の減少とともに徐々に改善されています。

あらためて認識する「お客様目線」の重要性

TMJが提供する「FAQインテグレーションサービス」では、多くの企業様との取り組み実績やノウハウを踏まえたFAQマネジメントのフレームワークを活用しており、基本的なKPIの設定やその評価・改善手法は業種業界を問わず効果が出ることが分かっています。
しかしながら、KPIやFAQシステムの機能に縛られ、お客様目線が欠けてしまうと、ともすれば自己満足のFAQサイトになってしまいます。この事例での取り組みは、改めてお客様目線の重要性を認識する機会になり、フレームワークとお客様目線を行き来する改善手法は他の企業様でも順次展開し効果を発揮しています。

FAQサイトの運用は企業のご担当者がご自身で進めることも可能ですが、多くの企業での改善実績とノウハウ、そしてより重要なお客様目線・第三者目線といった点で、より成果を高めるサポートをさせていただくことが可能です。
基本的なFAQ運用はできているが、本当にそれがよい状態なのか、お客様はどう見ているのかといったところが気になるご担当者様は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

執筆者紹介

約20社の顧客企業のCX関連活動の問題解決を図るプロジェクト型組織です。営業組織やセンターメンバー組織の知識スキル習得、提案活動、また業務設計とその標準化、施策の検証、内外への事例紹介などをワンストップで行っています。

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