BPOの最前線コラム

FAQを「検索させない」改善とは?
お客様に寄り添う導線設計がFAQへのアクセス性を大幅改善した事例

2017.02.03

  • コスト削減
  • 品質向上

FAQサイトは「検索しやすい」ことが第一として、検索キーワードの分析からFAQの検索性を高める改善方法がFAQマネジメントの基本中の基本であることはよく知られています。ところが昨今、「検索させないFAQ」がお客様に評価される事例が続出しています。いったいどういうことでしょうか。
最新のFAQマネジメント手法の開発に取り組んだ事例から、多くの企業様で活用いただける観点をお伝えします。

検索性改善の限界。救済すべきお客様、2万人

今回は、わたしたちが1年以上にわたってFAQマネジメントを支援する、あるメーカー系企業での事例をご紹介します。

この企業ではFAQの月間閲覧数が100万件を超えるFAQサイトを公開しています。TMJのFAQインテグレーションサービスを提供する中で、当初は基本に沿って、検索キーワードの分析を行い、検索結果が見つからない「ゼロ件ヒット」を削減する取り組みから改善をスタートしました。

当初、キーワード検索回数は月間8万件を超えており、ゼロ件ヒット率は35%。つまり、月間2万8千人ものお客様を「門前払い」していた状況でした。この数字は半年間で25%まで改善しましたが、それでもゼロ件ヒットになる2万人のお客様に対してより効果的な改善策を提示する必要がありました。
しかし、その2万件のゼロ件ヒットデータを分析したところ、大きな「かたまり」の傾向が少なく、多種多様な曖昧ワードや変換ミスと思われるワードが多く、まとまった成果を期待できる改善がしづらい状況であることが判明しました。

効果的なFAQ改善のために「ペルソナ」を構築

そこでわたしたちは、「検索ってどんな人がどんな状況でやっているのか?」という、そもそもの観点に立ち返ることにしました。つまりFAQサイトに訪れるお客様の「ペルソナ」を考えることにしたのです。

FAQサイト利用者のペルソナ設定

ペルソナは、アクセスログやFAQシステムから取れるデータで類推することはある程度できますが、より明確にするため、電話など問い合わせ窓口の担当者にもインタビューを実施。その結果から、「子供のために初めて製品を購入した保護者」「日常から製品を使い込んでいる情報リテラシーの高いベテランユーザー」といったいくつかのペルソナを具体的に設定しました。

また、それらのペルソナがどんな問い合わせを行う傾向が強いかを洗い出し、FAQリストをグループ化して紐付けし、情報の準備は完了です。

「検索しやすい」から「検索させない」への発想転換

このように設定したペルソナがFAQサイトを訪れた場合にとるであろう行動を想定し、それぞれに合った導線をFAQサイト上に構築しました。

①子供のために初めて製品を購入した保護者
基本的な製品知識が少なく、何が分からないか分からない状態。よって、「初期設定でつまづきそうなポイント」をまとめた入口(導線)を設置し、知識不足でもキーワード検索をしなくて済むように設計。
問診のような分岐型FAQを使い、クリックだけで必要なFAQにアクセスできるように工夫した。
また、ユーザーである子供とその保護者が一緒にFAQサイトを見るようなシーンをイメージし、導線の入口は平易な表現やイラストを使うなど、最初の一歩を直感的で分かりやすいものにした。

②日常から製品を使い込んでいる情報リテラシーの高いベテランユーザー
ベテランユーザーは、情報検索力そのものは高いが、タッチタイピングで検索キーワードを入力するために意外と「変換ミス・入力ミス」が多い。また、知識・経験が豊富であるが故に略語の使用も多い。それがゼロ件ヒットにつながり、「使えないサイト」と思われがち。よって、「高度な使い方をする場合に問題が発生しやすいポイント」をまとめた入口(導線)を設置。ベテランユーザーにとっては煩わしく感じるような初心者向けの情報を見ることなく、最短距離で必要なFAQにアクセスできるようにした。

ここで共通するのは、従来のFAQ改善手法のように「検索しやすさ」を高めることではなく、「検索させない」、つまり検索しなくてもよい状態を作ったことです。FAQサイト運用の立場やFAQシステムの機能といった面からいったん離れ、お客様の目線に立ったからこそ出てきたアイディアといえます。

検索総回数がみるみる減少。「検索させない」改善の効果とは

以下はFAQ導線改善の結果です。

・キーワード検索回数:月間8万件→月間3万件に減少
・キーワード検索で「門前払い」になってしまうお客様の数:2万人→7,500人に減少

つまり「検索させない」改善は、キーワード検索を行う人そのものを減らし、お客様が適切なFAQにたどり着く可能性を飛躍的に高めたといえます。
また、これまで曖昧な検索から本来参照するべきFAQとは違うFAQを見てしまっていたようなお客様も減らすことができたと考えられ、FAQ解決性の数値も検索総回数の減少とともに徐々に改善されています。

あらためて認識する「お客様目線」の重要性

TMJが提供する「FAQインテグレーションサービス」では、多くの企業様との取り組み実績やノウハウを踏まえたFAQマネジメントのフレームワークを活用しており、基本的なKPIの設定やその評価・改善手法は業種業界を問わず効果が出ることが分かっています。
しかしながら、KPIやFAQシステムの機能に縛られ、お客様目線が欠けてしまうと、ともすれば自己満足のFAQサイトになってしまいます。この事例での取り組みは、改めてお客様目線の重要性を認識する機会になり、フレームワークとお客様目線を行き来する改善手法は他の企業様でも順次展開し効果を発揮しています。

FAQサイトの運用は企業のご担当者がご自身で進めることも可能ですが、多くの企業での改善実績とノウハウ、そしてより重要なお客様目線・第三者目線といった点で、より成果を高めるサポートをさせていただくことが可能です。基本的なFAQ運用はできているが、本当にそれがよい状態なのか、お客様はどう見ているのかといったところが気になるご担当者様は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

関連サービス:FAQインテグレーションサービス

伊藤 哲彌

事業推進本部 競争力開発部 Non-Voice Lab室長

単にツールやシステムの導入にとどまらず、電話窓口を含めたマルチコンタクトチャネル全体の最適化を実現するべく、システムの導入、運用やデータマネジメント設計、ナレッジ活用まで幅広くサポートする部門「Non-Voice Lab」の室長として、自ら多くの案件でコンサルティングとプロジェクトマネジメントを担当する。多数案件の改善に関わっている経験を踏まえ、新たなコミュニケーション手法やコミュニケーション技術要素の研究開発にも携わっている。

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