専門家コラム
Webサイトの売上を伸ばしたい、資料請求件数や会員登録数を増加させたいと考えた時、どのような対策をされていますか?
サイトのコンバージョンを向上させるために、多くの企業では日々さまざまな角度からサイト改善の工夫をされていることと思いますが、FAQを活用してコンバージョン向上に成功している事例が増えてきています。今回は、CX目線でサイト改善をするポイントになる「攻めのFAQ」を実現するための考え方についてお伝えしたいと思います。
WebサイトにおけるFAQの役割とは?
FAQは「お客様の知りたいことや問題を解決」するものとして、多くの企業でWebサポートの重要なコンテンツと位置付けられています。
その一方で、FAQのポテンシャルはお客様の問題を解決するだけにとどまらず、ほかの重要な役割を担うことができると考えています。たとえば、商品購入や契約継続といった「コンバージョン」にも有効であることをご存知でしょうか。特に、昨今注目されているCX(カスタマーエクスペリエンス)の観点でFAQを活用し、成果につなげている事例も徐々に増えてきています。
弊社がFAQ(サポートサイトFAQ)の活用を支援する「FAQインテグレーションサービス」の提供を開始したのは今から5年前ほど前です。当時、積極的なFAQ活用によってお客様満足やコスト削減に取り組んでいた企業はほんのわずかでした。FAQ管理システムを導入されていないケースも多く、また、FAQがどのようにお客様の問題解決やサポート品質に寄与するのか、そのパフォーマンスを適切に分析するノウハウが自社内で体系化されていない場合がほとんどでした。
しかし最近では、チャットボットやLINEといったWeb起点のサポートが多くの企業で検討・導入され、その動きと並行して、FAQの活用が一般的になっています。5年前と比べてFAQの重要性が認識され、活用が進んできたことは、筆者としては喜ばしい状況と感じています。
昨今のFAQ活用のトレンドに沿ったFAQ活用を実践している2つの事例
多くの企業では、「分かりやすいFAQをWeb上に置いておけば、お客様はそれを見て問題を解決し、電話しなくて済むようになる」という、問い合わせ削減目的でFAQを活用していると思います。弊社でも、問い合わせ削減につながるFAQ活用、あるいは、問い合わせが減ったことをどう可視化するかというご相談を受けることが多く、コンサルティングや改善活動の支援をさせていただいています。
ただ昨今、多くの企業がCX(カスタマーエクスペリエンス)を意識するようになり、お客様サポートの場面でもそうした目線を取り入れようとする動きが高まってきています。
ここで、CX目線のFAQ活用に取り組んでいる企業の事例を二つご紹介します。
1.購入者率5~10%アップに成功した化粧品メーカー直販サイトの例
この企業では、直販ECサイトの中でのFAQ活用の目的を「商品購入を促進する」という一点に絞り込んでいます。
お客様は商品ページをご覧になって、商品の特徴や購入方法(会員登録や定期購入など)を確認して購入手続きをしますが、これまでは商品ページや購入方法、会員ページとFAQページが独立しており、お客様は購入のプロセスで不明なことがあると、そのページを離れてFAQページに遷移して情報を探す必要がありました。
Webページの制作においては違和感のないことですが、お客様目線で見ると、知りたいことを探すために一度商品ページを離れ、また戻ってきて、購入手続き中に気になることがあったらまたその情報を探し、と行ったり来たりしなくてはならなかったのです。
その結果、ページの行き来の間に離脱されるお客様も多く、せっかくサイトに来ていただいた方を取りこぼしている状態でした。
弊社でのコンサルティングの結果、「お客様の購入行動を止めない」ためのFAQ活用を行うこととし、商品ページに商品関連のFAQを配置(サブウインドウでの表示)しました。
また、購入時によく問い合わせがある質問をFAQ化して購入手続きのページ内に配置した結果、来訪者数に対する購入者数の割合が5%~10%増加しました。
2.途中離脱を大幅改善したクレジットカード会社の例
この企業では、Web会員向けマイページでの「途中離脱(照会や手続きが完了しないままマイページから離れてしまう)」の抑止、つまりWeb上での手続き完結率の向上という観点でFAQの活用を進めています。
元々FAQの中では、マイページで完結する照会・手続きや、手続きの手順などを解説していましたが、そうしたページを参照しないお客様も多く、アクセスログを分析したところ、FAQを経由しないお客様はFAQを経由したお客様よりもマイページでの途中離脱が20%も多いという結果が出ました。つまり、FAQをご覧いただいた方がWeb上での手続きがスムーズに完了することが分かりました。
そこで、「マイページでできること」に関するFAQをマイページのトップと各メニュー内に配置(サブウインドウで表示またはFAQページへ誘導)。また、具体的な操作方法はそれまで別のWebページにマニュアルが置かれていただけだったものを、操作関連FAQとして新たに設置しました。
特に、途中離脱の多いメニュー(支払方法の変更など)については操作のステップごとに途中離脱状況を分析してFAQを手厚く設置しました。
これにより、マイページにログインするお客様のFAQ参照率が高まり、途中離脱は大幅に削減されました。
お客様にとってはWeb上での手続きがスムーズに完了し、企業目線ではWebやアプリの活用が促進され、また、不要な問い合わせを削減する効果を両立できています。
FAQ活用の2つのポイント
二つの事例はいかがだったでしょうか。見てみると「当たり前」のことをやっているように見えるかもしれませんが、この事例には二つの共通点があります。今後のFAQ活用のヒントになれば幸いです。
【ポイント①】 FAQ活用の目的を「企業のビジネス目線」で設定する
たとえば、FAQサイトの一般的なKPIとして「0件ヒット率」があります。
これはFAQサイトでお客様がキーワード検索をした際に何も候補FAQがヒットしない割合で、低減したい数値です。
ただ、改善活動によって0件ヒット率を低減したとしても、それが企業のビジネス目線でいうとどういった意味を持つのか、というのはそのままでは直結しません。特に今後のFAQ活用においては、お客様満足やWeb完結向上、購入増加など、企業のビジネス目線を取り入れた目的を設定したいところです。
【ポイント②】 FAQに来させるのではなく、お客様の通り道にFAQを「置いておく」「迎えに行く」
お客様がご自身でFAQサイトに来て調べていただける場合は問題ありませんが、多くのお客様は商品購入やWeb手続きなど、本来のサイト来訪目的に沿って行動します。その場合、FAQはお客様の目的をできるだけ邪魔せずに、お客様の行動に沿って分かりやすく必要十分なサポートができることが望ましいといえます。
特に、商品購入やWeb手続きの完了は、企業にとっては「コンバージョン」といえるお客様の行動のため、疑問が発生する度に、必要以上に別ページに遷移させることは、コンバージョンを低下させるばかりか、お客様の不満足を高めることにもなりかねません。
KPI設計はお客様の行動フローを正しく把握することから
最後に、CX目線でFAQを活用する場合のKPI設計についてお伝えしたいと思います。
ここでポイントとなるのは、「お客様の本来目的に沿って考える」ことです。もちろん、FAQの検索性や解決性などの数値も見ていく必要がありますが、まずは、お客様の本来目的(=企業にとってのコンバージョン)を明確にし、その通り道となるページ遷移(行動フロー)にFAQを置いておくような観点でFAQを配置しましょう。
たとえば家電製品の修理サポートのサイトでは、故障かどうかを診断するためにまずFAQを確認し、症状が改善されない場合に修理を申し込んでいただくサイト構成になっていることがあります。
その場合は、FAQがまさにお客様の「次の行動」~「コンバージョン(この場合は症状改善もしくは修理申し込み)」に直結するため、FAQを経由させることが本来目的に沿ったお客様の正しい行動フローといえます。
このように、考え方は共通ですが、業種業界による違いやお客様特性による違いなども踏まえて、CX目線でのFAQ活用のあり方やKPI設計を行う必要があります。
Webサイトの成果向上やコンバージョンアップに取り組まれているご担当者様、FAQの評価・改善をしようとお考えになりましたら、ぜひご相談いただければと思います。
関連するサービス |
---|