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専門家コラム


初回投稿日 : 2022/03/03

高齢者応対トレーニング「ジェロトーク」実践的な活用方法とは?

ジェロトーク_実践的な活用方法とは

タブレット型模擬難聴ツール「ジェロトーク」は高齢のお客様の“聞こえ方”を模擬体験できるツールです。コールセンターのトレーニングで活用されることの多い「ジェロトーク」ですが、今回紹介するのは看護大学のトレーニングで活用された珍しい事例。実際にジェロトークを導入された福岡女学院看護大学・助教の吉川由香里先生にジェロトーク活用についてお話を伺いました。

福岡女学院看護大学について

福岡女学院看護大学 助教 吉川 由香里 先生

福岡女学院看護大学
シミュレーション教育センター
シミュレーション教育学領域

助教 吉川 由香里 先生


福岡女学院看護大学のホームページはこちら


――弊社TMJは高齢者応対トレーニングツール「ジェロトーク」をこれまで主にカスタマーサポート部門向けに提供しており、今回、教育機関でご利用いただいたことは珍しいケースでした。はじめに貴学の概要と特色についてご紹介をお願いいたします。

吉川先生:福岡女学院看護大学は、福岡女学院が看護・医療の専門人材を育成するため、2008年に設立した看護大学です。福岡を代表する福岡東医療センターに隣接し、私立看護大学として初めて国立病院機構と連携しています。また、看護の単科大学としては国内初となる「シミュレーション教育センター」を2016年に立ち上げ、教育の柱として力を入れています。

実践的なシミュレーション教育に注力されている福岡女学院看護大学

シミュレーション教育センターは、病院や施設など実際の臨床現場を模擬的に再現し、実践的なトレーニングを行うことができるのが一番の特長です。通常、看護学生は教育課程において病院等へ実習に行くのですが、臨床現場に入ることへの不安感が強いため、事前にシミュレーションセンターで臨床現場をイメージし、トレーニングを積んだ上で臨地実習に入るようにしています。

――看護学生にとって重要な実践的なトレーニングということですが、看護のシミュレーションではどのようなことが学べるのでしょうか。

吉川先生:看護のシミュレーションにも様々なタイプがあるのですが、特に力を入れているのが、できるだけ臨床現場に近い状況において、思考を働かせるトレーニングです。患者さんの状態を見ながらコミュニケーションをとって情報を取得したり、状態をアセスメントして看護計画を立て対応を考たりして、思考過程をトレーニングします。

▼ライブ配信を使った実習の様子

ジェロトークの導入に至った経緯

――今回、ジェロトークの利用を検討された背景を教えてください。

吉川先生:大学のカリキュラムの一つにコミュニケーションをテーマとした授業があります。模擬患者に対して学生一人ひとりがコミュニケーションとって情報収集をするのですが、そのなかで難聴(加齢性難聴)のある患者さんとのコミュニケーション方法が理解できていないという印象をもちました。

また、実際に臨地実習で担当させていただく患者さんの多くが高齢で難聴のある方も多く、「どのように話してよいのか分からない」という声も聞かれました。昨今では核家族が増えて高齢者とかかわる機会が少ない学生や、対面での会話自体が苦手な学生も多いようです。

また、模擬患者に対するシミュレーションでも、難聴の聞こえ方が分からないため、学生のコミュニケーション技法に対する評価が難しいと感じていました。そこで、統一した判断基準のもとで教育ができないかと考え、その方法を探るなかでジェロトークに行きつきました。

関連サービス:高齢者応対トレーニングツール「ジェロトーク」

看護大学におけるジェロトーク活用方法

――ジェロトークは、実際にどのような使い方をされたのでしょうか?

吉川先生:ジェロトークを共同開発されている株式会社オトデザイナーズさんのご協力のもと、加齢性難聴の患者さんがどのように聞こえているのかのシミュレーション動画をVR教材として活用し、学生に難聴の体験をしてもらいました。そこで、「聞いてみてどう感じたか」「自分ならどのように話すだろうか」などのディスカッションを行いました。

その結果、学生達は声の音量はそれほど気にならないが、滑舌が判りづらいという気づきを得ていました。そして、その言葉を実際に言うとしたらどのように発声すればよいかというトレーニングの場面でジェロトークのタブレットを活用しました。

ジェロトークを使った学生の反応

――ジェロトークを利用された皆さんの反応はいかがでしたか?

吉川先生:ジェロトークは発話を録音して点数を出したり、足りない部分をフィードバックしてくれたりするので、学生はゲーム感覚で競い合うように面白がって使っていました。「声のトーンを変えてみる」「声の大きさを変えてみる」「ゆっくり言ってみる」など、同じ言葉で変化をつけながら練習することで、どうすると伝わりやすいのかを実体験のなかで理解することができたように思います。

難聴体験から見出された「伝わりやすい話し方」

トレーニングを通して学生からは次のような気づきが発表されました。

・長い文節は区切る
・できるだけ不要な言葉は省略して話す
・聞き取りやすい文章に組み立てなおす
・大声だから伝わるわけではない(少し大きめ程度にとどめる)
・聞こえやすい耳の方から話す

難聴の聞こえ方をリアルに体験することで、どのようにコミュニケーションに活かせばよいかという思考がより一層深まったように思います。


▼画面はジェロトークの診断結果例。自分の声(トーク)を吹き込み変換することで、加齢性難聴の方にどう聞こえるかを体感することができます。そのほか、音声全体の採点、結果へのワンポイントアドバイス表示、サンプル学習など、利用者の自己学習を支援する機能が搭載されています。

 

――リアルな体験から実際にどうコミュニケーションに活かすのかを考える手がかりになったのですね。今後、またジェロトークをご活用いただく機会はありそうでしょうか?

吉川先生:そうですね。今回、トレーニング後に予定されていた臨地実習が中止となり(取材時点)、トレーニング効果の検証ができなかったのですが、また来年度以降にも活用できればと思っています。

特に、実際に自分の話し言葉や声が変換されてフィードバックしてもらえる機能は、実践的でありがたいと思いました。なかなか難聴を体験することはできないので、自分の話し方や言葉が相手にどう聞こえるのかが客観的に分かりますし、それに対しての点数など数値的な評価があることは、学生にとっても向上心がわいて点数の更新をめざして取り組むことができました。

シミュレーション教育センターの展望

――シミュレーション教育センターの今後の展望についてお聞かせください。

吉川先生:臨地実習では、学生が経験できない看護ケアも多いのですが、シミュレーション教育では臨床現場に近い環境で何度でも繰り返しトレーニングできる場を提供することができ、看護実践力の向上が期待できます。

海外では、シミュレーション教育と臨地実習での教育に有意差はなかったという報告もされており、既に多くの教育機関でシミュレーション教育が導入されています。日本の看護教育でも、新型コロナウイルス感染拡大に伴って臨地実習が中止となり、代替として学内実習等にシミュレーション教育を導入している教育施設は増えている状況です。

しかし、教育指導者のマンパワー不足やスキル不足などにより効果的なシミュレーション教育ができずに課題が多いとも言われています。当センターではシミュレーション教育指導者育成なども行っていますので、今後も需要に応えるべくシミュレーション教育の推進を図っていきたいと考えています。

――本日はジェロトークの活用法やシミュレーション教育の展望についてもお聞かせいただき、大変参考になりました。このたびは誠にありがとうございました!

執筆者紹介

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