専門家コラム
OpenAI社開発のChatGPTをはじめとした生成AIは、プロンプトの書き換えのみで出力結果を簡単に調整できることから、ビジネスシーンでの活用検討が急速に進んでいます。しかし、求める回答を得るためのプロンプトを適切に設定するためには、実際の出力結果を確認しながら試行する必要があります。また、実際の通話ログをテキスト化して検証対象とするケースが多く、対象通話の選定や個人情報のマスキングなども必要なため、準備に時間がかかります。
そこで本記事では、ChatGPTで「通話のサンプルデータ」を作成する方法をご紹介します。実際に作成してみた結果から得たプロンプトのコツについても解説します。
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プロンプト作成にあたっての前提条件
Open AI社は、ChatGPTで求める結果を得るためのプロンプトに必要な要素のひとつとして、「明確な指示出し」を挙げています。
(参照元:https://platform.openai.com/docs/guides/prompt-engineering)
明確に指示出しするために、まずは「VAWCIF」および「深津式プロンプト」に則り、以下のポイントを踏まえて作成しました。
<ポイント>
・ChatGPTの役割が明確になっていること
・何を出力するのかが明確になっていること
・本文ではない箇所が「#」表記によって明確になっていること
・制約条件が明確になっていること
なお、今回のサンプル通話作成においては、1の役割(ペルソナ)をコールセンターの相談員とお客様という設定のみにしていますが、以下の例のような付加情報を与えることで、より要望に近い結果を得ることができる可能性もあります。
<付加情報>
・性別
・年齢
・国籍
・住所
・家族構成
・収入
・利用サービス
・問い合わせ背景 など
「VAWCIF」および「深津式プロンプト」について詳しくはこちら>
コールセンター業務で使えるChatGPTプロンプト集!効果的なプロンプトを作成する方法
また、今回は上記のVAWCIFおよび深津式プロンプトに加えて、このプロンプトに則しない別パターンのプロンプトでの出力も試行しました。
サンプル通話を作成するためのプロンプト案
コールセンターで検証の対象となることが多い通話データのサンプル作成用のプロンプトをご紹介します。
1. プロンプト案:要約用のサンプル通話
要約用には、一般的な問い合わせ内容の通話を作成出来るようにプロンプトを設計しました。①問い合わせ内容を明確に指示したものと、②特に指示せずおおまかに状況だけを説明したものとの2つのパターンで比較しました。
① VAWCIFおよび深津式プロンプトに則ったプロンプト案
#命令書: コールセンターの通話を音声認識した結果のような文章を生成してください。 #制約条件: |
② 形式に則しない形でのプロンプト案
コールセンターにおけるOP(相談員)とCU(お客様)との通話のような、自然な会話の文章を生成してください。 お客様は{text}のコールセンターに問い合わせをしてきました。 |
試行の結果、①②ともに自然な会話文が生成されました。①のように必ずしも問い合わせ内容を明確に指示せずとも、検証に使用できるレベルの出力は可能と考えられます。自社サービスの問い合わせ内容を仮定するのが難しい場合は、②の形式を採用してみても良いかもしれません。
2. プロンプト案:感情解析用のサンプル通話
感情解析用には、クレームやお褒めの言葉など、顧客の感情がよく表れている通話を作成できるようにプロンプトを設計しました。長めの文字数にも対応できるようにしています。以下はクレーム通話を例としたプロンプトです。①問い合わせ内容+感情の説明を制約条件に加えたものと、②クレーム通話とだけ説明したものとの2つのパターンで比較しました。
① VAWCIFおよび深津式プロンプトに則ったプロンプト案
#命令書: コールセンターの通話を音声認識した結果のような文章を生成してください。 #制約条件: |
② 形式に則しない形でのプロンプト案
コールセンターにおけるOP(相談員)とCU(お客様)との通話のような、自然な会話の文章を生成してください。 お客様は携帯電話のキャリアコールセンターに、クレームのお電話をされています。 文字数は{text}文字程度で出力して下さい。 |
試行の結果、両方とも検証には使用できるレベルで出力ができましたが、①と比較すると②は若干感情を抑え目にした結果となりました。顧客によって温度感は様々であるため、プロンプトの使い分けによって複数パターンの会話を用意しておくことも検証には効果的です。
3. プロンプト案:Q&A抽出用のサンプル通話
Q&A抽出用には、質問が多く含まれる通話を作成できるようにプロンプトを設計しました。こちらも、①問い合わせ内容を明確に指示したものと、②質問する事だけを指示したものとの2つのパターンで比較しました。
① VAWCIFおよび深津式プロンプトに則ったプロンプト案
#命令書: コールセンターの通話を音声認識した結果のような文章を生成してください。 #制約条件: |
② 形式に則しない形でのプロンプト案
コールセンターにおけるOP(相談員)とCU(お客様)との通話のような、自然な会話の文章を生成してください。 お客様は5つほど疑問点を持っており、それらを解消するために携帯電話のキャリアコールセンターに問い合わせをしてきました。 |
試行の結果、②は質問の種類にバラつきが見られましたが、両方とも検証には使用できるレベルで出力ができました。自社サービスで問い合わせが多いものは①、その他の雑多な問い合わせは②というように、パターン別にそれぞれのサンプル通話を用意しておくことも効果的です。
最適なプロンプトでChatGPTを使いこなし、コールセンターの高度化へ
一般的にChatGPTから求める回答を得るためには、プロンプトで明確な指示出しを行うことが重要とされています。しかし、テキスト要約などの厳密なルールが決まっているタスクとは異なり、決まったルールがないサンプル通話を作成するといったタスクの場合は、おおまかな指示を与えることでも十分な出力が得られました。しかし、出力結果に多少の違いが見られたため、問い合わせ内容が想定しきれないコールセンター窓口においては、複数パターンのプロンプトで作成したサンプル通話を準備しておく事も効果的であると考えられます。
また、2023年11月に開催されたOpenAI初の公式イベント「OpenAI DevDay」において、ChatGPTの新サービス「GPTs(GPT Builder)」が公開されました。GPTsは特定の目的に合わせて、ノーコードでChatGPTをカスタマイズできるサービスで、作成したツールの周囲への共有や外部APIとの連携も可能です。本記事をはじめとしたコールセンター向けのプロンプトを組み合わせることで、精度の高いコールセンター専用のChatGPT作成ができる可能性があります。
本記事の内容がコールセンター業務の高度化の一助となれば幸いです。
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