『⑤重要な情報の分かりやすい提供』の原則の中でのポイントは次の3つだと思います。
●顧客におススメしている商品・サービスを何故おススメしているのかの選定理由
●顧客のサービスに対するリテラシーを考慮して、明確で平易で誤解を招かない誠実な情報提供ができているか
●サービスの複雑さに合った(単純でリスクが低い場合には簡素な、そうでない場合には丁寧な)説明ができているか
しかし、分かりやすさを求め過ぎて多くの情報を提供しても本末転倒です。マーケティング用語の中に「選択肢過多」※というものがあるのをご存知でしょうか。
選択肢が多すぎると
①すべての可能性を比較検討ができない
②評価基準が曖昧になりやすい
③切り捨てないといけない選択肢が多いと精神的負荷が高くなる 等
の要因で選択することが難しくなり、結果として購買/利用意欲までもが低下してしまうと言われているそうです。
つまり、顧客は購買/利用プロセスで接触する情報を必ずしも上手に消化できているとは言えないという仮説があります。
※マーク・レッパー(スタンフォード大学)+シーナ・アイエンガー(コロンビア大学)による研究で24種類よりも6種類のジャムを陳列した方が購入率が顕著に高かったという研究結果がある。
参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=0EU8G3Goups
金融商品やサービスに限らず、様々な業界においてサービスが多様化していく中でメリットや利便性が向上する一方、サービスの成り立ちが分かりにくくなっている側面も否めないのではないでしょうか。そのような中でお客さまがどのような状況か(何が分かっていて、何が分からないのか、そして何を求めている/期待しているのか?)を知る必要があります。
そのことを知る方法として有効活用できるのは「カスタマージャーニーマップ」ではないかと考えます。マーケティングセクションだけではなく、コンタクトセンターに蓄積される声はもちろんのこと応対履歴として残しきれていない暗黙知を含め、コンタクトセンターのオペレータや管理者をジャーニーマップ策定に加えて見ていただきたい。普段の応対業務を通して顧客の「わからない」ポイントがわかっているケースが少なくないからです。必ずこれまで気付かなかった機会やリスクが発見できると思います。
最後に、今回は金融庁が公表した「原則」を例に取り上げましたが、「モノ」から「コト」の提供へとサービス全体が多様化していく中で、金融業界だけでなく様々な業界における「原則」としても考え方を整理するヒントになると考えます。