専門家コラム
カスタマー・エクスペリエンス。最近では大分聞き慣れてきた言葉ではあるし、それが何なのかも分かっているつもりですが、具体的に“それ”を設計/構築しようと思うと、ぼんやりしたイメージしかないことに改めて気づきます。多くの人のカスタマー・エクスペリエンスに関わる理解/認識とはそのようなものではないでしょうか?
今回はそんなぼんやりした「カスタマー・エクスペリエンス」の設計や構築にヒントを与えてくれる考え方を紹介したいと思います。
サービス・ドミナント・ロジックという考え方
ひとつは『サービス・ドミナント・ロジック(SDL)』です(※1)。
最初に提唱されたのは2004年で、決して新しい考え方ではないのでご存知の方も多いことと思います。簡単に言えば「モノ」や「サービス」という概念ではなく、全部が「サービス」という考えに立っています。つまり、顧客は「モノ」や「サービス」自体を手に入れることではなく、それらから得られる“コト”が重要なのであるという考え方です。
平成25年版 情報通信白書によれば、SDLは“モノとサービスを一体化させ、顧客が買ってくれた後の使用価値や経験価値を高めることを重視する。SDLの考え方では、企業と顧客の関係は商品を顧客に販売した段階で終わるのではなく、顧客が商品を使っているあいだ継続する。”としています。以前、弊社前社長の林がコンタクトセンターの位置づけを「after salesではなく、before sales」と表現していたことが思い出されます。
劇場館長から学ぶカスタマー・エクスペリエンス
ところでみなさんは劇場に足を運ぶことがあるでしょうか?
岐阜県可児市に「可児市文化創造センター」という劇場があるのだが、その劇場の館長のブログ(※2)が非常に興味深いのでご紹介します。このブログはカスタマー・エクスペリエンスを劇場運営という観点で考えています。
映画でもお芝居でもスポーツでも、チケットの半券をとっておいたりしないでしょうか。それは何故か? 館長によれば、2度と同じことが経験できないから、その時間や空間を切り取った一片としてとっておきたいという気持ちになるということのようでした。その日、その時だけが大事なのではなく、チケットを買う、その日を待つ、劇場に行く、観る、インターミッションの時間にお酒を飲む、余韻に浸って食事するなどなど、すべてが一連の「経験」と言えるわけです。それをどのように演出するかというのが劇場運営に重要だと言われていました。
コンタクトセンターの前後工程を考えて顧客接点運営を深化させよう
サービス・ドミナント・ロジックや観劇の話をコンタクトセンター運営に置き換えて考えてみると、カスタマー・エクスペリエンスの設計・構築は、つまりはコンタクトセンターの前後工程をよく考えてみることから始まると言えそうです。前後工程を考えればプラスワントーク、クロスセルやアップセルなどコンタクトセンターでできることはもっと増えるのではないでしょうか。
既存顧客の維持・活性が増々重要になってきている今だからこそ、このような観点でカスタマー・エクスペリエンスとは何かを見つめ直し、顧客接点でできることを実践していきたいと思います。
※1 サービス・ドミナント・ロジックについては次の資料に簡潔に整理されている
平成25年版 情報通信白書(総務省) http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/
第1章:「スマートICT」の進展による新たな価値の創造
第1節:新たなICTトレンド=「スマートICT」が生み出す日本の元気と成長
3 スマート革命がもたらす事業活動の変化 (1)ICTの進化と「コトづくり」の広がり
※2 可児市文化創造センター「館長の部屋」 http://www.kpac.or.jp/kantyou/
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