川野:
2020年を振り返って、顧客サポートを取り巻く環境はどのような変化があったでしょうか?
島田:
三つの変化があると思います。
一つは、「顧客サポートに戦略的な投資をする企業が増えてきていること」です。特に、クレジットカード業界では、CXの実践やデジタル活用は重要度の高いPJとして推進されている印象です。
顧客サポートへの投資額も大きく、コロナの環境下と相まって、CX実践の土台作りとデジタル化が着実に進んでいると感じています。
二つ目は、「インシデント対応時の顧客サポート重要性」への再認識です。広義ではコロナの感染拡大に伴う企業や行政の活動も含まれますね。そのほか不正ログインの対応などもあります。顧客サポートでは正確かつ迅速な対応が求められ、また期間中の量対応も必要となります。弊社では多くの社員がその応援に入り対応していますが、有人対応だけでなく自動化による効率向上の必要性を改めて感じました。
三つめは、「音声系のテクノロジー活用」です。
弊社の取り組みの中では、困りごとの抽出に音声認識を活用してVOCを全量把握したケースがありました。また、コンタクトセンター・アワード2020の受賞事例でも、音声認識とAIテキスト分類によりコールリーズンを抽出し、電話対応の履歴をテキスト化し管理・検証されたテーマがありましたが、テクノロジーを使っても最後は人の力で定着させることで、生産性を上げることが大事という受賞ポイントでした。
試行から定着のフェーズに移行していると感じています。
石井氏:
テクノロジー面でも、昨年は音声認識・音声合技術が、実証実験ではなく実用化できるようになった、大きな飛躍の年でした。APIが公開されているGoogleだけを見ても、ひと月単位で認識精度が上がっています。ようやく地に足のついた使い方ができるようになったのではないでしょうか。
「チャットボットはなんでも答えてくれる」のは幻想だったと理解され始めて、AIが注目される前にあったシナリオ型ボットの価値も再認識され、AIとシナリオ型の使い分けで、成果を出せる形で使われ始めました。