現場カイゼン
コンタクトセンターにおける課題のひとつとして、人材育成があります。株式会社TMJでは、経験学習に着目し、現場での「経験」と「振り返り」を盛り込んだ独自の人材育成プログラム「PLATOS」(プラトス)(※)をコンタクトセンターの全拠点で導入しています。
今回は、北海道で大手住宅設備メーカーのコンタクトセンターでセンター現場を指揮する佐藤PM(プログラムマネージャー)にインタビューさせていただきました。PLATOS浸透の一環として北海道拠点が独自で取り組む、管理者育成に焦点を当てたマネジメントプロジェクトについてお伺いしました。
※PLATOS:Planning(計画)、Training(研修)、OJT(On-the-Job Training)、Skill Check(スキル評価)の頭文字を取った略称。TMJ独自の人材育成・研修プログラム。
<関連記事>コンタクトセンター管理者を育成し続けるしくみ「PLATOS」<前編>
2020年に始動した管理者育成マネジメントプロジェクト
Q:管理者育成マネジメントプロジェクトについて、教えてください。
本プロジェクトは、TMJの柱となっている人材育成プログラム「PLATOS」(プラトス)の浸透と1on1コーチング推進に向けて2020年に北海道拠点で始動しました。6名の立場の異なるメンバーでプロジェクトは構成されており、約250名のSV・LSV(※)層の育成を対象としています。
※SV:「Supervisor(スーパーバイザー)」の略称。TSR(オペレーター)の指揮・監督を行う。
※LSV:「Lead Supervisor(リードスーパーバイザー)」の略称。現場の指揮・監督を行う。
目的として、北海道拠点のコンタクトセンターで働く管理者の育成があります。
そして、管理者がそれぞれの目標を見据えた上で、受け身ではなく能動的に行動できる状態を作ることを目標として掲げました。
Q:コンタクトセンターで働く管理者の育成に着目するきっかけについて教えてください。
人材育成に向けた取り組みが現場に委ねられており、人材の質の部分でコンタクトセンターによってバラつきが生じていた現状がありました。
各コンタクトセンターでの環境の違いから管理者自身が教わった内容に違いがあったり、ご自身の経験や勘がベースとなった育成手法を取られていたりと教える側の育成手法やスキルにバラつきがあり、教わるオペレーター側の成長にもバラつきが出る状況が見受けられました。そこで、管理者側の育成に力をいれたいという想いがありました。
また、多くのコンタクトセンターでも課題となっているオペレーターの短期間での離職問題も育成に力を入れる背景のひとつでした。人材の質を高めるはずの育成が、しっかりとできていないことで離職を招いているのではという懸念がありました。
コーチングスキルの習得と1on1ミーティングの実施を平行して実践
Q:実際に、管理者の育成に向けてどんな取り組みをされたのでしょうか。
SV・LSVへ人材育成プログラム「PLATOS」(プラトス)の浸透に向けて、
- LSVのコーチングマネジメント研修
- 部長×マネージャー、マネージャー×LSVの1on1ミーティング
を実施しました。
コーチングマネジメント研修はマネージャーや部長はすでに受講しておりましたが、北海道拠点ではLSVも受講の対象に広げました。
そして、実際に研修で学んだことを実践するアウトプットの場として1on1ミーティングを実施しました。
1on1ミーティングがフィードバックだけの場とならないように、コーチングマネジメント研修でコーチングスキルを身につけるインプットの場も平行して設けることで、「対象者の行動変容につながる対話」ができる機会を作りました。そして目標として掲げていた受け身ではなく能動的に行動できる状態に近づけられればと考えていました。
PLATOSは個人の自主性を尊重することがベースとなっているため、強制力はありません。そこで北海道拠点では、「管理者育成マネジメント」をプロジェクトとして取り組むことで定期的にコミュニケーションを取る環境を構築しました。
Q:1on1ミーティングはどのぐらいの頻度で実施していたのでしょうか?
1on1ミーティングは、基本隔週をベースに全12回の実施を必須とし、プロジェクトで進捗を管理しておりました。
Q:佐藤PMご自身も1on1ミーティングを実施された中で、いかがでしたか。
お話を聞く中で、相手のことを知っているようで意外と知らなかったことに気付きました。
業務の中身や結果で相手も見てしまう部分がありましたが、1on1ミーティングで考え方を確認でき、「この人はこういう思考で動くかもしれないから、こういう指示をした方がいいかもしれない」などの指標になりました。育成の視点が変わったと思っています。
また、以前は面談などの場で私の方がついつい話し過ぎてしまうことが多かったのですが、コーチングスキルを意識したことで相手が話す場を作り、自己成長を意識できる場に少しでも近づけたかなと感じています。
Q:現場での反響はいかがでしたか。
約250人の対象者の中で約200人からアンケートにご協力頂くことができ、
「オペレーター個々の特性に合わせた指導方法を考えられるようになった」
「自己目標の達成に向けて“どう行動すべきか”考える癖がついた」
「能動的な学習・行動習慣が身に付いた」
「受け身姿勢が能動的な行動ができるようになり、他メンバーからの見られ方も変わった」
「自己理解や自己評価する力が向上した」
などの嬉しい声がありました。
育成関係にある上司と部下の対話が業務に特化する会話が多くなっていて、育成視点での対話が少なかったことに改めて気付いたという声がよく聞かれました。
また、研修でコーチングスキルを事前に学んでいたことで1on1ミーティングが対話しやすい場になったという声もありました。1on1ミーティングで何を話したらよいかわからないという状況を作らず、有意義な時間としてご活用いただけたのではと感じました。
Q:育成効果を対象者が実感できているというのは素晴らしい結果ですね!
嬉しい結果ですね!インプットだけでなく、1on1ミーティングというアウトプットの場も設けたことでより育成が現場へ浸透したのではと感じています。
人材育成プログラム「PLATOS」では、人材育成のプロセスの中で評価することが盛り込まれており、今回の管理者育成マネジメントプロジェクトでも非常に重要なポイントとなっています。
定期的に1on1ミーティングでコミュニケーションを取り、結果的に評価につながる状態を作ることで受け身ではなく、能動的な行動を促す大きなきっかけになります。
評価される場を設けることは、対象者にとって正しい方向に進めているのかの指針となり、個人の成長にも影響を与えるものだと思っています。
コロナ禍だからこそ、言い訳ができない環境がプロジェクトを後押し
Q:管理者育成マネジメントプロジェクトにおいて、工夫したポイントについて教えてください。
人材育成をマネージャーにたくすのではなく、プロジェクトとしてチームを作って全体を管理していくという工夫をしました。そして、プロジェクトとして取り組むことで、1on1ミーティングで対話をする場を必然的に設けることができました。
1on1ミーティングは、事前に現状の整理をしてもらう準備が必要なため、スケジュールを決めた上で計画的に実施していきました。コロナ禍での取り組みとなったため、オンラインでWeb会議ツールを活用していたことも対話の促進につながったポイントでした。
オンライン実施だと、会議室が埋まっているから実施ができないという言い訳ができないので(笑)、場所を問わずに実施できたことが良かったと感じています。
また、オンラインだからこそ対面で話すよりも緊張が和らぐ面もあり、話しやすい環境になったのではと感じています。
Q:コーチングマネジメントスキル研修も今回のプロジェクトで大きな役割を担っていましたね。
そうですね、当初の課題であった管理者自身の育成スキルのバラつきに関して、すでにマネージャーや課長が受講していたコーチングスキル研修を学ぶ場を設けたことで、管理する立場の違いはあってもスキルや対話のあり方の認識が統一されました。共通言語で語れる環境ができたと思います。
そして、結果的に上下で関係性が遮断されずに、今回のプロジェクトで関係性が深まったのではと感じます。
編集後記
人材育成という長期的な取り組みを行う中で、重要性は理解しながらも、目の前の緊急性の高い業務に追われて手をつけられていないという状況は珍しくありません。
また、コロナ禍でコミュニケーションが取りづらくなったという声が多く聞かれる中で、場所を選ばずにできるので逆に1on1ミーティングがしやすい環境になったとポジティブにとらえ、逆転の発想で約250人という大規模な人材育成に取り組まれていることが非常に印象的でした。
研修を通して対象者のスキル習得の場を設け、横軸で人材品質を統一した上で、縦軸で管理者層として1on1ミーティングで対話を重ねる環境を作り、横と縦のどちらにも人材育成の幅を広げた面での取り組みはとてつもなく強い組織を作るとヒシヒシと感じたインタビューでした。
佐藤PM、貴重なお話をありがとうございました!(業務改善ノート編集部:安田(恵))
株式会社TMJでは、コンタクトセンターで働く従業員に向けた人材育成・研修サービスを提供しています。人事育成の強化をご検討の際は、ぜひご相談ください。詳しくは、<こちら>。
キーワード
関連するサービス |
---|