専門家コラム
ビジネス環境の変化を背景に、業務改善へのニーズが増しています。今回は、企業が業務改善を行うにあたり最初に着手する「業務の見える化」に着目しました。
TMJの業務量調査・分析パッケージでも活用しているBPEC手法を提唱する、株式会社BPデザイナーズ代表取締役社長 梁田憲治氏をお迎えし、営業支援部 支援課の茨木応と事業変革部 東日本立上・改善支援センターの末永麻那美が改善に導く業務の見える化についてお話を伺いました。
コロナ禍で高まったコーポレート業務の可視化ニーズ
―茨木:目まぐるしく変化するビジネス環境やお客様の多様化に対応するために、企業はさまざまな施策に取り組んでいるかと思います。このような状況下で、業務改善という視点ではどのようなニーズが高まっているでしょうか。
梁田氏:大きな社会的トピックをきっかけにビジネス環境に変化が生じるとき、業務改善としては「業務の可視化」へのニーズが高まる傾向にあります。
現在、注目しているのがコーポレート業務(※1)の可視化です。「コロナウイルスの流行」という社会的トピックをきっかけに、大企業を中心にシェアードセンターを立ち上げる動きが出始めているためです。
私たちが提供している、業務の見える化と業務改善プロジェクトの推進を可能にする手法「BPEC(Business Process Engineering Cycle)」も、社会的トピックをきっかけとしたビジネス環境の変化に応じて求められてきました。
―茨木:「BPEC」とは、具体的にどのような手法なのでしょうか。
梁田氏:BPECは、「業務改善の進め方がわからない」「外部に調査を依頼する予算がない」「社員に負担をかけたくない」といった企業の悩みを解決するために考案された、業務を可視化するための手法です。
※1:コーポレート業務:人事・労務、総務・庶務、経理・財務、経営企画、法務、情報システムなどのコーポレート部門が担う業務全般。
業務改善が上手くいかない3つの理由
―茨木:業務改善が上手くいかない原因のひとつに、可視化が思うように進まないケースが見受けられます。この要因は何でしょうか。
梁田氏:多くの企業は業務改善に取り組んだ経験はあるものの、上手く改善が進まなかったケースが7~8割と非常に高い印象があります。その原因は、大きく3つあると思います。
1つ目の原因は、業務改善が上手く進まなかった経験をしていることで、取り組みに後ろ向きになってしまう層がいることです。
2つ目の原因は、業務のヒアリングに割く時間がなかなか作れないことです。どうしても目の前の業務が優先され、計画的に進められずにいるケースがあります。
3つ目の原因は、自身の業務をわかりやすく正確に説明できる人が少ないことです。聞くスキルも必要ですが、話すスキルも業務改善を進める上で重要な要素となります。
こうした過去の経験が社員の業務改善へのモチベーション低下を招いているケースは少なくありません。
業務改善プロジェクトを成功に導くポイントとは
―茨木:それでは業務改善を成功に導くには、どのようなポイントに気を付ければ良いのでしょうか。
梁田氏:まず、目標とゴールを明確に設定することが大事です。
「業務改善プロジェクトを通して削減できるリソースや手間を何に投下するのか」を明文化することです。その上で、社員の負荷を明確にし、改善の綿密なスケジュールを共有することが必要です。
次に、社内を巻き込むことです。
リーダー・経営者主導で道筋を見せながら進めていくことが望ましいでしょう。
BPECには、リーダーや経営者層と一緒に業務構造をビジュアル化する工程があります。この工程では、「こんなところに負荷があったんだ!」と新たな発見ができることで喜んでいただけることが多いです。最初は前向きではなかった方でも、結果が見えることで業務改善のモチベーションアップにつなげることができるのです。
部門の担当者には、業務フローのヒアリングを行います。フローを書く工程で、先ほど申し上げた話すスキルや聞くスキルを磨く場としても活用できます。
できあがった業務フローを見ると、担当者の努力や苦労がよくわかります。最初は悩みながらフローを書く方も多いのですが、書き終えた時には「楽しかった!」と気持ちが前向きに変わるケースが多いです。はじめは調査票への記入に後ろ向きだった担当者も気持ちに変化が生まれ、前向きな良い雰囲気に変わっていくので、私は「和気あいあいプロジェクト」と呼んでいます。
末永:「和気あいあいプロジェクト」いいですね!
―末永:さきほど話すスキルや聞くスキルが大事というお話がありましたが、コロナウイルスが流行しはじめてから、ヒアリングが対面からオンラインに変わり、難しさを感じています。オンラインでヒアリングを進める際のポイントなどありますでしょうか。
梁田氏:ヒアリングに集中できるツールを用意することが重要だと思います。
通信環境が向上した今、私たちはオンラインのほうが打ち合わせがしやすいと思っています。たとえば、画面を共有しながら業務フローを作ると、お客様が画面に集中してくれるので進めやすいです。
茨木:ヒアリングに集中できるツールが重要なのですね。これからもコロナ禍が続く中で、オンラインのほうが打ち合わせがしやすい環境を構築したいと思います。
完成した業務構造図の一部抜粋
課題抽出までは自社で行うことが重要
―茨木:BPECは、企業が自分たちの力で業務を可視化するためのツールですが、人材不足など社内で対応できない事情があり、外部へ依頼する企業もいます。調査・集計・分析などの可視化プロセス自体をアウトソーシングする際の注意点などありますでしょうか。
梁田氏:まずは、課題抽出までは自社で行うことです。業務改善は1度行って終わりではありません。お客様の変化や世の中の変化などさまざまな要素によってビジネス環境は変化し続けます。そのため、業務改善も継続する必要があり、業務を可視化し課題を見出すノウハウは、社内に蓄積した方が好ましいです。
その上で、次のステップである施策探しをコンサルティング会社などに依頼するというのが効果的なアウトソーシングの方法だと思います。
可視化≠業務改善。施策にたどり着ける人材が必要
―茨木:BPECを使いこなすためには、人材の育成が必要になると思います。人材育成に関する取り組みについてお聞かせください。
梁田氏:BPECでは、ユーザーを対象に独自の研修を行っています。現在の研修は、ベーシック研修、アドバンス研修、業務理解研修、業務改善研修の4種類を設けています。
業務の可視化だけでは、業務改善につながりません。可視化によって明らかになった課題を解決するための施策を考え、実行に移すことが重要です。
その際に明確なゴールを設定することで、業務改善へうまく移行することができます。そのため、全社共通のゴールを設定することがプロジェクトの鍵となります。業務改善研修の中でもゴール設定について学び、施策にたどり着ける人材育成に力を入れています。
―末永:ゴール設定をするにあたり、経営者と現場の期待が異なる場合があります。その時は、どのようにすり合わせればいいのでしょうか。
梁田氏:立場が違えば期待が異なるのは当然です。相違点や共通点を抽出してお客様に提示し、選別していただきます。最終的なゴールを決めるのはお客様ご自身なのです。私たちはゴールのすり合わせを行うために必要な判断材料をBPECで提供しています。
BPO企業が業務改善に関わる有効性とは
―茨木:「課題抽出までは自社で」ということですが、TMJのようなBPO企業が業務改善に携わることの有用性はどこにあるとお考えでしょうか。
梁田氏:お客様のビジネスに伴走していけるBPOは、継続的かつ包括的に業務に携わるので業務改善に向いていると思います。手間と時間のかかる業務改善を継続的に委託できるのはお客様にとっても大きなメリットになるのではないでしょうか。
継続的な業務の可視化と改善を行うサービスとして、BPECとBPOサービスを組み合わせるのは有効だと思います。
一気通貫の業務改善ツールへと進化を目指す
―茨木:BPECはAs Is(今の姿)にアプローチするツールですが、今後、To Be(ありたい姿)にアプローチする要素を取り入れていくご予定はありますでしょうか。
梁田氏:将来的には、BPECを「一気通貫で業務改善できるツール」へと進化させていきたいと思っています。
抽出した課題に基づきAIが施策を探しにいくような、ユーザーの期待を越える目玉機能を搭載したいですね。改善のビフォア(Before)/アフター(After)を検証する機能も搭載したいと考えています。
茨木:BPECの進化を楽しみにしています!本日はありがとうございました。
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