BPOの基礎知識
顧客の架電理由である「コールリーズン」を分析することによるコンタクトセンターの改善や課題解決は、VOC活用の新たな手法として注目されています。本記事では、コールリーズン分析とは何か、実施のメリットや実施方法などを解説していきます。
コールリーズン分析とは
コールリーズンとは、顧客がコンタクトセンターに架電した理由を指します。一般的には問い合わせカテゴリ(区分)や応対履歴などの形で記録されますが、昨今では音声認識によりテキスト化されたデータを保存しているケースも増えています。
顧客応対の効率化や問い合わせの削減など、コンタクトセンターの抱える課題に対し、「現状を把握し、対策の方針を明確にする」ことがコールリーズン分析の目的です。コールリーズン分析によりコンタクトセンターにおける問い合わせの傾向や具体的な内容を明らかにすることで、顧客の自己解決促進による問い合わせの削減や、オペレーターの教育方針の見直しによる顧客応対の改善につなげることができるようになります。
コールリーズン分析を行うメリットと改善事例
では、コールリーズン分析の具体的な取り組みはどういったものでしょうか。より具体的なイメージを持っていただくために、TMJでの実施例をもとに取り組み内容やメリットを整理していきます。
顧客応対の改善に向けた優先順位付けにつながる
コールリーズン分析の結果をもとに、
- コンタクトセンターでオペレーターが応対すべき問い合わせ
- FAQやチャットボットで自己解決できる問い合わせ
- マイページで手続き完了してほしい問い合わせ
といった分類を行うことにより、顧客応対の改善に向けた優先順位付けや方針決定ができるようになります。
たとえばコンタクトセンターの課題として問い合わせ削減に取り組む場合、「減らせる問い合わせ」が明確化でき、同時にコンタクトセンターの応対品質や生産性の改善は「減らせない問い合わせ」に絞り込むといった優先順位付けができます。
FAQやチャットボットの最適化につながる
顧客が疑問を自己解決する手段として多くの企業が導入しているのが、FAQやチャットボットで、特に問い合わせの削減や顧客の利便性向上といった観点で活用が進められています。ただし、FAQやチャットボットは設置すれば必ず役に立つというわけではありません。顧客のニーズに合ったコンテンツを公開し、利用状況を分析してアクセス性や解決性を高めるために、改善を繰り返していく必要があります。
コールリーズン分析によって顧客のニーズや問い合わせのボリュームを把握し、また上述のように顧客応対の方針を整理することで、どのような問い合わせカテゴリを自己解決につなげるか、必要なコンテンツが足りているか、現在のコンテンツで解決につながるか、というように、コンタクトセンターへの問い合わせ数の削減など目的に沿った評価や改善につなげることが可能です。こうした取り組みにより、年間10%以上の問い合わせ削減を実現した事例もあります。
株式会社TMJではコールリーズン分析に加えて、FAQやチャットボットの導入や運用、改善をワンストップで支援する「FAQインテグレーションサービス」や「チャットボットサービス」を提供しております。FAQやチャットボットのツールから取得したデータと蓄積されたノウハウを基に施策を立案して実施するため、高い改善効果が期待できます。
「人による応対」の見直しにつながる
たとえば問い合わせの削減に取り組む場合も、上述のように、コンタクトセンターへの問い合わせがゼロになるわけではありません。自己解決やマイページでの手続きを促進する一方で、「人による応対」の重要度はさらに高まっていくといえるでしょう。
コールリーズン分析の結果を用いて、「人による応対」を行う問い合わせカテゴリ(区分)や問い合わせ内容を選定することで、応対品質や生産性を向上させるべきターゲットを明確にすることができます。
弊社での実施例では、
- ご注文に関わる問い合わせはコンタクトセンターに誘導
- マイページで手続きできる問い合わせは極力コンタクトセンターに誘導しない
というように、企業様ごとに「人による応対」を行うターゲットを定め、問い合わせ削減と顧客満足を両立する取り組みを支援しています。
オペレーターの育成や応対支援につながる
近年、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験価値)の向上に取り組む企業が増加しています。顧客接点を担うコンタクトセンターは、顧客の疑問や問題を解消するだけでなく、より高いホスピタリティを発揮し、顧客満足度を高める役割を強化しています。
「人による応対」に注力する問い合わせカテゴリ(区分)や問い合わせ内容を選定することで、そこに特化したオペレーターのスキル向上や、それを支える応対支援(マニュアル・スクリプトなどのナレッジ類)の拡充に集中しやすくなります。一方、自己解決やマイページ手続きを促進する問い合わせカテゴリに関しては応対支援の優先順位を下げるといったメリハリをつけることで、オペレーターにかかる負荷を軽減させられるメリットもあります。
VOCのより有効な活用につなげられる
コンタクトセンターにおける一般的なVOC活用は、「ホットボイス」つまり強いクレームや具体的な改善要望といった形で行われます。このような活用方法は分かりやすい一方で、「点のVOC」ともいえ、量的な裏付けがされないままになるケースが多くあります。
コールリーズン分析は、そうした「点のVOC」ではなく、「面のVOC」として問い合わせの多いカテゴリ(区分)や具体的な問い合わせ内容を可視化するため、より多くの顧客にとって有効な改善につなげることが可能です。例として、
- 書類の書き方が分からないという問い合わせが多いので、契約管理部門と連携してフォーマットを改訂する
- マイページのメニューは充実しているが、ログインできないという問い合わせが多いので、ログインサポートに特化したFAQを拡充する
このようなVOCの活用により、本来不要な問い合わせを削減できるだけでなく、多くの顧客にとって商品・サービス利用がよりスムーズになるようなサポートが可能になるといえます。
コールリーズン分析の実施に向けて
ここまで解説してきた通り、コールリーズン分析は単に分析で終わらせるのではなく、コンタクトセンターの課題解決や、企業が理想とする顧客接点の実現に対して、現状を可視化し、打ち手の設定・施策実装を行うといった目的で実施することが重要です。
株式会社TMJでは、企業ごとに異なるコンタクトセンターの運営課題の解決や、デジタル化・テクノロジー活用など目的に沿った活動を総合的に支援するサービス「CXデザインコンサルティング」を提供しております。丁寧に現状を把握して提案を行うため、企業ごとの状況やニーズに即した提案が可能です。
≪事例≫コールリーズン分析を基にしたお客様窓口におけるDX/CX向上の取り組み
株式会社TMJでは、コールリーズン分析をはじめとする顧客接点の改善につながるサービスを数多く展開しております。お問い合わせは<こちら>。
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