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専門家コラム


初回投稿日 : 2019/11/27

VOC活用を高度化させるための分析手法と3つのチェックポイントとは?

昨今のビジネスにおいて、顧客との接点はますます多様化しています。FAQやチャットボットなどのウェブチャネルをはじめLINE、SNSなどオムニチャネル化している社会において、顧客接点運営のエンジンとしてのVOC活動はよりその重要性を増しています。

VOC活動とは、VOCを収集し分析するところから、その分析結果を自社のサービスに反映し、顧客体験(CX)を向上させるまでの一連の活動を指します。
今回は、その中でもVOC分析に取り組む際のポイントや考え方を整理していきます。

VOCを活用できない現状

コールセンター運営をしている私たちにとって、VOC(Voice of Customer:顧客の声)といえば電話やメールのお問い合わせ内容といった応対履歴が主なものだという共通認識があると思います。
その一方で、応対履歴の残され方は企業によってさまざまです。全量を残しているか否か、コールワークコードが設定されているか否かなどの観点を見てみても各社で違いがあるようです。また最近では、音声認識技術を実装して音声をテキスト化している企業も増えています。つまり、一言でVOC活動といってもデータの蓄積方法もさまざまでVOCの種類も広がりをみせる中、分析・活用する難易度は上がってきているのではないでしょうか。

音声認識技術やテキストマイニングツールの発達で“宝を探せる領域が広くなり、探す効率も上がった”ことは間違いないと思います。しかし、これだけの膨大なテキストがあるのだから「何かしらは出てくるだろう」と期待して、あてもない宝探しをしていては道に迷う結果になります。そうなると、分析の担当者は改善施策を立案する手前でクタクタになってしまいます。
また、テキスト化された膨大なVOCを前にして分析ツールが導入されていなかったり、担当者が業務の片手間に分析していたりするケースもあります。

VOCの重要性を認識しているものの、予算の掛け方が中途半端であったり、体制構築や分析知識・技術の教育面も整備が不十分であったり、という課題があるようです。

VOC分析は探索型から仮説検証型へ

一般的に、データ分析手法は「探索型」と「仮説検証型」の2つに分類できるといわれます。「探索型」はデータを分析しながら仮説を立てます。もう一方の「仮説検証型」は、目的を設定し、仮説を立ててからデータ分析に入ります。VOCの分析をする場合は、後者の「仮説検証型」が適していると考えます。

VOCを上手に活用するためには、テキストデータの宝探しのような「探索型」のVOC活用アプローチから離れ、「仮説検証型」のVOC活用スキームを構築しなければなりません。
まず、「何かしら出てくるだろう」という幻想を捨てましょう。

以前、一緒にVOC分析に取り組んでいたデータサイエンティストが言っていた言葉がとても印象的なのでご紹介します。この言葉は「ビックデータの活用」という観点で発せられていますが、VOCと置き換えても問題ないと思います。

“想像できないものを発見するためにビッグデータを使うのではなく、想像したことを実現するためにビッグデータを使うことを意識するべきだと思います”

つまり、VOCの中からやみくもに宝探しをするのではなく、目的を明確にして仮説を基にアプローチすることで、精度の高いVOC分析が実現し、目的に対する効果を最大化することができると思うのです。

VOC分析手法別アプローチ

仮説構築に役立つ「暗黙知」

さて、「仮説検証型」分析をはじめるにあたって、問い合わせをしてくるお客さまは何に困っているのか?なぜ困っているのか?どのようにすれば解決できそうか?などの仮説構築はどうすればできるのでしょうか。

お客さまからの評価はもちろんのこと、コールセンター運営に関わるさまざまな指標も大いに役立ちますし、何よりもオペレータの声(Voice of Employee:暗黙知)は極めて貴重な仮説構築の情報源といえます。普段はオペレーションの効率が求められるため応対履歴に残していないようなことや、言葉として発せられていなくても対話の前後関係から暗黙知としてお客さまのお困りごとを知っていることが少なくありません。

この仮説構築の考え方をやさしく説明しているものを紹介したいと思います。


『顧客満足の実際』(佐野良夫著 日本経済新聞社)からの抜粋

“CS調査によってわかるのは問題点という事象であり、なぜそれが生じているのかという原因(課題)がダイレクトに導き出されるものではありません。原因を明らかにするためには、「思い当たる節」という仮説に基づいて分析を行う必要があります。通常、調査結果について、日頃から感じている「思い当たる節」というものがいくつかあるはずです。このいくつかある「思い当たる節」の一つあるいはいくつかが、問題を生じさせている原因であることが多いものです。”


この「思い当たる節」が仮説であり、これを解決するための要因分析にVOCが活かされるというわけです。

VOC分析をより有効なものにする3つのポイント

VOC分析をより有効なものにするために検討したいことが3つあります。

1. 効果検証の方法

ひとつ目は、当たり前のことのようですが忘れがちなこととして、VOCを活用したことによる「効果の検証」をどのようにおこなうかです。特定のお問い合わせのボリュームが減ること(入電の抑制ができること)はもちろん、VOCを活用した先でどのような効果があったのかを測定できるようにしておくことが肝要です。

2. AIの活用

2つ目は、AIの活用です。テキストマイニングツールはあくまでも“発せられた言葉(テキスト)”の分析であり文脈を読むことはできません。既述の通り、オペレータの暗黙知(あるいはカスタマーインサイトと言えるかもしれません)には、言葉にされていない情報が“文脈”として隠されています。この文脈に意味づけをするためにはマーケターやサービス開発担当者、施策の企画者などの目が必要になりますが、AIを活用することによって大量のデータから文脈を判断して必要な情報を抽出することが可能になります。

3. VOC以外の情報収集ルート

最後に、VOCの中に活用できる有効な情報がないのかもしれないという想定を持つことです。そこに情報がないのであればいくら探しても見つかりません。その場合には収集する対象や方法を変えることを検討する必要があります。
例えば、通話時間が長くなっても対話することを重視する取り組みや、顧客評価の悪いお客さまに能動的にコンタクトをとることでその理由をお聞きする、あるいはお客さま同士が本音で対話できるコミュニティを形成する取り組みなどが挙げられます。


デジタライゼーションが進むことでさまざまな行動データへのアクセスが容易になる一方、顧客の価値観の多様化はカスタマーインサイトの把握をますます難しくしています。このような中で顧客接点を持つ私たちには、VOCを武器として戦略の方向づけを牽引する役割があると考えています。 

VOCを有効に活用することはとても奥深く容易ではない取り組みですが、これからもクライアント企業と一緒に試行錯誤を重ねていき、得られた知見や気づきを共有していきたいと思います。

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執筆者紹介

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