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専門家コラム


初回投稿日 : 2024/04/19

【資料付き】コンタクトセンターのナレッジメンテナンスに生成AI要約を活用する重要性とメリット

コンタクトセンターの運営において、FAQシステムやチャットボットといったナレッジシステムは非常に重要な役割を果たします。保留時間短縮による応答率の向上、ナレッジ共有の簡易化、新人教育コストの削減、自己解決率向上などオペレーターや顧客に多くのメリットをもたらします。しかし、その効果を最大化するためには、常にナレッジを最新の状態に保つ必要があります。今回は生成AIで、ナレッジの最新化のための材料となるQ&Aを顧客との応対テキストから抽出できるかについて試してみました。

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ナレッジメンテナンスの流れ

FAQなどのナレッジをメンテナンスする場合、一般的には人が入力した応対履歴データをもとに、コールリーズン分析→FAQ候補の選定→FAQ作成→レビュー→公開、という流れをとります。大規模なコンタクトセンターでは、ナレッジ専属チームを作ることもあり、ナレッジメンテナンスはコンタクトセンター運営の重要な業務となっています。

エーアイスクエアにて作成

しかし、これまで行われてきたナレッジメンテナンスでは、「メンテナンス作業に工数が割けない」「FAQに専門的な単語が使われていて検索にヒットしない」「日々の受電対応を行っている間にメンテナンスがおろそかになり陳腐化した」などの課題が発生しています。ナレッジメンテナンスの高度化は、コンタクトセンター業界の歴史の中でも長年課題とされています。

生成AIの登場により、ナレッジメンテナンス作業の省力化が注目されています。電話応対テキストからQ&Aを抽出することで、ナレッジのメンテナンス作業が大きく変わる可能性があるからです。

エーアイスクエアにて作成

電話応対内容からFAQを作成することで、「顧客が話す単語がどのようなものなのか」「問い合わせの多い領域はどのあたりなのか」「どのようなFAQを作るとわかりやすいのか」などを把握することができ、メンテナンス作業自体も効率化が図れる可能性があります。

音声認識テキストからQ&Aを作成することの重要性

音声認識システムがコンタクトセンターに導入される以前は、人がCRMに入力した履歴や分類結果をもとに、現場の感覚でFAQを作成することが一般的でした。しかし、現場の感覚でFAQを拡充させる場合、顧客の使う言葉と企業側が使う言葉が異なり、「ほしいFAQが探せない・掲載されていない」などの課題がありました。また、サービスやライフサイクル別の問い合わせ件数に対して、用意されているFAQ数や内容に過不足があり、ナレッジを網羅的に準備できていないなどの課題もありました。

エーアイスクエアにてイメージを作成

音声認識テキストからQ&Aの作成ができると、顧客が使う単語や言い回しをそのままQ&Aの元素材として利用することができます。また、全通話からQ&Aを抽出することで、類似する問い合わせ内容でも、顧客が問い合わせで使う単語や言い回しが異なることを知ることができます。それらをもとにQ&Aを作成することで、本当に必要なFAQを拡充したり、反対にすでに存在するFAQの中でも不要なものを特定できるようになります。

試行①|ChatGPTで電話応対テキストからQ&Aを抽出

まずはChatGPTでQ&Aの抽出を試してみます。利用するモデルはgpt3.5です。保険会社関連のコンタクトセンターを題材に「入院・手術」についての応対テキストを用います。プロンプトは以下を準備しました。

<プロンプト>

結果、以下の要約が抽出されました。

〈抽出結果〉

これまでのAIの技術では、コンタクトセンターの会話形式のデータでは、ここまで整理された要約結果を出すことは困難とされてきましたが、今回は比較的読みやすい結果が取得できたのではないでしょうか。しかし、内容をよく確認すると「手術保険金の診断書の提出が難しい場合は困難ですが、」など、日本語として違和感のある文章が一部生成されたり、一文が長い傾向が見受けられました。

これは、会話原文に「あー」「えーっと」などのフィラーが多いこと、話し言葉の特性上、テキストの改行位置が細かく分かれてしまうことなどにより、生成AIによる解析に悪影響を与えてしまった可能性があります。

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音声認識テキストからQ&Aを作成するコツ

事前にフィラーや不要発話を排除する

電話応対は、「あー」「えーっと」などのフィラーが多く、また、「話し言葉」という特性上、短文や単語でのやりとりが非常に多くなります。そのような品質の低いデータからQ&Aを生成AIで作成するには、事前にフィラーや不要な発話を除外することが有効です。

また、「個人情報が含まれる音声データを生成AIに送信したくない」といったお声も耳にしますが、そのような場合は、生成AIを利用する前に個人情報にあたる発話を極力排除(もしくはマスキング)する必要があります。

これらの情報を事前に除外した場合、音声テキスト原文と比べ、約2分の1~3分の1程度の重要な発話部分のテキスト量に絞られることが多いです。

クラスタリングでQ&Aを分析する

Q&Aを抽出した後は、既存のFAQとクラスタリング※することで、「既に存在するQ&Aなのか、新規のQ&Aなのか」を分析することができます。

※クラスタリングとは、機械学習の一種であり、「データ間の類似度に基づいてデータをグループ分けしていく手法」のことです。

エーアイスクエアにてイメージを作成

上記イメージのように、既存のFAQを中心にした場合に、設定した閾値内に属するQ&Aを「既存FAQと類似したQ&A」と特定することで、すでに存在するQ&Aか、新規Q&Aかを判定することができます。

しかし、Q&Aが抽出できたあとのクラスタリング作業は、既存のFAQや抽出された結果をもとに、「どの範囲でグループ分けしていくか」を個別に検証・設定していくことが必要です。これは、まだ自動化が難しい領域で、最適なクラスタリング数や最良の閾値設定など、AIベンダーと実データを確認しながら一緒に検討していく必要があります。

試行②|事前にフィラーや不要発話を排除した場合のQ&A抽出結果

前段でご紹介した「入院・手術」のテキストをもとに、事前にフィラーや不要な発話を除外したうえでChatGPTによる要約を実施してみました。

〈フィラーや不要な発話を除外した場合の抽出結果〉

事前にフィラーを除外するとことで、更に端的で読みやすい結果が抽出されたことがわかります。

今回は、コンタクトセンターで実際に利用する際に費用対効果を出しやすいよう、安価なGPT3.5を利用しましたが、GPT4やGeminiなど、更に大規模な言語モデルを利用した場合は、より良いQ&Aが抽出できる可能性があります。ただし、現在はGPT4やClaude3などのモデルは利用料がかさむ傾向があるため、「抽出されるQ&AのクオリティとROI」をしっかり検討したうえで、最適なモデルを選ぶようにしましょう。

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生成要約サービスをご紹介

最近では、生成要約サービスの提供が増加する傾向にあります。コンタクトセンター業界向けには、下記のような企業がサービスを提供しています。

  • 主要な生成要約サービスベンダー
企業名 サービス名
ベクスト株式会社 VextResume
株式会社AI Shift AI Messenger Summary
株式会社エーアイスクエア QuickSummary2.0

上記企業以外にも、独自の要約モデルを提供する企業や、サービス化まではいたっていないものの、ChatGPTを連携して要約オプションを試行提供する企業も増加しています。

今回は、一例として株式会社エーアイスクエアが提供する「QuickSummary2.0」をご紹介します。

「QuickSummary2.0」は、事前にフィラーの排除や、不要な発話を除外し要約精度を向上する機能や、オペレーターがほしい要約結果を取得できるプロンプトを複数登録できる機能などを備えています。

また、Q&A抽出機能もあり、終話後に応対内容からQ&Aを抽出できるため、FAQの改善に必要なQ&Aの元素材として有効に活用できる可能性が高いです。

生成AIを活用した要約の利用可能性

今回は「生成AIを活用したナレッジメンテナンス」を題材に、応対テキストからのQ&A形式の要約を試しましたが、生成AIによる要約の活用は、コンタクトセンターにさまざまなメリットを供与します。例えば、Q&A形式ではなく、通話内容を箇条書きでまとめた要約結果であれば、会話全体の流れを実際の通話で使われた単語や言い回しのまま端的に記載されるため、高度なVOC分析に活用できる元素材になる可能性があります。また、「申し出内容」や「対応結果」「社内連絡事項」など応対履歴システムと同等の形式での要約結果を抽出する場合は、人が手入力していた履歴入力時間を大幅に自動化・省力化できる可能性があります。

このように、Q&A以外でも生成AIを活用した応対テキストの要約はさまざまな利用可能性を秘めています。

生成AIでコンタクトセンターのナレッジ活用の高度化を

ナレッジマネジメント・KCS(ナレッジセンターサービス)といった考え方は、コンタクトセンター業界においても主流となってきており、その一要素であるナレッジメンテナンスは必要不可欠です。従来は、応対履歴を人手で精査する事でFAQの整備をしていましたが、工数負荷や、履歴内容のバラつきによって精査の精度が低下し、結果としてナレッジが陳腐化してしまうという課題がありました。しかしChatGPTをはじめとする生成AIの登場により、手間なくかつ精度高くFAQを最新化できるようになったため、今後もナレッジの活用の動きはますます活発化していくと思われます。本記事の内容がコンタクトセンター業務高度化の一助となれば幸いです。

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執筆者紹介

荻野 桂也 氏
株式会社エーアイスクエア 営業部 アソシエイト
テーマ:クラウド、AWS、要約技術、ChatGPTプロンプト
新卒で、自動車に関するイーコマース・インターネットメディア事業の提供会社に入社。中古車輸出入のプラットフォーム事業において、法人顧客の新規営業、カスタマーサクセス等を担当。2021年にエーアイスクエアに参画。営業担当者としてAIシステムの新規営業に加え、導入における検証や定着支援、精度向上に向けたコンサルティングも担当。コンタクトセンターにおけるサービス・ソリューションの研究・検討において株式会社TMJと協働している。

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