専門家コラム
前回、私のコラムでカスタマーエクスペリエンス(Customer Experience:以下、CX)について触れたのが2017年8月でした。それから半年が経過していないにも関わらず、CXを実践する動きはさらに加速してきていると感じています。
前回も触れましたが、CX実践の取り組みが加速する背景には、AIを活用した顧客対応やチャットボット(自動応答)の実装事例の増加、また「LINE」を中心とする対話型のコミュニケーションツール活用による付加価値提供への期待が高まっていることが挙げられます。
このような背景がある中、2018年以降の中長期計画を前提とした時に、各企業とも自ずとCX実践のための本格的な戦略立案と基盤構築に着手する時期がきているように感じます。それが、肌感覚として私たち自身にも届いているのだと認識しています。
このような状況を鑑み、今回のコラムでは、本格的にCXを実践、向上させるために必要な3つの観点について触れてみたいと思います。
CX実践に必要な観点(1)CRM連携
CX実践には、たとえ質の高い対応であってもそれだけでは足りず、一定レベル以上のパーソナライズされたアプローチがなければ成り立たちません。そのパーソナライズされた対応を実行するためには、顧客データとの連携が避けられません。
私たちコンタクトセンター(カスタマーサポート)運営者は、これまでのたゆまぬ取り組みの結果、相当に高いレベルの効率化と品質レベルを実現しています。そして今後、コンタクトセンターを重要な接点のひとつとしてCXを実践していくのであれば、コンタクトセンター運営と顧客データとの連携「CRM( Customer Relationship Management)連携」は待ったなしの時期にきていると感じています。
CX実践に必要な観点(2)提供価値創出エンジン「MROC」
私たちは、結果としての顧客行動データを定量的かつ大量に保有しています。WEBのアクセスデータ、コンタクトセンターのコンタクト履歴、購買/利用履歴などがそれに当たります。
しかし、なぜそのような行動に至ったのか、そのベースとなる顧客の価値観や考えにはなかなか触れることができないのが実情です。大量の行動データを基に顧客の次の行動が予測できたとしても、そこでどのような対話をすれば、そのトリガーを引くことができるのか分からないのではないでしょうか。その文脈を埋めてくれる可能性があるのが、MROC(Marketing Research Online Community)だと考えています。
MROCはインターネット上のオンラインコミュニティーにモニターを集めて実施する消費者行動把握のための調査手法です。特定のテーマに興味のある人を集めて自然な会話の場を提供し、コミュニティの中で生まれた会話内容や、アンケートなどの定量調査を組み合わせて深堀し、顧客のインサイト(深層欲求)の発見や商品開発などに活用します。
MROCは、商品やサービス開発のツールとして活用されることが多いのですが、どのような対話が顧客のどのような行動を誘発するのかというダイナミクスを解明する、あるいは試す場として(大規模なオペレーションとして展開する前のトライアルなど)、コンタクトセンターでも大いに活用できると考えています。
CX実践に必要な観点(3)対話テキストデータの活用
それから、次に考えておきたいのは「対話テキストデータ」の活用です。
今後、音声認識技術がさらに発展していくと、対話のテキストが大量に蓄積されてくると思います。この大量で構造化されていないテキストデータをどのように構造化して活用するのかがとても重要になってきます。
最終的には、AIを活用して何らかのオペレーションに昇華させることになると思いますが、AIにどのように活用させるのか、言い換えれば、どのような学習データを準備すればよいか、目のつけどころの勝負になると思います。
ここに行きつくためには、おそらく大変な思考錯誤を繰り返すことになりますが、その価値は十分にあると考えています。
2018年はカスタマーサポートがCX実践の主役になれるか否かの重要な年になると思います。
そのポジションを築けるよう、皆さまと取り組んでいきたいと思っています。
キーワード
関連するサービス |
---|