専門家コラム
コールセンターのアウトバウンドにおいて新規顧客の獲得効率が低下し続けている昨今、既存顧客を活性化しながら売上維持・向上、LTVの最大化をどのように実現するかは重要なテーマとなっています。今回は、新規獲得だけに留まらない、顧客コミュニケーションのひとつの形としてのアウトバウンドのあり方についてご紹介します。
「ターゲティング型アウトバウンドケア」とは
新規の顧客獲得を目的とし、お客様にアプローチする手段として活用されるアウトバウンド。
しかし、コスト面でみると決して効率的な方法ではありません。
一方で、電話によるアウトバウンドは、直接顧客に言葉や想いを伝えることができ、しかもそれに対する反応が得られるという点において、対面に次ぐ優位性を持っています。
この優位性を踏まえたアウトバウンドの有効な活用方法の一つが、
「ターゲティング型アウトバウンドケア」だと考えています。
ターゲティング型アウトバウンドケアとは、特定の人や限られた人に対して直接的・短期的にセールスを行う通常イメージされる営業系アウトバウンドではなく、商品・サービスの継続的な利用や購買を促進してLTV(Lifetime Value:顧客生涯価値)を最大化するための顧客ケアを合わせたアウトバウンドのことです。
LTVというと、これまで主に通販事業者で重視されてきた指標ですが、近年ではサブスクリプション型のビジネスモデルやサービスが普及し、BtoB企業、BtoC企業を問わず意識されつつあります。
ターゲティング型アウトバウンドケアをLTV向上などの成果に結びつけるには、2つの壁を乗り越える必要があります。
1つ目は「誰をターゲットにすればよいか」、2つ目は「何をどのように伝えればよいか」ということです。
次項で少し詳しくご説明したいと思います。
ターゲティングに必要な行動系データ・心理系データ収集の方法
まず、「誰をターゲットにすればよいか」。
それには、効率的に成果を生み出せる顧客リストを抽出することから始めます。
かつては、例えば「30歳代の女性」など性別や年代を使ってセグメントすることが一般的でした。
ですが、顧客の価値観の多様化が進む現在は、このような顧客属性のみでセグメントするだけでは不十分です。そこで、購買履歴やアンケートの回答結果、WEBサイトのアクセスログ、メルマガ開封率など、顧客の行動系・心理系データをできる限り活用することが、成功への近道となります。
しかしながら、性別・年代・会員登録日などの基本的な顧客属性はともかく、前述のような多様な行動系データ、心理系データを収集するのはハードルが高いかもしれません。そのためコールセンター部門だけでなく、マーケティング部門やシステム部門の方々とも連携する必要があるでしょう。私が現在携わっているクライアントの案件においても、マーケティング部門にご協力いただき、BIシステム(全社データベース)からこれらの情報を引き出して活用しています。
また、データが利用(取得)できない場合でも、簡単に諦めてしまうのは勿体ないと思います。利用できるデータが少ない場合は、新たにコールセンターでデータを収集・蓄積するという考え方に立つことも重要です。
例えば、「3コール完了のアウトバウンドで、過去3回連続して未コンタクトのまま終了」や、「前回の電話でこちらの話をよく聞いてくださった/あるいは問答無用でガチャ切りされた」など、これらの応対履歴をきちんとデータ化することで、後から判別できるようにするだけでもずいぶん違います。
顧客ケアに重点をおいた「対話をする」コミュニケーションへ
2つ目は「何をどのように伝えればよいか」。
情報を「伝える」という考え方から一歩進んで、「対話をする」という考え方に立つことがアウトバウンド“ケア”の特徴と言えます。
最近、実際に取り組んだ成功事例として、定期的な商品購入の離脱を防止する施策がありました。
そのコンタクトセンターでは、離脱をする傾向にある顧客を分析・抽出して、そのお客様にアウトバウンドコールでコンタクトを取っています。そして、商品の感想やお困りごと、抱えている不満を聞き出し、お話の流れの中で、商品の使い方のアイデアや工夫、商品にまつわるエピソードなどを添えて会話を進めていきます。ここでのポイントは、あまり形式張らずに、SNSに投稿するくらいの気軽さ、または距離感でお客様と対話することです。
「○○のような使い方をされている方もいらっしゃるようですよ」といった具合です。
単にコールスクリプトに沿って進めればよいアウトバウンド業務と比べると、難しいかもしれません。しかし、コールセンターには、商品知識が豊富で、実際に商品を使っていて、好感・愛着を持っている人が一定数以上いると思います。そのオペレータが体験した商品価値と前述のような顧客データがうまく組み合わされば、単に情報を伝えるだけではない、自然な対話で顧客満足度を高め、LTV向上に貢献するアウトバウンドケアが成立していくのです。
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