menu
アセット 3
JP / EN
アセット 3 CLOSE

専門家コラム


初回投稿日 : 2020/01/21

サイコロ型IoTデバイスで仕事の可視化に取り組んでみてわかったこと

人材不足が深刻化する中、AIやRPAをはじめとするデジタル技術の利活用は現場の生産性を向上させ、人手不足を解消する手段の一つになると考えられています。最近ではIoTもまた、さまざまな産業分野で活用が進みはじめています。
TMJでもコールセンター、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の分野で、IoTの活用に取り組んでいます。現時点では、まだ検証段階ではありますが、今回のコラムでは外部の開発会社と協力し進めている「バックオフィス業務のIoT活用による業務可視化と生産性向上」の取り組みについてご紹介いたします。

IoTとは

IoT(Internet of Things)とは、従来インターネットに接続されていなかったモノが、インターネットに接続されることによって、ネットワークを通じて相互連携、情報交換ができるようになる仕組みのことを指します。
日本語では、「モノのインターネット」と呼ばれています。

アウトソーシング企業が現場でIoTを活用できるか

TMJでは多くのクライアント企業からバックオフィス業務(経理や労務、人事などの直接顧客対応を行わない事務業務)をお預かりしています。
その中で日常的に業務の改善活動を行っていますが、それには行っている作業に対して見えないものを定量的に可視化させる工程がつきものです。
この可視化の精度を完璧にすることは難易度がとても高く、精度が低いと、その上に立案される改善策の精度も乱れていきます。そのため、「可視化させる」という改善工程は重要な位置づけになっています。

例えばパソコンを利用するデスクワーク環境では、さまざまなソフトウェアの利用が可能なため、比較的容易に可視化させる方法の検討も進みます。
一方で、パソコンを利用しない作業環境になると、途端に可視化手段がアナログな方法に限定されてしまいます。測定する作業対象、タイミング、基準、測定者、手間など精度が低くなる要因が多岐にわたり、検討も測定も進みづらい状況に陥ります。
現場では、それでもできるだけ精度が高い測定になるよう運営努力を積み重ねていますが、よりスマートに測定できないだろうか、ということを常に考えていました。

こういった背景のもと、着目したのがIoTやM2M(Machine to Machine:ネットワークで相互接続された機器同士が、人手を介することなく情報通信し機能する仕組みのこと)です。
数年前からビジネス記事などで「都市」「スタジアム」などを対象としたIoT活用から、見えなかったものを可視化するというニュアンスのものが多く見られるようになりました。そこで、我々の事業でも利用できるのではないか、ときっかけを得たわけです。
IoTと私たちの業務には「可視化する」という共通点があるのです。

バックオフィス領域におけるIoT活用の検証を開始

では、具体的にIoTの技術がどのように活用できるのでしょうか。
アウトソーシングの現場において、何の業務に、どのように導入すればよいのでしょうか。

今回、トライアルを以下のような目的で検証を進めることにしました。

<IoT活用検証の目的>
・今まで見えなかった作業工数を可視化させ、さまざまな改善活動につなげる
・IoTデバイスを活用した知見やノウハウを蓄積し、新しいオペレーションの発想へつなげる

IoT活用の検証に使用した機器はこちらです。

検証中のデバイス

スタッフがサイコロ型のデバイスを転じることで上面の時間を計測し、クラウド上にデータを送るというものです。デバイスの中には傾きを計測するセンサーが内蔵されています。

トライアルの検討当初、弊社固有の事業の都合があったり、また私自身も現場に浸透しやすい構成があまりイメージできていなかったこともあり、スモールスタートでかつ、さまざまな用途や現場シーンに応じてカスタマイズをしやすいようにという意図から、今回のような仕様のデバイスで開始しました。
現在、他社製品のトライアルを終え、社内の多くの現場で利用していけるように課題の整理を行っています。

トライアルでは以下の二つの業務を対象に実際に利用してみました。

<対象業務>
1.弊社内の採用に関わる社内業務
2.電話受付やバックオフィス事務を混合して行っている業務

<サイコロの面の割り当て例>
「企画」
「ミーティング」
「社内調整」
「休憩」
「その他(プロジェクト対応、レポート作成など)」

<計測の仕方>
サイコロ型IoTデバイスの各面に、各現場の業務内容を割り当てます。
計測対象者は、その業務を行っているときにその面を上向きにします。
デバイス上面の状態で経過した時間を計測し、クラウド上にデータを送信します。

検証から見えてきたこと

実際にスタッフが業務中に利用して測定したところ、現場からは前向きな声、要望など多数フィードバックをもらいました。一部をご紹介いたします。

<デバイスについて>
「6面では足りない」
「デバイス自体を大きくしてほしい」
「錐体の方がよいのでは」
「面に凹凸があるとよい」 など

<現場管理者がスタッフの稼動状況を把握するレポート画面について>
「時間計算ロジックを〇〇のように変えたい」
「修正機能をつけてほしい」
「リアルタイムレポートの見え方の要望」 など

<ユーザー管理について>
業務と人とモノを紐づける「ロール権限設定」
「ユーザーの入出力」
「デバイスの管理体系」 など

<運用時のネットワーク構成について>
「個別ネットワーク環境の事情にあまり影響を受けないような構成にし、手軽に導入できるようにしたい」
「機密情報等のセキュリティリスクの抑制」 など

また、業務が可視化されることで、以下のようなことが見えてきました。

<その他、わかったこと>
・平均的な所要時間が明確になるため、目標設定・期限設定・計画の精緻化を図ることができる
・積み上げてきた過去のデータを参照することで、現在が異常値なのか否か判断できる
・生産性の低下が個人の問題なのか、工程全体の問題なのか判断できる
・適材適所の判断ができる

今回のトライアル結果を受けて、目的にしている改善立案をするための複数の潜在的な課題が見えるようになってきたと、IoT導入の手ごたえを感じています。今後本格導入するまでに、より浸透しやすい、多くの現場で使いやすい状態へと再設計し、実用化を目指していきます。

IoT活用の将来性

弊社が行った今回の検証は、IoT技術としてはまだ基礎を利用しているに過ぎないものです。
しかしながらその検証により、まったく活用の勘所がわからなかったものが、なんとなく見えてきたところも多数あります。

例えば、センサーの部分は傾きだけでなく、温度、照度、人感、圧力、開閉、音などに置き換えることができ、こういったデータから新しい改善アプローチができるようにならないか、という思考が生まれました。また、費用感とその効果の輪郭をつかむことができ、実用化に向けた費用対効果も見積もりやすくなりました。

まずは、このIoT活用の取り組みをしっかり現場浸透できる形で実用化し、そこから得た経験からまた新たな発想につなげていけるよう活動を進めていきたいと思います。


TMJでは最新の技術を積極的に取り入れ、生産現場における業務の効率化を推進しています。人手不足や生産性向上についてなどお悩みをお持ちでしたら、ぜひ私たちにご相談ください。

執筆者紹介

石井 巧磨
株式会社TMJ 事業変革部 サービスデザイン室
テーマ:業務効率化、RPA、人材育成
BPO事業会社、通信事業会社にてオペレータ、センター管理者、マネジャーを経験しながら、 オペレーションの視点から顧客満足度重視の様々な改革を実践。 現在はTMJにて、コンタクトセンタやバックオフィスの立上・改善支援に従事。クライアントの依頼を受けてから立ち上げ前までの運用設計やスケジュール管理、立ち上げ後の運用支援・改善提案を行っている。

関連するサービス

資料ダウンロード

TMJが豊富な経験と最新技術を駆使して得た、業務の効率化やスキル向上に役立つ実践的なノウハウや知識を、無料でご提供します。

to-top
totop