BPOの基礎知識
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、従業員の働き方を改めて見直す企業が増えています。そんな中、「働き方改革」をいかに自社で推進するか課題として抱えている企業も多いのではないでしょうか。「労働力が確保できない」「どこから手をつけたらよいかわからない」など課題は企業によって異なります。働き方改革を推進する上で、企業の労働生産性の向上は大きなカギとなっています。
今回は、働き方改革の目的とは何か、改革が求められる背景や労働生産性の向上に焦点を当てた具体的な対応策について解説します。
働き方改革とは
働き方改革とは「一億総活躍社会」の実現のために、2019年4月から段階的に施行された法整備を指します。多様で柔軟な働き方を自身で選択できる環境を整えることで、働く一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目的としています。
具体的には、以下の7つがポイントとなっています。
- 非正規雇用の待遇差改善
- 長時間労働の是正
- 柔軟な働き方ができる環境づくり
- ダイバーシティの推進
- 賃金引き上げと労働生産性向上
- 再就職支援と人材育成
- ハラスメント防止対策
担当者はこれらのポイントをふまえながら、労働生産性の向上・労働環境改善・人事制度の整備などを推進することが求められます。しかし、企業によって置かれている環境が異なるため、職場の現状が必ずしも働き方改革関連法で求められている内容と合致しないことがあります。
そこで、なぜ働き方改革が求められているのかその背景について解説します。
働き方改革の背景
国が働き方改革を推進している背景として、少子高齢化社会における労働力不足があります。
国連によって定められた基準では、
- 65歳以上の人口が全体の7%を超えている状態を「高齢化社会」
- 65歳以上の人口が全体の21%を超えている状態を「超高齢社会」
と定義しています。
内閣府の発表した令和2年版高齢社会白書によると、2019年時点で65歳以上の人口は28.4%を占めており、すでに日本は超高齢社会であり、来るべき変化に備えるといった段階ではなく積極的な対策がすぐにでも必要な状況であるといえます。
労働力人口の減少
労働力人口はどのように減少していくのでしょうか。令和2年版高齢社会白書によると、
2019年時点では、労働力人口(※)が7,507万人占めているのに対して、
10年後の2030年の労働力人口は6,875万人(2019年対比でマイナス8%)、
40年後の2060年には4,793万人(2019年対比でマイナス36%)へと急激に減少すると予想されています。
「社員が減っても企業活動は成り立つだろうか」と考えたとき、何らかの対策をできるだけ早く実施しなければならないと危機感を持った方も多いのではないでしょうか。
労働力人口の減少でワーク・ライフ・バランスが崩れた場合、さらに少子化が加速する負のスパイラルに陥る可能性もあります。そうなった場合、さらに景気や企業活動などに大きな影響が出るでしょう。首相官邸が発表した文書では働き方改革を「最大のチャレンジ」と表現されており、待ったなしの状況であるといえます。
※労働力人口:生産年齢人口とも呼ばれ、15~64歳の人口を指します。
2060年には労働力人口ピーク時の半分に
2060年の労働者人口4,793万人という数値は、ピーク時の約半分です。
日本では、第2次ベビーブームに生まれた「団塊ジュニア」と呼ばれる世代が社会人になって働き始めた1995年頃に労働力人口のピークを迎えました。この時期の労働力人口は8,000万人を突破していましたが、その後減少に転じ、以降は減り続けています。
内閣府の試算によると2060年には65歳以上の高齢者が占める割合は38.1%となり、どの国もかつて経験したことがない超高齢社会へ突入します。近い未来に想定される労働力人口の減少に備えて、早急な対応が求められているのです。
着目される労働生産性
労働力人口の減少にともない、多くの企業が注目するようになったのが「労働生産性の向上」です。
労働生産性とは、労働者一人あたりにおける生産性を指しています。従業員が効率良く業務に取り組むことで、一人あたりが生み出す成果を高めることができます。そして、企業は従業員数が限られた中でも、成果を高め、継続的に利益を上げることができます。労働力人口の減少に対する打開策として労働生産性が重要視されている現状があるのです。
労働力不足解消の対応策
成熟した日本社会において、労働力人口が回復することは期待しづらい状況にあります。そのため、企業が多角的に対策を行うことが日本の労働不足解消にも大きく貢献します。ここでは、労働力不足解消に向けた3つの対応策をご紹介します。
コア業務に集中できる環境作り
従業員がコア業務に集中できる環境作りは、労働生産性を高める上で重要です。
具体的には、アウトソーシングやBPOサービスの活用を通して、自社で行っている業務の一部を外部へ委託することができます。
BPO(※)サービスでは業務の遂行だけにとどまらず、業務のプロセス自体を見直し、より生産性を高められる業務のあり方について見直しを行います。
業務の一部を委託することで、従業員がコア業務に集中できる環境を整えられ、企業の利益に直結する業務に充てられる時間を増やすことができます。また、業務のプロフェッショナルに委託することで、より効率的な業務遂行が進み、総合的に企業の労働生産性を高めることができます。
※BPO:Business Process Outsourcingの略称で、労働力の提供だけでなく、企業の課題解決や事業戦略に関わる基幹業務も期待される継続的な委託が多い。
業務の自動化
業務の自動化も、活用次第で労働生産性の向上につなげることができます。一定のルールに沿って実施される業務であれば、AIやロボットを活用し、業務を自動化できる可能性があるのです。
たとえば、パソコンを使ったデータの収集や移行作業の一部は、RPA(Robotics Process Automation)を活用することで、ロボットが従業員に代わって作業を行うことができます。
また、AIを活用することで大量のデータを短期間で分類・分析することが可能です。たとえば、VOC(お客様の声)を商品やサービスの改善に活かしたいけど、膨大なデータがあり一つ一つに目を通す時間は割くことができない際など、身近な場面で活用することができます。
業務を自動化することで、従業員は他の業務に時間を充てることができます。また、定められたルールに沿って業務が実施されることで、人為的なミスをなくし、業務のスピードを上げることができます。従業員が対応できる業務の幅が広がり、自動化された業務の対応スピードが上がることで、より労働生産性の高い環境を作ることができます。
多様な働き手の受け入れ
働き方改革が目指す「一億総活躍社会」では、年齢・性別・国籍などにとらわれず、みんなが活躍できる社会の実現を目指しています。
そこで、高齢者・女性・外国人が活躍できる機会を増やし、多様な働き手を受け入れることで労働力不足を解消することができます。
働き方改革の目的を理解し、労働生産性を高めるために
限られた労働力の中で働き方改革を実現するためには、企業の労働生産性を高めることが大きなポイントとなります。
株式会社TMJでは、企業の働き方改革を推進するための働き方改革支援サービスを提供しています。働き方改革を推進していきたいとご検討の方はぜひご相談ください!お問い合わせは、<こちら>。
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