専門家コラム
コンタクトセンターにおける人材育成の課題を共有し、当社で実践している人材育成の仕組みやポイントについて2回にわけてご紹介する後編です。<前編>では、管理者育成の難しさやTMJ独自の人材育成プログラム「PLATOS」の仕組みについてご説明しました。
後編では「PLATOS」において管理者育成で力を入れてきたポイントや実施効果をはじめ、今後の課題についてご紹介します。
検証「どんな育成が管理者の行動を変えるのか?」
<前編>でご紹介した人材育成プログラム「PLATOS」の仕組みを基本として、どのようなことを重点的に行えば管理者の行動変容を促すことができるのか、また、育成効果を高めるポイントはなにか、私たちは試行錯誤を重ねてきました。
その結果、管理者の行動変容に特に効果を発揮すると思われるポイントを、いくつかご紹介したいと思います。
内省の効果を高める「1on1ミーティング」
「1on1ミーティング」は、部下の問題意識や達成意欲に着目した面談方法で、近年、目標管理や組織の活性化、人材育成に効果的であると注目されています。
TMJでもPLATOS実施期間中の面談方法として1on1ミーティングを推奨しており、全社で取り組んでいます。
育成対象者の細かな変化に気づき承認する
スキルは短期で身につくものばかりではなく、中長期にわたり試行錯誤を繰り返すことで、身につくスキルも多くあります。
目標を見失わず、粘り強く育成を達成するためには、OJT担当者が育成対象者の行動の変化を細かく観察し、行動を試みていることの承認と、行動結果の客観的なフィードバックをすることが効果的です。PLATOSでは、この育成対象者の行動の変化(=行動変容)を拡大させることから取り組んでいます。
そのために、上司やOJT担当者が育成対象者をしっかり見て、勇気づけを行うことを大切にしています。
上司の育成力を上げる、コーチングスキルの活用
PLATOSを実行する上で特に力を入れているのが、OJT担当者の育成力の向上です。指示・命令、統率、徹底が重視されるコンタクトセンター現場において、OJTを行う上司側に傾聴やよい質問を投げかけるスキルが不足していると考えたからです。
そこで、まず経営メンバーが自ら外部のコーチング専門機関で約1年間のコーチング型マネジメントプログラムに取り組み、自らの部下への関わり方を見直していきました。その後も、すべての部長および課長層に、個人に合った成長支援ができる姿勢とスキルを学ぶ場として、コーチングを含めた育成力向上研修(全16時間のプログラムを4か月間で受講)を毎年実施し、累計約200名の受講が完了しています。
このような専門研修で上司の育成力を高めた上で、コーチングの基本となる「傾聴」「承認」「質問」のスキルを1on1ミーティングで実践し、育成対象者のモチベーションを高めることに取り組んでいます。
必要なときに、自主的に学べる研修ラインアップ
また、期初に立てた目標にそって身につけたい業務関連スキルがあれば、いつでも研修が受講できる環境を用意しています。
当社では人材部門内に、人材育成・研修の専門機関「TMJユニバーシティ」を有し、80講座を超える個別研修プログラムを自社開発し提供しています。集合研修(オンライン/オフライン)のほかeラーニング、専用タブレット学習によるフォローアップなどを組み合わせて、育成対象者の学びの意欲に応える支援を目指しています。
PLATOS実施結果と管理者育成のポイント
ここでPLATOS実施による変化をご紹介したいと思います。
2020年度は、PLATOSのエントリー数に対して「1on1継続率」が61%、またPLATOSを実施した結果、育成対象者の行動に「変化があった」(※)と評価した人の割合は46%となりました。
エントリー数:PLATOSの育成計画を期初に提出した人数
1on1継続率:期初に計画書を提出してから期末まで毎月1on1を続けている人数/エントリー人数の比率
行動変容率:育成対象者が期初と期末を比べて行動に変化があったかを3段階評価した(変化なし・やや変化あり・変化あり)。数字は「変化あり」のみを集計
1on1ミーティングの継続が行動変容を起こしやすい
ところで、PLATOのエントリー数は経年で減少傾向にあります。これは各センターで業務の中で管理者育成ができるキャパシティが分かってきたことも一因で、計画的に期初に育成対象者を絞り込んでいる背景があります。それゆえにエントリーした人の中での1on1の継続率は大きく向上しています。また、育成対象者の行動に「変化があった」という成果を得られた割合も向上してきました(2020年度は46%)。
育成成果向上の要因としては、
①2017年以降、TMJの新CIの制定や全マネージャーへのコーチング型マネジメント研修の実施といった取り組みなどを通じて、組織で人を育てる文化が浸透しつつあること
②OJT担当者と育成対象者がそれぞれ人材育成の目的と手法を十分に理解した上で、自己成長を実現しようと取り組んできたこと
などが挙げられ、各々の目標にそった成長が実現できたからではないかと分析しています。
昇格時のスタートダッシュに効く、研修の活用
また、PLATOS実施後のアンケートで、行動変容に効果ありと回答のあった研修テーマも明らかになっています。
研修を受講することで行動変容につながりやすいテーマとしては、
- 業務の入門的なコンテンツ
- 育成者が育成方法を学べるコンテンツ
- 業務上、本人が課題だと思っているテーマ
などの傾向が明らかになりました。これらは一部のご紹介となりますが、今後も受講者の感想・フィードバックやPLATOSの取り組み結果をあわせて、効果を上げる研修コンテンツの企画へと反映していきたいと考えています。
とはいえ課題も。今後取り組むこと
PLATOSの仕組みを数年運用し一巡したところですが、いくつかの課題が表出しています。
- 上司が育成にどれだけリソースを使えるか
- 上司側の育成力のさらなる向上
- 部下がここで成長したいと思える職場環境
- 育成に関するシームレスな環境づくり(1on1ミーティングの設定や研修受講をしやすくする仕組み、システム)
一番の悩みとしては、上司(OJT担当者)の負荷がかなり高いということです。配下のメンバーの一人ひとりと月次で面談し、行動を確認していくため、部下の人数が多いと上司側にどうしてもある程度の負担を強いることになってしまいます。
さらには、上司、部下ともに余裕がないと続けられないという側面もあると思います。
これらの対応策の一つとして、上司、部下の管理工数を減らすために、育成計画と評価が自動で連携するシステムの導入を進めているところです。
ここまでご紹介してきました通り、TMJでは経験学習をベースとした管理者の育成に長年取り組んできました。人材育成に関してPLATOSを軸として全社でベクトルを合わせ、一人ひとりの行動を変え続けることを試みています。
ご興味いただける部分がございましたら、ぜひお気軽にご相談ください。
お問い合わせは、<こちら>。
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