BPOの基礎知識
テレワークが普及する中で、電子契約を導入する企業が増えています。ペーパーロジック社が2020年11月に実施したアンケートによると、63.3%の企業で電子契約が導入され、2019年と比較して34.5%増と活用が急速に進んでいます。
その一方で、電子契約の導入を迷っている企業も少なくありません。今回は、電子契約とは何か、紙の書面契約との違いや導入時のメリット・デメリットについて解説していきます。
電子契約とは
電子契約とは、従来の紙の契約書に代わって電子データ上で契約を結ぶ方式です。印鑑の代わりに電子署名を用い、改ざん防止のためにタイムスタンプ(※)を押した上で、電子データとして保存する仕組みとなっています。紙と印鑑が不要となり、オンライン上でのやり取りで契約を完結させることができます。
電子契約が広まった背景として、電子契約に関連する法律が整備され始めたことが大きなきっかけとなりました。
2001年に施行された電子署名法では、電子署名が手書きの署名や押印と同じ効力を持つと定められました。また、電子帳簿保存法やe-文書法では、一定の要件を満たせば従来紙での保存が義務付けられていた文書の電子データでの保存が認められるようになりました。
2020年12月に閣議決定された令和3年度税制改正の中で、電子帳簿保存法が改正され2022年1月に施行します。今回の改正では、税務署長の事前承認制度の廃止やスキャナ保存要件の緩和などが行われます。国税関係書類の取り扱いを行う部署において電子契約をはじめとした電子データ活用の導入ハードルが下がることが期待されています。
詳しくはこちら:電子帳簿保存法が改正されました(国税庁)
※タイムスタンプ:署名が行われた日時と時刻に電子文書が存在していたことを証明するデジタル印。
電子契約が注目されている背景
電子契約が注目されている背景について、ここでは2つのポイントに絞って解説します。
DXの推進
一つ目のポイントとして、ビジネスに大きな変革をもたらすDXの推進があります。
DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略称で、IT技術の浸透によってもたらされる社会の変革を指します。
<関連記事>DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
企業が押さえておくべきポイントを解説
2018年に経済産業省は「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」をまとめ、ビジネスにおけるDXの積極的な活用を推進しています。電子契約はDXの推進の取り組みのひとつとして注目されています。
2020年には、総務省・法務省・経済産業省が連盟で電子契約に関する解釈を示したQ&Aを公開し、電子契約の浸透に向けた取り組みを加速させています。
テレワークの普及
二つ目のポイントとして、新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの普及があります。
テレワークの普及が進む中、押印のためだけに出社する「ハンコ出社」が多くの企業で課題となっていました。そこで、テレワークの環境でも契約書の締結ができる電子契約が注目されるようになったのです。
電子契約のメリット
電子契約の4つのメリットについて解説します。
契約関連業務の効率化に貢献
一つ目のメリットとして、契約関連業務の効率化に大きく貢献することがあります。
【書面契約と電子契約の業務比較】
- 印刷や製本の作業
→ 不要 - 署名・押印の対応
→ 電子署名 - 収入印紙の貼り付け
→ 不要 - 書類の郵送・返送
→ オンライン上のやり取りで完結
紙による書面契約と比べて電子契約では省くことができる業務が多く、オンライン上でのやり取りで契約を完結できるためスピーディーな対応が可能となります。そして、今まで契約にかかっていた時間を他の業務に充て、有効活用することができます。
コスト削減
二つ目のメリットとして、コストの削減があります。
【書面契約と電子契約の費用比較】
- 書類の印刷費
→ 不要 - 印紙税
→ 不要 - 書類の郵送費用
→ 不要 - 書類の保管費
→ 不要 - システム利用費はなし
→ 電子契約のシステム利用費
書面契約と比較した場合、電子契約では契約の締結までに必要な費用を抑えることができます。
また、電子データとして保管することができるため、オフィススペースや外部倉庫を利用する必要がなく、管理コストを削減することができます。ただし、紙での保存が必要となる書類もあるため、事前の確認が必要です。
また電子契約の場合には、システムの導入費や月額の利用費が発生するため費用対効果を考慮した上で導入を検討することがポイントとなります。
リスクマネジメントに貢献
三つ目のメリットとして、リスクマネジメントへの貢献があります。
【書面契約と電子契約のリスク比較】
- 郵送対応時や自然災害や事故による、紛失リスク
→ 電子データのため、紛失リスクなし - 契約状況のステータス管理が難しい
→ ・オンラインで進捗確認
・締結や契約更新の期日管理が可能
書面契約の場合、郵送時や自然災害や事故による紛失のリスクがあります。一方で、電子契約の場合は電子データでのやり取りとなるため、紛失のリスクがありません。ただし、宛先の誤送信や電子データの取り扱いには細心の注意を払う必要があります。
また書面契約の場合、現状どのステータスで契約が止まっているか進捗の確認が難しいデメリットがありました。電子契約の場合では、オンラインで進捗状況を確認できるため必要に応じてメールなどでリマインドをし、スムーズなやり取りにつなげることが可能です。
電子契約のシステムによっては、アラート機能を活用した締結や契約更新の期日管理もできるため、締結漏れのリスクを防ぐこともできます。
検索性の向上
四つ目のメリットとして、契約書の検索性の向上があります。
紙で契約書を管理している場合、原本のあるオフィスに行く必要があり、手作業で探していく手間がかかります。
電子契約では電子データで保管されているため、オンライン環境があれば場所を選ばずに探すことができ、検索機能を活用して簡単に絞り込むことができます。また、書類の名前の決め方やフォルダに格納する際のルールなどの管理ルールをしっかりと根付かせることが検索性を向上させる上でのポイントとなります。
電子契約の注意点・デメリット
電子契約の活用を検討する上で、メリットだけでなく注意点とデメリットも把握することが重要です。ここでは、電子契約の注意点とデメリットを解説します。
電子契約が認められない書類もある
一つ目の注意点・デメリットが、一部の書類は電子契約が認められていないことです。
全ての契約書において電子契約が認められているわけではなく、書類によっては書面契約が必須となります。今後の法律の改正によっても状況が変わる可能性もあるため、電子契約の導入を検討する際には事前に対象の書類が電子契約での取り扱いが可能か確認することが大切です。
最近では、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律が2021年5月に公布され、48法律を対象に押印・書面に係る制度の見直し(※)が行われています。
詳しくはこちら:押印・書面の見直しに係る法改正事項について(内閣府規制改革推進室)
また、取引先が電子契約を受け付けていないケースもあります。契約時には、契約方法を含めて確認することがスムーズな契約締結につながります。
業務フローの整備が必要不可欠
二つ目の注意点・デメリットが、社内の業務フローの整備が必要不可欠であることです。
書面契約から電子契約に移行する上で、従業員の不安や疑問を取り除くことで、電子契約が現場に浸透しやすくなります。そのためには、業務フローや書類の流れを可視化し、スムーズな現場運用につながるように業務フローを整備することが大切です。
電子契約の導入をサポートするTMJ
株式会社TMJは、DXの推進を通した企業課題の解決に向けて、電子契約の導入サポートにも取り組んでいます。
業務量調査・分析パッケージでは、電子契約の導入に必要不可欠な業務フローの整備を支援します。現場の負荷を最小限に短期間での業務の見える化を行い、業務の改善に向けた優先順位や方向性のご提案も行います。電子契約の導入をご検討の方や業務効率化に課題を抱えている方はぜひご相談ください!
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