専門家コラム
中編では、シェアードサービスで働く従業員の中で定型業務70%・非定型業務30%の従業員の幸福度が最も低い背景に着目しました。
前編はこちら▶ 定型業務の比率が幸福度に影響?
中編はこちら▶ 定型業務が70%の従業員が最も幸福度が低い背景
今回の後編では、「改善活動を支援したり、改善スキルを育成したりしたら幸福度は向上するかも?」という仮説をもとに実施した幸福度向上施策への取り組みと見えた気づきについて解説します。
TMJは、コーポレート機能協会のリサーチコミッティ(研究委員会)のひとつである「ニューノーマル時代の働き方研究委員会」に参画し、コーポレート機能協会に参加している企業の従業員509名を対象に、シェアードサービスで働く従業員の幸福度に焦点を合わせた共同研究を実施しました。全3回にわたって、調査結果をまとめた『【FY20幸福度調査&考察】現場改善による幸福度向上』についてご紹介する最終回となります。
改善支援による幸福度向上施策
前回の中編では、定型業務70%・非定型業務30%の従業員の幸福度が最も低い背景に着目しました。そして、「改善活動を支援したり、改善スキルを育成したりしたら幸福度は向上するかも?」という仮説が生まれました。
そこでこの仮説を検証するために、3つのステップに沿って施策に取り組みました。
- 現場改善を必要とする社員、改善活動をしなければならない社員をピックアップ
- 一定期間、改善支援・育成支援を実施
(コンサルティング・PMO(※1)・トレーニング・1on1等) - 幸福度調査を再実施して、施策実施前後のギャップを分析
※1:PMO:「Project Management Office(プロジェクト・マネジメント・オフィス)」の略称。特定のプロジェクトを推進するために設けられた組織。
そして、この施策をコーポレート機能協会に参加している3社を対象に
- BPR (業務改革)プロジェクト
- 申請の電子化
- 改善目標達成支援
の3つのテーマで取り組みを実施しました。ここからはそれぞれの施策について詳しくご紹介します。
BPR (業務改革)プロジェクト
背景
BPR(業務改革)プロジェクトに取り組んだ企業では、2つの課題を抱えていました。
- 業務一覧の粒度がバラバラ(課単位で独自に設定)
- 全社を通じた業務の一連の流れが見えない
上記の課題の解決に向けて、BPR(業務改革)プロジェクトを発足させ、社内にBPR推進チームを設置し、改善に取り組みました。
施策
- 業務可視化ツール(BPEC) の導入及び運用のサポート
- プロジェクト運営の支援(改善手法の講習会や他社事例の共有会)
※TMJのBPEC関連サービス:業務量調査・分析パッケージ
施策結果
施策を通して業務の見える化が実現し、「BPR(業務改革)」という言葉が社内に浸透しました。そして、業務可視化ツール(BPEC)を通して改革・改善の余地のある業務が約18,000時間あることが見込むこともできました。課単位で業務整理の粒度がバラバラであった課題に対しても、全社で統一することも実現できました。
申請の電子化
背景
申請の電子化に課題を抱えていた企業では、
- 申請の電子化の立ち上げから 3 年超が経つ中、業務の属人化(※2)が顕著
- コロナ禍でのコミュニケーションの質・量の課題感あり
※2:属人化:特定の従業員にしか業務の進め方がわからず、業務が従業員に属している状態。
の課題をふまえ、業務の属人化解消とコミュニケーションエラーの防止に向けて、業務リーダーが改善活動を通して成功体験を得ることで自信をつけられるように、改善に取り組みました。
施策
- Questetra(クエステトラ:業務プロセス管理システム) を活用した業務のワークフロー化(可視化)
- コミュニケーションスタイルの変革
施策結果
対象者はアウトプットをする難しさを痛感しながらも施策を通して、業務の進捗状況の可視化を実現し、ミスの発生源も特定しやすくなりました。そして、結果的に月7時間の工数削減に貢献しました。
改善目標達成支援
背景
改善目標達成支援を行った企業では、改善目標の達成に行き詰まっている社員に対してヒントを与え、達成に向けた主体的行動を後押したいという背景がありました。
そこで、改善を前進させるための支援と成功体験を積むための支援の2方向からの改善に取り組みました。
施策
主体的に改善を前進させるための支援
- 改善の目的を再認識する
- 改善が行き詰まっている要因を分析する
- 改善の方法についてヒントを与える
小さな改善項目を確実に達成する成功体験を積むための支援
- 月1回の進捗確認(スケジュール管理)
- 上司からの声かけ
- 上手くいったこと/いかなかったことの振り返り
施策結果
申請書の入力ミスの削減を目標に掲げていた従業員のケースでは、ミス率82%減までの改善に成功しました。ミスの要因を解析し、ミスが多いところに着目して改善策を再検討してみてはというヒントを頼りに取り組んだ中で生まれた成果でした。
施策を通した幸福度の変化
- BPR (業務改革)プロジェクト
- 改善目標達成支援
を実施した2社へ幸福度調査を再度実施した所、以下の変化が見られました。
「改善活動を支援したり、改善スキルを育成したりしたら幸福度は向上するかも?」の仮説に対して、ほとんどの幸せ因子が向上した一方で、ありがとう因子のみ数値が下がる結果となったのです。
背景として、改善活動や改善プロジェクトを進める中で、関係者とのコミュニケーションに対象者がストレスを感じた結果なのではという考察にたどりつきました。改善活動を支援する際には個人への支援(スキル育成)だけでなく、組織風土の醸成(改善を応援し協力する組織・雰囲気)も重要であるという新たな気づきを得ることができました。
そして最後に、幸福度の高い組織を作る上では改善だけでなく、関係者間における関係の質を高めるために、対話の質が重要であることを本調査で結論づけることができました。
>>>調査資料の詳細は<こちら>からダウンロードいただけます!
出典:『【FY20幸福度調査&考察】現場改善による幸福度向上』(一般社団法人 コーポレート機能協会)
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