BPOの基礎知識
働き方改革が進められ、企業が改善を求められる中、「BPR」を導入する企業や自治体が増えています。今回はBPRの特徴とメリット、進め方などについて詳しく解説を行っていきます。また、混同しやすい業務改革と業務改善の違いについても説明します。
BPRとは
ここではBPRの言葉の定義と業務改善との違いについて解説していきます。
BPRの定義
BPRとは「Business Process Reengineering」の略称です。組織が行っている業務内容、フロー、構造を一から見直し、再設計するアプローチを指します。ビジネスで成功するための新しいルールを作り出すプロセスともとらえられます。また、業務内容を抜本的に変えてしまう取り組みであるため、「業務改革」とも呼ばれています。
業務改善との違い
BPRを理解する上で、「業務改革」と「業務改善」の違いを明確にしておくことは大切です。まず、「業務改善」は、現状の業務フローは大きく変えず、部分的に業務を改善するアプローチです。従来の業務で無駄な作業がないかどうか、情報がスムーズに流れているかどうかなどを見直します。仕事のやり方を根本的に変えてしまうのではなく、あくまで部分的な改善がポイントです。今の業務をやりやすくしたり、効率化したりするのが主な目的といえます。
一方、「業務改革」は業務のプロセス自体を見直します。営業、販売、人事などジャンルを問わず、すべてを再構築する場合もあります。現在のやり方を見直し、新しいやり方を模索するのが業務改革の基本スタンスです。業務改善の様に少しずつ変えていくのではなく、一気に改善することを目指します。
BPRが浸透した働き方改革と関連する背景とは
BPRの考え方が広まったのは、1990年の初め頃までさかのぼります。工科大学教授のマイケル・ハマー博士と、経営コンサルタントのジェームズ・チャンピ―氏の共著『リエンジニアリング革命」で提唱されました。当時、米国の長期不況により企業経営は世界的に疲弊していました。同書はその状況に改革をもたらすための方法論として脚光を浴び、大ベストラーとなったのです。日本の高度経済成長に生まれた「カイゼン」、「QCサークル」なども同書で紹介されています。
日本では、同時期の1990年代にバブル崩壊が起きました。景気の悪化を受け、国・地方自治体・企業などあらゆる組織で新規採用を控える「就職氷河期」と呼ばれる時期が訪れたのです。また、バブル崩壊から経済を立て直す方法として、人々の働き方を見直す上でBPRの考え方が注目を浴びました。
現代では、BPRは再び日本で脚光を浴びています。高齢化社会による労働力低下が深刻化しており、この状況を打破する政策として「働き方改革」が提唱されたことがきっかけです。長時間労働を減らし、かつ業務の効率化も実現するためには、今までのやり方を少し変えるだけでは「働き方革命」の実現は難しくなります。業務改善ではなく、業務内容を根本から見直すBPRが働き方改革に即したアプローチとして期待されています。
BPR導入のメリットとは
BPRの導入によって、さまざまなメリットが期待できます。
まず挙げられるのはコストの削減でしょう。BPRは社内の業務プロセスを「見える化」し、無駄な作業をピックアップできます。それらの業務を減らしていくため、企業全体のコスト削減につながります。そして、浮いた分のコストは他の事業に投資できるため、企業の業績を効率よく向上させられるでしょう。BPRに取り組んだことで、会社だけでなく社員自らのコスト意識が上がるケースもあります。会社と社員が一致団結できれば、大幅なコスト削減がしやすくなります。
BPRで会社の全作業を見直すことで、業務をシンプル化できるのも大きなメリットのひとつでしょう。業務がシンプルになれば、組織が管理する負担が軽くなるだけでなく、プロジェクトごとの目標も明確化されます。目標がはっきりすれば、社員の業務に対するモチベーションが上がり、生産性も上がりやすくなります。BPRにより飛躍的に生産性がアップすれば、昇進や昇給、インセンティブなどで社員への還元も可能になります。そして、社員の仕事満足度が高くなれば、品質やサービスの質も上がりやすくなり、顧客満足度の向上にもつながっていくでしょう。
BPRの進め方
ここでは、BPRの進め方について5つのステップに沿って解説していきます。
検討
BPRを開始する前に、あらかじめ入念な検討をしておく必要があります。その際、会社の管理者層のみでなく、各層の異なる社員からも改革すべき点のヒアリングを行うことが重要です。企業戦略をベースとして、そこからさらに各社員たちの考えを上積みして調整するのが、BPRにおける目標設定のポイントです。
また、改革の中心になるキープロセスを明確にすることも大事になります。対象業務の範囲や単位がぼんやりしているとBPRの成功率は低くなりやすい傾向にあります。可能な限り具体的なシナリオを設定して、検討を進めましょう。
業務分析
検討が十分に実施できたら、次は業務の分析に入っていきます。業務分析はBPRの成功のカギを握る重要な要素のひとつです。
業務全体を見直して改善を行うというスタンスよりも、廃止も視野にいれた分析を行うのがBPRの特徴です。改革する業務の範囲が定められたら、顧客の視点も考慮しつつ、業務が廃止できるプロセスを探していきます。顧客にとって不要、または代替が容易なものは廃止の対象となるでしょう。また、部門ごとで重複しているプロセスがあれば、それらを個別に残すのではなく統合や集約を検討します。
業務分析を行う際、「業務量調査・分析パッケージ」を活用することで、業務の全貌を正確に把握し、正しい判断をすることができます。「業務量調査・分析パッケージ」では、担当者単位で調査を実施することで、業務ごとの工数の把握やダブりの発見などに役立てることが可能です。
設計
分析によって把握できた現状や抽出した課題を元に、改革へ向けての方針・戦略を立てていきます。可能な限り多くの案を出し、設計を進めることが重要です。外部委託できる業務がないか検討したり、業務の流れが統一されていない業務を標準化したりすることも考えていきましょう。
設計をする際には、優先度をつけ、改革効果が高く見込まれるものから取り組むことがポイントとなります。投資額に対するコストの設計も欠かせません。社内全体で認識合わせを行い、各部門と連携しながら設計を進めていきましょう。
ITが得意な会社では、自動化に力を入れるのもよいでしょう。人が行っている作業をロボットに任せる、入力やチェックミスをツールで対応するなどの施策が挙げられます。
また、作業自体は必要であるが、コストを抑えたい、効率化したいような場合はその業務を外部委託するのも有効なアプローチです。もしくは、専門性が高く、社内でのノウハウが不足しているような分野を外部委託するケースもあるでしょう。外部化の方法としてはアウトソーシングやBPOが挙げられます。
アウトソーシングは、現在行っている業務の一部を外部委託する形式です。アウトソーシングを上手く使えば、業務量を大幅に減らしたり、高度化を図ったりすることが可能です。
BPOもアウトソーシングと同様、仕事を外部に依頼する点は同じですが、任せる範囲が異なります。業務の一部を一時的に外部委託することが多いアウトソーシングに対し、BPOでは企業の事業戦略に関わる基幹業務も期待される継続的な委託を対象とすることが多いです。アウトソーシングにするか、BPOにするかは業務分析で慎重に検討する必要があります。
<関連記事>BPOとは?アウトソーシングとの違いやメリット・導入時のポイントを解説
実施
設計が完了し、改革すべきプロセスが明確になったら、いよいよ実施へと移っていきます。BPRは業務改善とは異なり、大規模な改革になるため、社内で情報共有しながら進めるのは必須といえます。既存のビジネスプロセスを根本から変える作業には多大な時間と労力を要します。最終的なゴールだけでなく、短期的な目標を設定し、こまめに状況確認することでスムーズに進めることができます。
評価
BPRの実施中や完了後には、その効果をモニタリング(観察)する必要があります。BPRの進み具合、問題の発生状況などを確認し、問題が出ている場合はその原因を追究していきましょう。想定していた効果が出ているかも大切なチェックポイントです。各部署、各部門の様子もよく確認し、効果の程度を共有することが重要です。BPRの達成度は短期目標単位で定期的に評価することがポイントといえます。
BPR導入で自社に改革を
BPRでは会社の業務を全体的かつ根本的に見直し、業務改革を行います。一部ではなく全体に対するアプローチのため、時間と労力を必要とします。その一方で、成功すれば会社が良い方向に生まれ変わり、大きく飛躍できるチャンスも秘めています。
株式会社TMJでは、BPRの現状分析で活用できる「業務量調査・分析パッケージ」を提供しています。BPRの導入をご検討の際は、ぜひご相談ください!詳しくは、<こちら>。
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