BPOの基礎知識
これまでは顧客視点、エンドユーザーへの対応業務の相談が多かった業務改善ですが、最近ではコーポレート機能部門、いわゆる総務、人事、経理などの業務改善に関わることが増えています。今回は、コーポレート機能改革を成功させる業務改善の勘どころとして、総務、人事、経理といったコーポレート機能部門の業務改善のノウハウを紹介します。
コーポレート部門をとりまく環境
コーポレート部門とは、人事・労務、総務・庶務、経理・財務、経営企画、法務、情報システムなど幅広い部門から成り立っています。企業における組織基盤として重要な役割を担うコーポレート部門ですが、昨今、コーポレート業務機能のあり方、あるべき働き方の見直しが継続・加速しています。
法改正への対応(ペーパーレス・デジタル化)
テレワークに対応するためにも業務を標準化してペーパーレスにしたいという話を良く耳にします。中でも、経費精算、人事書類や総務の申請など、ペーパーレス・デジタル化に関連する業務は非常に多くなっています。新型コロナウイルスによるリモートワーク推進、押印の廃止や、水害・地震等による業務停止リスク回避、法改正(電子申請義務化・電帳法のスキャン要件の緩和)も、ペーパーレス・デジタル化加速の要因でしょう。
脱属人化
脱ブラックボックス・業務標準化、RPA・AI活用による自動化により、特定の担当者に依存しない業務体制への変革の動きが増えています。
ワークスタイル変革
単に勤務場所やワークスタイルを変えるというだけでなく、業務を集約して別の場所で実施することも含まれます。これにより、コストの削減や社内サービスの品質向上、コーポレート機能部門の社内プレゼンス向上につなげることができます。
業務改善・見直しがうまくいかない理由
業務や組織の見直しを図る際、まずは改善計画をしっかり立てることが重要です。
特にプロジェクトの規模が大きくなり部門をまたいでいくとなると、進め方をより固めていく必要があります。業務や組織の見直しや改善がうまくいかない原因は、大きく3点あります。
目的とスケジュールが不明確である
なんとなく決まっているものの、十分に計画書に落とし込めていなかったこともあるでしょう。目標値や成果物など、定める内容はさまざまありますが、まずは業務改善によってどうありたいのか、それをいつまでにやるのかということを明確に設定する必要があります。
改善の範囲が定まっていない
すべての業務改善を行うことは現実的ではないため、どの部門のどの業務を対象にするのか、改善範囲を早めに決めておきましょう。加えて、スケジュールの部分にも関わるため、優先順位を決定しましょう。
社内の合意形成が不十分
業務改善は、とにかくすぐ取り掛かればよい、というものではありません。業務改善は「人に動いてもらう」「理解してもらう」ことが必要なため、実は社内合意が一番難しい部分です。最終的には地道なコミュニケーションが必須となりますが、前提として、明確な実施計画が不可欠です。
計画を作成する際、具体的な数字を交えると効果的です。改善することで年間これだけのコスト削減になる、といった観点で関係者に説明することで説得力が増し、社内の合意を得やすくなります。
改善計画の進め方とポイント
改善計画を進める際の流れをご説明します。今回はクイックに業務を可視化するための調査手法例として、現状の可視化から業務改善を行うプランです。
1. 業務の種類の可視化
業務にもいろいろな種類があり、難易度やシステムもさまざまです。個々の手段を考える前に、改善の取り組みがしやすいか、効果が見込めるのかなど、大きな方向性や優先順位をつけていくことが必要です。可視化をする際、基本的に業務種類・量・難易度をアンケート等で定量化します。
例えば、TMJでは、BPEC(Business Process Engineering Cycle)という業務調査手法を使い、2か月程度でクイックに負荷をかけずに業務を洗い出すサービスを提供しています。業務量が多いところを優先的に改善したり、RPAを入れたり、あるいは集約してアウトソーシングしたり、優先順位と改善の方向性を一気に明らかにすることができます。
2. 改善の優先順位づけ
業務を細かく分けると数百種類になることもしばしばですが、分類し優先順位を判断していきます。主な判断軸としては「難易度」「場所の制約」が挙げられます。
- 会社(オフィス)でしかできないのか
- 自宅でもできるのか
- それも今のままでできるのか
- 何かシステムが必要なのか
という条件づけも出てきます。
そのほか、他部署との連携度合いや、資格が必要かどうか、あるいはセキュリティーなども判断軸になりえます。
一方で、判断軸を増やしすぎると判断をする作業や集計が煩雑になります。また、評価についても、10段階評価のような細かい評価基準にしてしまうとデータが見えづらくなります。
判断や評価することが目的ではないため、あくまでクイックに優先順位をつけるということを念頭において決めるのが望ましいでしょう。
3. 改善の方向性の決定
改善対象となる各業務について「改善の方向性」を決めていきます。アウトソーシングの検討、RPA(自動化ツール)の導入といった方法が主に挙げられますが、部門間の業務を集約した集中事務センターの新設や、組織体制の変革についても、広い意味では「改善の方向性」ということになります。
はじめに、先ほどの分類や評価軸を使って改善対象範囲を絞り込んでいきます。どうしても本社でやらなければいけない業務や、集約化やアウトソーシングに向かない業務、メリットの少ない業務もあるため、選定・優先順位づけが大事です。場所の問題ももちろん、チェックが難しい業務、取引先とのやりとりが複雑な業務など、ハードルはさまざま考えられます。
たとえば、「判断基準が独特なので属人化している」という場合でも、ルール化やマニュアル化ができればアウトソーシングでが可能なものや、RPAやAIを用いて自動化させられるものなどを発見することができます。条件や制約に応じて、改善の方向性を定めていきましょう。
4. 業務の集約化・標準化
業務の集約化をすることで、コア業務に集中でき、効率化や柔軟な繁忙対応を実現することができます。複数の部門で似たような業務を行っていれば、それらを集約して一箇所でできないかを検討します。まずは、名刺発注やIDカード発行といった、全社共通の業務から手を付けるのがよいでしょう。
しかし、事業会社ごとに方法が決まっている業務は一筋縄ではいきません。とはいえ、方法やルール、フォーマットなどを統一すれば集約化できる可能性もあるため、現場とすり合わせながら丁寧に検討しましょう。
5. 現場が運用するためのフロー・マニュアル作成
業務集約にあたっては、いかに整理して現場が運用できるように落とし込んでいくかが重要です。そのためには、現場が実際に使用できる業務フローやマニュアルが必要になります。
その際に定量調査の結果があれば、すでに業務が一般化されているためフローやマニュアルの作成もスムーズで、抜け漏れも防ぐことができます。また、これを機にすでにある業務フローやマニュアルも見直して最新化しましょう。作業手順・システム・エスカレーション・他部署との連携を可視化し、部門内はもちろん、システム部門などとの共通言語を明確にします。そうすることで、業務の立ち上げやその後の改善にも活用できます。フローを明らかにすることで、具体的な改善策も見えてきます。
アウトソーシングの活用
もしアウトソーシングを行うことになれば、「内部実施パターン」と「外部実施パターン」から選択することになります。「内部実施パターン」では、委託社員がクライアント企業のオフィスに入り、その中で業務を実施します。「外部実施パターン」は、外部の拠点(アウトソーシングベンダーの事業所内など)で業務を実施しますが、PDF処理やOCRを活用した原票処理など、クライアント企業の制約やご要望に合わせ柔軟に対応が可能です。
また、いきなり一括で業務委託をするのではなく、まずは名刺発注などを委託化して徐々に委託対象を広げていったり、1つの事業部の社内申請受付から始めて他の事業部も対象に広げていったりと、小さく始めて徐々に広げていくことも可能です。入退社手続きや年末調整業務など、時期的な繁忙もあるため、状況に応じてできるところから手をつけるのがよいでしょう。
業務改善を進めるにあたっては、まずは目的とスケジュールを明らかにしたうえで、改善対象の範囲と優先順位を決めて社内で合意形成することが重要です。それにあたっては、「現在の業務を可視化・把握」「業務ごとに判断軸をもって評価」「アウトソーシング」の順に検討を進め、最適な方法で業務改善を実現しましょう。
TMJではコーポレート部門に特化したBPOサービスを提供しています。豊富な知識とノウハウを基に、総務を始めとするコーポレート部門の業務改善の提案・実施を行います。サービス詳細やお問い合わせは<こちら>。
関連するサービス |
---|