現場カイゼン
社会のさまざまな変化も後押しとなり、チャットやFAQといった自己解決型のチャネルへの技術導入が進んでいます。今回は、「三者共創」をキーワードに、これからのCX(カスタマーエクスペリエンス)について、顧客起点主義アウトソーサーならではの目線でご紹介します。業務改善の取り組みや、進め方のヒントとしてご活用いただければ幸いです。
- よくあるCXの課題例
- 顧客理解が不十分
- チャネルの連携が不十分
- 持続的な取り組み・体制が不十分
- 課題解決に有効な取り組み
- ① データ・ナレッジの活用
- ② 企業とアウトソーサーの共創
- ③ 組織学習と経営の関与
- ④持続的な取り組み・体制構築
- 課題解決のための取り組み事例「VOCの把握」編
- 少ない工数で大量のVOCを集計・分析できるシステムを構築
- チャネルごとの効果検証を実施
- 課題解決のための取り組み事例「ツール連携」編
- FAQ運用と改善手法を統一
- 短期間でチャネル集約と統一を実現
- ノウハウを蓄積し改善活動に活かす体制の整備
- さらなるCX向上は顧客体験と一体化したサービス提供が必要
- 客観的・専門的知見で顧客の声に光を当てる
よくあるCXの課題例
コールセンターを中心に、電話以外のチャネルの導入と運用が徐々に定着しています。また、いずれのチャネルにおいても、顧客視点や顧客の声の活用期待がますます高まっています。
その一方で、実運用が十分に追いついていないという現状もあるようです。IT化やデジタルの活用も発展途上であり、これらの課題に取り組むうえでは、持続的推進のための体制やマネジメントのあり方、それに伴った変化が求められています。ここでは、コンタクトセンターにおける現状のCXとチャネル活用の課題を解説します。
顧客理解が不十分
チャットやチャットボットの効果測定はもとより、問い合わせ理由や痛点(お客様のつまづきポイント)の分析といった顧客理解が不十分なケースが多くみられます。まずはチャットやチャットボットの利用データを取得し、分析と確認を行いましょう。
チャネルの連携が不十分
チャットやFAQなどのチャネルやサービス、問い合わせ窓口など、それぞれが十分に連携されていないと、全体が機能せず、新たなチャネルを導入しても混乱してしまう恐れがあります。
持続的な取り組み・体制が不十分
プロジェクトを実行した後、継続してPDCAを回すための組織的な基盤整備ができているのか確認します。
まずは課題に対して向き合うこと。そこから顧客の声を掴み、全体をつなげ、そして一過性でなく、持続的に取り組むことが重要です。そのためには目的やゴールといった目線合わせが今まで以上に重要になってきています。
課題解決に有効な取り組み
それでは、上述した課題に対してどのような取り組みが必要なのでしょうか。
① データ・ナレッジの活用
勘や思い込み、属人的な判断でなく、デジタルを活用して顧客と“対話”し、CX向上のナレッジとして蓄積します。蓄積したデータやナレッジは、必要な時にいつでも確認できるように整理しておきましょう。
② 企業とアウトソーサーの共創
クライアントもアウトソーサーも共に顧客体験にフォーカスし、一体化した施策を推進しましょう。それぞれの担当領域を完全に切り離すのではなく、お互いのノウハウや情報を共有したりディスカッションしたりして推進することで、よりよい成果につながります。
③ 組織学習と経営の関与
顧客やビジネス環境の変化に応じ、経営自らも意思をもって参画し組織全体で学習し続けましょう。
④持続的な取り組み・体制構築
さまざまな施策を推進していくうえでポイントとなるのは組織をサイロ化させず、学びやナレッジが現場間で流通する仕組み作り(ナレッジマネジメント)を行うことです。ナレッジマネジメントの推進とは、部署や部門に散在する成功や失敗の知見を部門横断で連携し、施策を推進する枠組み作りのことです。この取り組みによりナレッジが流通し、学習効果と成果創出につながります。
しかし、常に新しいことを学び、継続的に改善活動に取り組むことを一方的に要求することは現実的ではありません。トップの理解や発信が有効なのはもちろんですが、加えて各自がより参加しやすい仕組みやサポート、楽しみながら学習できる仕掛けづくりが成果につながります。持続的に取り組むうえでは、目的志向で柔軟な体制作りや学習する組織の体現、そして人や施策を孤立させないことが非常に重要になってきます。
ここからは、CX施策に欠かせない「VOC(顧客の声)」の収集に関する事例を紹介します。
課題解決のための取り組み事例「VOCの把握」編
施策を立案する際、気づけば顧客視点やデータに基づく考察ではなく企業視点や業務都合に寄ってしまうことがあるのではないでしょうか。施策の立案は、まずVOCを正しく把握するところから始まります。事例を見ながら流れを確認しましょう。
少ない工数で大量のVOCを集計・分析できるシステムを構築
とあるクレジットカード会社様が、キャンペーンや販促の際に集めたVOCを効率よく分析できるシステムを確立し、カスタマージャーニーマップを可視化することに成功した事例です。
以前は、人の手で多大な工数をかけてVOCの集計と分析を行っていましたが、全体数のごく一部のデータしか採取できておらず、顧客の痛点の把握が不十分な状況でした。そこでTMJが、顧客体験全体の把握と検証の推進をサポートさせていただくことになりました。もともとテキスト化されていた全通話のテキストを、AIを活用して分類分析を行い、ポイントやキャンペーン効果などの分類ごとに正確に検証できる状態をつくりました。
結果として、カスタマージャーニーマップ上にある痛点全体を可視化することが実現しました。また、自動化やデジタルの活用により、分析量を以前の10倍まで増やし、工数は以前から30%削減することに成功しました。
それまでごく一部だった顧客の声の分析は、およそ全ての顧客の声に至るまで分析・把握できるようになりました。
チャネルごとの効果検証を実施
こちらの損保企業様は、FAQやチャットボット、ビジュアルIVRなど、それまでにも各チャネルが導入されていましたが、それらの効果検証が十分にできていない状況でした。オムニチャネル化を進めたものの、コールセンターではコール課題解決のための取り組み事例リーズンや背景を把握できる十分な履歴や応対区分の整備がされておらず、VOCの収集が顧客体験と不整合のため全体を分析することができずにいました。
今回のケースの場合、顧客分析の基盤となる共通カテゴリーを整備するところから始める必要がありました。TMJでは、1年間分およそ75万件の応対履歴データをAIによる分析にかけ、コールリーズンに紐づく形で新たな応対区分を現場と一緒に策定することで、各チャネルの効果検証ができる状態をつくりました。
次に、チャネルをCX施策に活用した事例を紹介します。
課題解決のための取り組み事例「ツール連携」編
VOCを正しく把握できたところで、CXの施策やツール全体をつなげていきます。とはいえ、組織や施策というのは、どんな企業であってもバラバラになりがちです。横断的な組織や仕組みで推進力をもたらすため、重要なのはブリッジ役としての横断型の推進組織です。また、アウトソーサーもその一翼を担うことが可能です。
FAQ運用と改善手法を統一
部門担当者ごとにFAQをバラバラに運用されていた大手損害保険会社様が、最適な運用方法を可視化し、運用の統一に取り組んだ事例です。品質にばらつきがあり、さらにどこから改善していいのかが不明確な状態でした。また、FAQサイトを構築したものの、運用が各部署で担当者の感覚に頼った属人的な運用になっていたのです。
そこで、部署単位の導入から一貫した運用の統合に取り組みました。まずは、クライアントと弊社共同でワークショップ方式をとって運用全体を見直し、改善点の洗い出し等クライアント企業の社員の皆様と一緒に取り組んだうえで、部門間の運用を統一しました。
結果として、共通言語での分析が可能になり、運用とナレッジマネジメントスキルの共通最適解を全員で可視化し、納得感ある運用と改善手法を部署間で統一することができました。TMJでは、約4ヶ月のスケジュール計画を組み、その中で基本的なFAQの運用や改善の手法を学ぶための研修、そして改善点を全員で洗い出すためのワークショップの実施など、クライアント企業様と共創して取り組みを推進しました。
短期間でチャネル集約と統一を実現
早急にブランド運用を統一することになった大手小売業者様が、FAQ構築と運用の集約を実現した事例です。当初は、突然のブランド統一にあたって、従来の運用のままでは、サービス統合効果を出すどころではなく、不満や不具合の原因になりかねない状況でした。
そこで、TMJは、アプリを軸にしたFAQ構築と運用集約をクライアント企業様と一緒に取り組む提案をしました。そこには4サービスの企画部門システム部門からそれぞれの関係者が横断的に参画いただき、4サイトのFAQを同時構築。さらに、クライアント企業様とTMJの両者で各ブランド・各チャネルの運用を分担しつつ、一気に全運用の集約と統一化を実施しました。
これによって、共通アプリを中心に一貫した顧客導線を実現。加えて、サービス間が連携した効率的な体制を構築することができました。特に、FAQやチャットボットはナレッジベースを集約することで効率的な運用、また効果的な改善が図れるようになりました。
ノウハウを蓄積し改善活動に活かす体制の整備
こちらのインターネット銀行様は、電話以外のオンラインチャネルを複数導入していたものの、運営や改善に必要な連携体制やノウハウが不十分な状態でした。
そこで、運用改善に必要な体制とナレッジ整備を進行しました。TMJからナレッジマネジメントに特化した担当者をアサインし、運用から分析まで現場一丸となった体制を構築。入電とFAQ実績の突合分析や、FAQ改善による入電の影響分析が可能な体制を作りました。さらに、ナレッジマネジメント担当者の属人的な運用に留まらないように、FAQの運用や改善の手順を可視化して社員へのスキルトランスファーも行っています。
その結果、客観的な視点も交えた運用と分析の体制が整い、チャネルの効果検証と持続的な改善活動に取り組めるようになりました。標準化のマニュアル整備は、属人的な運用ではなかなか持続しません。組織全体で運用できるような仕組みや基盤作りが重要です。持続的に取り組む上では、全員で学習し続けることが欠かせません。
さらなるCX向上は顧客体験と一体化したサービス提供が必要
CXの現在地は主にチャネルの充実や改善が中心で、エフォートレスの向上を図っているものが中心です。基盤としてとても重要な活動ですが、これからは加えて、顧客体験とより一体化したサービスの提供を行う必要があります。その実現により、真のカスタマーサクセス(顧客の目標達成)を追求していくことが、これから目指すべきより一層の顧客体験の向上の取り組みだと考えています。
客観的・専門的知見で顧客の声に光を当てる
TMJは、企業から業務を請け負うアウトソーサーとしてサービスを提供してきました。クライアント企業のノンコア業務をその企業のビジネスと切り離した形で請け負うのではなく、文字通りエンドユーザーや企業と共創して企業のビジネスゴールを理解し、顧客の声に客観的・専門的知見で光を当てる、「顧客接点」という事業の生命線を共に育むビジネスパートナーを目指したサービスの提供をしています。
CXへの向き合い方は、”三者共創”と考えており、より良い顧客体験のため、デジタルやツールを積極的に活用し、また顧客起点カスタマージャーニーマップをベースにし、企業へ提案をして改善を支援します。さらに、顧客起点で全体を俯瞰した上で、クライアント企業やサービス全体に積極的な提案で貢献したいと考えています。
TMJのホームページでは、今回ご紹介した事例や、CXについての情報を掲載しております。豊富な知識とノウハウを基に、業務改善の提案・実施を行います。サービス詳細やお問い合わせは<こちら>。
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