専門家コラム
データ分析から最適なメール返信タイミングを解明!問題解決率を高め、NPSを向上させる仕組みを構築
コンタクトセンター運営の優れた取り組みや事例を学び、相互研鑽を図る場として毎年開催されるコンタクトセンター・アワード。「コンタクトセンター・アワード2019」 ファイナリストの最終発表会が2019年9月10日に行われ、TMJからも代表者が出場してきました。
そして最終発表の結果、TMJは「ヘルプデスク・アウトソーシング部門」で3年連続となる最優秀賞を受賞、その取り組みをご評価いただきました!
今回のコラムでは、「コンタクトセンター・アワード2019」で表彰いただいた弊社コンタクトセンターの改善活動をご紹介いたします。
コンタクトセンター・アワードとは
コンタクトセンター・アワードは、コンタクトセンターの現場における業務改善の取り組みや個人の専門性を相互に称えあい、知識・経験を共有すること、さらには、受賞社資料の閲覧、参加者の交流、取リ組みの発表などを通じて、より実践に即した活動を知ることを目的に開催されています。
2019年度は、9月10日に両国KFCホール(東京・墨田区)にて最終審査発表会および表彰/授与式が開催されました。
主催:株式会社リックテレコム コールセンタージャパン編集部
共催:イー・パートナーズ有限会社
コンタクトセンター・アワード公式サイト:https://www.cc-award.com/
【表彰部門】
コンタクトセンター・アワード2019 ヘルプデスク・アウトソーシング部門
【活動テーマ】
NPS向上に効く“メール対応”
~思い込みのKPI見直しから始めた、メール応対改善の事例~
活動テーマの概要
今回発表したテーマは、
「メール応対のNPS(ネットプロモータースコア=顧客推奨指数)向上に取り組んだ活動とその成果」です。
クライアントは、ゲーム関連会社のカスタマーサポート部門で、カスタマーサポート窓口の運営、サイト運営などを担っています。
このセンターではTMJのほか、複数のベンダーが業務運営に携わっています。その中で弊社は、お客様からのお問い合わせの二次受付窓口における電話・メールの対応と、WebサイトにおけるFAQなどのナレッジと問い合わせ内容の分析を主業務とする「RAチーム(レポート・アナリティクスチーム)」を担当しています。
■ クライアント:ゲーム関連会社のカスタマーサポート部門
■ 主な業務内容:カスタマーサポート窓口の運営、サイト運営
活動の背景
クライアントはグローバルでNPS(ネットプロモータースコア)を採用しており、コンタクトセンター運営においてもカスタマーエクスペリエンスを高める指標としてNPSを重視されています。その向上維持はベンダーにも求められます。
しかし、問い合わせチャネルの中で「メール対応のNPS」だけが低調な状態で推移していました。そこで、コンタクトセンター全体のNPSスコアを低下させる要因となっているメール対応の改善にRAチームが取り組みました。
メール返信は早ければ早いほど満足度が上がるのか?事実を把握する
(ここからは、発表内容をご紹介いたします)
皆さんのセンターでは、メールをいつまでに返すKPIを設定していますか?
お客様をお待たせすることは顧客満足度に影響すると考えられるため、一般的には「メール返信は早ければ早いほど良い」とされるケースが多いのではないかと思われます。また、その前提でKPIを設定されているコンタクトセンターも多いのではないでしょうか。
今回、改善に取り組んだコンタクトセンターもまさにその通りで、「返信は1時間以内」と、感覚的なKPIが設定されていました。しかし、そのKPIの達成目標90%に到達することはほとんどなく、かつ「早くさばく」心理が先行し、品質の低下につながる悪循環が続いていました。
そこで、私たちRAチームは「NPSに効果があり」かつ「現実的に達成可能」なKPIを探るべく、膨大な顧客応対データとVOC(Voice of Customer:お客様の声)を収集分析し、NPSの向上と低下をもたらすタイミングがどこにあるのかを探りました。
データ分析から判明した意外な結果。NPSを上げるなら解決率を追求!
さまざまなデータ分析を進めた結果、ポジティブな効果とネガティブな効果、それぞれのタイミングが明確になりました。
まず、ポジティブな効果が表れるタイミングは「4時間以内に返信」でした。メール返信が4時間以内であればNPSは高スコアで維持されているということがわかりました。
言い換えれば、メール返信のKPIを「4時間以内」に設定すれば、NPSにポジティブな効果が期待できるということです。
次に、コメントマイニング分析からネガティブ反応につながるポイントを発見しました。
メールの返信に46時間を経過したところから「遅い」というコメントが圧倒的に優勢になっています。
これらのことから、以下の結論が出ました。
早ければ早いほど満足度が上がると思われていたメール返信が、実は4時間以内であれば高いNPSが期待できること、お待たせしたとしても46時間以内であれば顕著なNPS低下につながらないことがデータで示されました。また、当然ではありますが、解決率(=問題が解決された割合)がNPSと相関することが改めて判明しました。
大事なのはお客様の問題を解決すること
その後、クライアントの賛同をいただき上記の数値で新KPIを設定しました。これにより返信時間に余裕ができたことを活かし、2つの対策を講じました。
【対策1】回答難易度による「事前仕分け」の実施
従来は届いたメールを来たものから順にとにかく「さばく」運用だったものを、「①すぐに回答できる内容」と「②回答に時間がかかる内容」に仕分け。①は4時間以内に返信を、②はじっくりと調査をして46時間に返信をする運用フローに変更をしました。実際に①が全体の約8割を占めることもわかり、全体的にNPS向上に繋がりやすい体制を整えることができました。
【対策2】お問い合わせの「解決率」を重視した応対
「解決を重視した応対」を実施しました。従来は時間切れを意識していたため「たぶんこうだろう」とあたりつけて回答するケースも散見されていました。新KPIによる時間の余裕を活かし、問い合わせに至った真因を想定した「回答の先回り」を実施。解決率向上はもちろん、プラスαの回答によりお客様の助かった!という評価を得ることができ、満足度に大きく貢献することとなりました。
活動の成果
対策実施後、メール対応のNPSは前年同時期比で12pt向上。全体NPSにも好影響を与えると同時に、問い合わせが増加する繁忙期でもNPS低下に至らず、むしろスコアが上昇する結果を得ることができました。
また、解決率も同様に向上し続け、対策前より14%改善。約3,000件/年の解決数増加に貢献し、「お客様の“困った”をなくす」というコンタクトセンター本来の目的にも寄与することができました。
そのほか、データ分析の重要性を評価されTMJの受託範囲の拡大や、組織内のデータ分析人材の育成が進むなどの波及効果にもつながっています。
今回のメールチャネルのNPS向上を実現する取り組みは、現在チャネル単体の個別最適に留まらず、全体を俯瞰した施策へ広がりを見せています。自己解決が速やかにできる環境をお客様に提供し、そもそもの「問い合わせをなくす取り組み」と、問い合わせに至ってしまったお客様を「絶対に解決まで導く運用」をRAチームの分析とともにさまざまな形で実施。クライアント企業全体のCX向上の貢献に寄与するべく邁進を続けています。
コンタクトセンター・アワード審査員からの評価
最後に、審査員コメント一部抜粋してご紹介いたします。
- レスポンスタイムとCSの相関関係を発見できたことは、盲目的に即時返信率を追いかけている他社センターに、大きなヒントを与えて下さったと思います。RAチームの次なる成果を大いに期待しております。
- 定められたKPIを疑い、より適切な目標設定をクライアントに提案しながら業務改善を推進していく取り組みは非常に素晴らしいものでした。発表、資料共に非常にわかりやすく、多くの参加企業に参考になるものでした。
- 個別最適であっても、なぜ1時間以内か?という疑問を元に、細かな分析データから実態を可視化する流れが非常に分かりやすかった。あとはチャネルを跨いだ(メール×チャットなど)の組み合わせなど、人を軸にコンタクトリーズン毎のチャネルの使い分けなどあると面白いのではないかと思う。
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