BPOの基礎知識
コロナ禍で日常生活が大きく変わる中、ビジネスシーンにおいても様々な変化が起きています。そのひとつが、ペーパーレス化の促進です。
今回は、ペーパーレス化とは何か、導入が進む背景をはじめ、導入するメリットやデメリット・注意点を解説します。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは紙の利用を減らし、代わりに電子データを活用することを指します。
電子書籍や電子チケットなど日常生活での活用だけでなく、ビジネスシーンにおいても業務に必要な文書や資料の電子化が進んでいます。
また、すでにある紙の文書や書類を電子化することでデータの共有や保存に役立てるペーパーレス化の活用も進んでいます。ペーパーレス化には、電子文書と電子化文書の大きく2種類があります。
電子文書と電子化文書の違い
電子文書とは、ソフトウェアを使って作成・保存された文書です。
電子化文書とは、紙の文書をスキャナなど活用して電子データとして保存した文書です。
電子文書では最初から電子データである一方で、電子化文書では最初は紙の文書であるという違いがあります。
ペーパーレス化が進む背景
ペーパーレス化が進む背景として、大きく3つの要素があります。
コロナ禍による業務のあり方の変化
一つ目の背景は、コロナ禍により業務のあり方に変化が生まれたことです。
新型コロナウイルス感染予防対策として、テレワークを導入する企業が増えました。そこで、勤務場所が離れていても情報共有ができる手段として、電子データを活用したペーパーレス化の導入が進んでいるのです。
従来の紙による申請手続きや印刷資料をベースとした会議から、紙を必要としない電子申請や電子データをベースにしたWeb会議に切り替える企業が増えており、コロナ禍でも業務を円滑に進める上で業務のあり方が変化しています。
ペーパーロジック社が行った「週3日以上のテレワークを行っている」企業の会社員109名を対象とした意識調査によると、9割以上がテレワークの維持・推進にペーパーレス化は必要だと回答しています。
また、社内向け業務を対象としたペーパーレス化だけでなく、電子契約などお客様とのやり取りにもペーパーレス化の活用範囲は広がっています。
電子帳簿保存法の改正
二つ目の背景は、電子帳簿保存法の改正です。
e-文書法は、従来は紙での保存が義務付けられていた法定保存文書(※1)を一定の要件を満たせば電子データでの保存を認めた法律で、「電子文書法」とも呼ばれています。
電子帳簿保存法はe-文書法の範囲の内の国税関係書類を対象とした法律です。
2020年12月に閣議決定された令和3年度の税制改正で電子帳簿保存法の改正が行われ、2022年1月に施行します。今回の改正では、税務署長の事前承認制度の廃止やスキャナ保存要件の緩和などの抜本的な見直しが行われます。
国税関係書類の取り扱いを行う部署においてペーパーレス化の促進につながることが期待されています。
<詳しくはこちら:電子帳簿保存法が改正されました(国税庁)>
※法定保存文書:法律で一定の保存期間が義務付けられている文書
環境保護への貢献
三つ目の背景として、環境保護への貢献があります。
最近では異常気象が頻発しており、SDGs(持続可能な開発目標)に企業で取り組むケースも増えています。
SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称で、2015年の国連サミットで採択された2030年までに持続可能でより良い世界を目指すために掲げられた17の目標と169のターゲットです。SDGsの中には「15. 陸の豊かさも守ろう」など自然保護に焦点を当てた目標も含まれており、ペーパーレス化もSDGsに貢献する取り組みのひとつとなります。
ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化による4つのメリットについて解説します。
ペーパーレス化の4つのメリット
業務効率化に貢献
一つ目のメリットは、業務効率化への貢献です。
具体的には、
- 検索性の向上
- スムーズな情報共有
- スピーディーな編集・情報更新
などのポイントが挙げられます。
検索性の向上では、ペーパーレス化で電子データとして管理することで紙の書類を探す時に発生していた時間や手間を削減できるメリットがあります。ファイル名には、命名ルールを定めて管理する「インデキシング」を行うことでデータが整理され、より検索性を高めることができます。
<関連記事>【紙管理から卒業したい方向け】文書を電子管理する方法とポイントを解説
スムーズな情報共有では、電子データを活用することで場所を選ばず、複数人によるデータの同時確認や共有が可能となります。文書・書類確認のために出社する必要がなく、スピーディーな情報共有が可能となり、業務の効率化につながります。
スピーディーな編集・情報更新では、紙の書類では1文字でも修正や変更が必要になると一から印刷し直す手間と時間がかかっていたところ、電子化データであればスピーディーな編集・情報更新が可能となり、改めて印刷や郵送する工数を削減し、業務負荷を軽減することができるメリットがあります。
コスト削減
二つ目のメリットは、コストの削減です。
- 書類を用意するための用紙代や印刷費
- 書類のやり取りで発生する郵送費
- 書類を破棄するための処分費
- 書類の原本を保管するスペース費・維持費
- 書類のピッキング(特定の書類の検索)時に発生する人件費
など、ビジネスシーンでは紙ベースの書類を活用することで、多くの費用が発生します。ペーパーレス化では、電子データを活用することでこれらのコストを削減できるメリットがあるのです。
ただし、書類の種類によっては紙での保存が必要なケースがあるので、電子帳簿保存法やe-文書法などを事前に確認することが大切です。
リスク管理
三つ目のメリットは、リスク管理につなげられることです。
- 災害発生時のデータ破損や紛失のリスク
- 時間の経過による劣化のリスク
- 業務を分散できないリスク
など紙書類には紙特有のリスクがあります。
災害発生時のデータ破損や紛失のリスク
日本は地理的な位置や地形の特性上、台風・豪雨・地震・津波など自然災害の被害を受けやすい傾向にあります。大規模な災害が発生した場合、紙の書類では破損や紛失のリスクがあります。
そこでペーパーレス化で電子データとしてデータを保存・保管し、バックアップ体制を整えることでオフィスが被災した場合にもデータ破損や紛失のリスクを避けることができます。ペーパーレス化は被災による事業への影響を低減でき、BCP(事業継続計画)対策として役立ちます。
時間の経過や保管環境による劣化のリスク
ペーパーレス化は、紙の劣化リスクを避けられるというメリットもあります。
紙は時間の経過だけでなく、日光や湿気などの保管環境にも影響も受けやすく、劣化するリスクがあります。電子化データでは、劣化を起こすリスクがなく安心して活用することができます。
業務を分担できないリスク
書類を電子データ化することで、業務を分担できるメリットがあります。
書類がベースとなるとデータの共有が難しく、書類がなければ業務を進められないという事態が発生します。一方、電子データであれば遠隔地とのデータ共有が可能です。
たとえば、複数拠点で同じ業務を行っている場合には業務を分担し、一か所に業務を集約させることで業務を効率化したり、災害が発生した際には被災地の業務を他拠点でカバーすることで業務が止まるリスクを抑えたりすることができます。
社内スペースの有効活用
四つ目のメリットは、社内スペースを有効活用できることです。
ペーパーレス化に取り組むことで、保管する書類の量を削減し、空いた社内スペースを有効活用できるメリットがあります。
国税関係書類などの法定保存文書の場合は文書によって保存期間が定められており、電子帳簿保存法やe-文書法で電子保存するための要件も定められているため、事前に確認した上でペーパーレス化に取り組むことが重要です。
また、書類保管のため外部倉庫を利用している場合には、保管費の削減につながります。
ペーパーレス化のデメリット・注意点
ペーパーレス化には多くのメリットがある一方で、デメリットや活用する上での注意点があります。ここでは、ペーパーレス化のデメリットや注意点について解説します。
導入コストがかかる
一つ目のデメリット・注意点は、導入コストがかかることです。
ペーパーレス化では書類にまつわるコストを削減できる一方で、書類を電子化するための導入コストがかかります。たとえば、書類をスキャンするための機器やシステムなどが必要となります。
企業によっては、ペーパーレス化は導入したいものの書類の量が少ないため大規模なシステムが組めないケースも少なくありません。
費用対効果が見込める運用体制の確立が必要
二つ目のデメリット・注意点は、運用体制の確立が必要になることです。
ペーパーレス化を導入する上で、最適な運用体制の確立が必要不可欠です。そのためには、現状の業務体制を見直し、運用体制や業務プロセスを整備することがポイントです。
ペーパーレス化の導入だけでは費用対効果を見込むことは難しいものの、ゴールを定め、最適な運用体制の確立を通した業務改善を同時進行で行うことでより効果を発揮しやすくなります。
ペーパーレス化の導入をサポートするTMJ
TMJでは文書電子化サービスをはじめ、ペーパーレス化の導入に向けた幅広いサービスを提供しています。ペーパーレス化の導入だけでなく、電子化の進め方からシステムの選定や運用体制の構築など企業のペーパーレス化を総合的にサポートします。
文書電子化サービスの詳細は、<こちら>。
保険金支払事務の業務効率化
保険会社の損害サービスを対象とした保険金支払事務BPO(※)では、保険金請求書類のペーパーレス化を通した損害サービスの業務改善に取り組んでいます。
- 小ロット・数百種類・数万単位の書類に合わせた柔軟なペーパーレス化への対応
- サービスセンターの業務改善まで視野に入れたご提案
- スピードと正確性を両立させる効率的な業務オペレーション
が3つの大きな特徴となっています。
サービスセンターの業務効率化や損害サービス領域の業務改善に課題を抱えている方は、ぜひお気軽にご相談ください!
【TMJの関連事例】
保険金請求書類のペーパーレス化、BCP拠点でワンストップのバックオフィス運営を実現
※BPO:「Business Process Outsourcing」の略称で、アウトソーシングの一種。自社で行っている業務の一部を外部へ委託し、業務のプロセス自体も見直すことで、企業の抱えている課題解決にもつなげるサービス。
キーワード
関連するサービス |
---|