― 新設を検討されている部会テーマの中で、「業務改革」がありましたが、幅の広い領域の中でどのようなものを想定されているのでしょうか?DXなのでしょうか。
業務改革についてこれまで色々な企業・コンサルタントなどの方々と意見交換させていただいたところ、業務改革を実現するには、「コミュニケーション」と「ファシリテーション(※4)」が大変重要であると感じています。

経理・人事・総務などの業務改革を行いたいと思った時、それらの業務に精通している方々が業務改革にも精通しているとは限りません。
業務改革を実現できる人材であることと、その対象業務に長けている人材であることとは、必ずしもイコールではないのです。
たとえば、コンサルティング会社の力をお借りして業務改革が成功しても、担当者の異動・転勤などによりその部署にノウハウとして残らなかったり、自発的に継続して業務改革を進めるナレッジ・スキル・文化がその部署で醸成されていない為、そのプロジェクト単発で終わってしまう部分があったりという課題があります。
そこで、継続的に業務改革を行う「業務改革人材」を育てるという観点から他社の業務改革事例やDX活用の成功・失敗事例などを比較・研究しながら、「コミュニケーション」と「ファシリテーション」などに着目した知見を溜めていける場を創っていただければと思っています。
― 「業務改革」というとDXの促進というイメージが強かったのですが、コミュニケーションという人特有のDXとは相反する部分からのアプローチに着目する部分が非常に興味深いです!
もちろん、基幹システムの刷新・見直し、新しいクラウド・ツールやシステムの検討・導入といったオートメーション化の視点は大変重要です。しかしそれ以上に、業務改革を成功させる企業は社内における「コミュニケーション」を大変重視しています。
社内において抵抗勢力やハレーション(悪影響)が生まれないように、プロジェクトを組む際は、組織を縦軸(機能・部署ごとに)捉えるだけではなく、横軸(機能・部署を超え横断的に)で考えています。当然、機能・部署の違いにより意見・考えの衝突は起こりますが、それを解決する大変有効な手法が「ファシリテーション」といえるのではないでしょうか。
― TMJは元々ベネッセコーポレーションの前身となる(株)福武書店の顧客サービスとマーケティング部門のシェアードサービス企業としての立ち上がり、BPOサービスを提供するというコーポレート機能協会の中では異質な存在かと思うのですが、協会において私たちにどんな貢献を期待されていますか?
「事業継続」という視点から、お力をお貸しいただきたいと思っております。
今回のコロナ禍で出社できないことで「給与計算が止まってしまうのではないか」、「取引先などへの支払いが滞ってしまうのではないか」などコーポレート部門のオペレーションの現場では様々な不安がありました。自社及び自社グループだけでなく、取引先各社にも大変な迷惑がかかってしまう事態が想定されたのです。
その最中、メンバー企業の皆様とお話をする機会をいただき、
「BPOの企業にお願いしていたので、業務を止めることならず大変助かった」
「コロナ禍にも関わらず大変強い責任感をもって業務を完遂していただけた」
などの声を多く聞きました。
自社1社(1か所)だけで抱えていると、業務が止まってしまうリスクがあるところ、TMJのようなパートナー企業と協力関係を持つことで事業継続という観点からリスクをヘッジする非常に強い力が発揮されると痛感しています。
また、BPOの企業としてクラインアンド各社から業務を幅広く受託する立場だからこそ見える部分が大変多くあるのではないかと思います。
どうしても自社でやっていることが当たり前だと思ってしまうことが多いですが、TMJがこれまでのご苦労された中で蓄積された経験やノウハウをもとに、企業が「通常」と思っている業務手法などが特殊であるという「気付き」を与えていただけるのではないかと期待しております。
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― リサーチコミッティにおいて今後進めていく研究テーマなどあれば教えてください。
これまで様々な企業の方々と研究交流活動をご一緒いただいた中で、各社の導入システムや運用などに違いはあるものの、業務フローなど主要な部分に大きな違いはないことがはっきりしています。
そして、メンバー企業はじめ各社が試行錯誤をしている、課題とされる部分も大きくは変わらないこともわかっています。今後は、これまでの研究テーマを深堀りながらも、緊急度や重要度が高い課題とされているテーマを提案させていただき、メンバー企業間の強い連携のもと、自社・ご自身の課題解決の機会としていただきたいと思っております。
具体的には、「デジタル化やオートメーション化の調査・研究・推進」をテーマとした委員会を設けたいと考えています。ツールやシステムが次から次へと生まれ進化している中で、個社や個人で全てを継続的に網羅的に調べるのはどうしても限界があります。そこで、メンバー企業の有志の皆様に集まりいただき情報収集・情報共有ができる「場」があることで、世の中の最新トレンドをキャッチアップいただくなどお役に立ちたいと思っております。